双対の騎士!
「一人残らず殺してくれるわ......」
咆哮と共に火炎が空気を焦がす。
「ちょ、ヤバくない?竜王強すぎ!」
「アキヒサ、秘策はないのか......?」
「えっ、ええと......これはステータス元通りに戻すのが良さげかな?」
俺はささっと、神のタブレットを取り出す。チートはあんまり気乗りしないけど、元の力を発揮することぐらい許されてもいいでしょ。
「まあ、実際チートなんだけどね....」
「手が留守だぞ、愚か者が!」
げっ、まずいっ.....!竜王は俺が気づかない間に目の前に迫ってきていた。
「死ねぇええええ!」
その瞬間、俺は空間が何者かによって切り裂かれるのを見た。竜王によってでも、俺がやったわけでもない。
颯爽と降り立つ人影が二つ。
「貴様ら、何者だ⁉︎」
竜王の攻撃が止んだことに内心ホッとしながら、突然現れた二人組を見つめる。
「我らは双対にして最強の、神器の守護騎士。私は誇り高き、騎士の頂点に君臨する、閃光の騎士ユートピア」
言い終わると同時に決めポーズとドヤ顔。うわ、ナルシストかよ.....。俺こういうの苦手だわ。
「漆黒の騎士ディストピア.....」
片方、声ちっさ!俯いてて何言ってるか聞き取るのも難しいレベル。
「ほう?聞いたことのない名前だな。それにしても鎧まで白と黒とは面白い。貴様ら何をしに無断で我が祠へと足を踏み入れたのだ!」
そんないちいち反応しなくてもいいだろうに、この竜王って人はほんとに忙しい.....。
実際彼らはクソ真面目にも、まあ笑えるのだが、名前通りの色の鎧を身につけている。
「アキヒサよ、彼らは何者なのだ?」
「いや、俺も知らね」
俺も竜王もバルバロスも知らないとなると.....。
「皆様がご存知ないのも仕方がありませんね、我々は神器の守護騎士ですから」
可笑しな騎士コンビはベリザーナとクリスタリアの方を見る。
「え、私たちですか?」
クリスタリアは当然知らないといった顔をする。
「聞いたことはあるわ。でも、本物を見るのは初めて」
ベリザーナは警戒心を解かずに答えた。
「神のタブレットに危機が迫ったために我々は呼ばれたのですが、このうちの誰が持ち主なのでしょうか」
「あ」
「どうかしましたか?」
「それ、俺だわ。俺、神様だからさ」
「え?」
「てなことで、ひと仕事頼むわ」
実を言うと、さっき突然タブレットが光ったのに気づいた。【許可しますか】って出てたんで押したんだが、なるほど、これね。
「いいでしょう、我々の力を見せてあげます」
騎士たちの目の色が変わる。緊急事態用のシステムなのか、こんなものは説明書にはなかったぞ.....。
「ほう?貴様ら楯突こうというのか?完全体となった我輩につけ込む隙など一切存在せぬわ!」