Mr.デリシャス!
「いかがでしたか、我々の実力は?貴方たちでは到底及ばないでしょう?」
「ああ、大変満足満足。ただ、そのドヤ顔と態度がいちいちイライラするんだが」
竜王、瞬殺。
まあ、ビックマウスの末路っていうのはこういうもんだよな、総じて。
「抑え込むだけでいいっていうのに、とどめまでさすなんてちょっと無いわー」
俺はちょっと不愉快である。
なんていうか、属性とか、ミステリアスなキャラが完全に被ってんだよ。
「ふっ、そんなに褒められても何も出ませんよ?」
寡黙な黒い方のなんとかピアという奴に比べて、白い奴はペラペラと喋りやがる。しかも、ウザい。
「褒めてねぇ....」
「我々はこれで帰りますので、それでは」
マントを降りつつ何処かへ消えようとする二人。
「いや、ちょっと待てや」
「へ?」
「てめーはダメだ。ちょっと気に入らない」
「いや、今転移の途中で.....うわわあああ」
「俺を甘く見ちゃあいけない。というか、転移者ナメんな」
思い切り白いのを引きずり出す。バタバタしたって無駄な抵抗だ。
「クソッ!こうなったら....!」
鞘から剣を抜く音が聞こえる。
「っ.....こいつ!剣を抜くつもりか!」
「貴様ごときの言いなりになるものか‼︎」
「本性あらわしやがったな!この騎士道の風上にも置けないナルシスト野郎が!」
「騎士道は関係ないだろう!」
「お前の相棒的な黒いやつ、もう帰っちゃったみたいだぞ」
「何!?」
まあ、ハッタリじゃない事実なんだけどね。
「隙あり!」
【書き換え(リライト)】
「ぐあっ.....」
「あっけないものだな、あれだけの威勢はどこにやらって感じだ」
白い方の騎士がふらふらと仰向けになって倒れた。
「ここはどこ、俺は誰?」
「おっ、始まった始まった」
いつもの見慣れた光景その一である。
「お前は小麦農家のデリシャスくんだ。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ剣技ができる.....ほんのちょっとだぞ」
「あっ!なんか思い出してきたぞー!俺はデリシャス、小麦農家だ!」
「その調子だ、お前の剣技は別に大したことはない。決して自慢なんてするものじゃないぞ」
「そうだ....俺の剣の腕前は大したことない!ありがとう!なんか助かったぜ!」
「おう、謙虚になれよ!デリシャスくん!」
はい、完了。
「これ以上旅のメンバー増やしても仕方がないから、ちょっとあの機能使ってみるか」
【カード化】
「あ...れ.....?」
「よし、剣士のカードいっちょ上がり。困った時に出てきてもらおう。それまでは元の王国で小麦農家として働いてもらうよ。ベーカリーとしても助かるだろ?」
「はい、王子様!」
クリスタリアがニコニコしながら答える。
「ぐ、貴様ら....我輩はまだ死んでおらぬぞ...!」
虫の息の竜王がよろよろと立ち上がったのはその時だった。
「なんだお前?」
はい、【瞬殺】
竜王の消滅ともに例の効果音が流れるが、今回はちょっと違った。
『ピコーン!テレレレ テッテッテー』
なんだ今のピコーンって.....。
『アキヒサのレベルが20上がった、竜王戦勝利によりアキヒサは【竜王】になった』
「は?」
えええ!タイトルかよ!交代制かよ!
『これからは挑み来る挑戦者たちに勝ち続けてその座を守ろう!』
「なんだそれは.....」
「わああ!おめでとうございます王子様ぁー!」
「はあ....そりゃ.....どうも...」