竜王!
「竜王!ハハハハハハ!ずいぶんと早いお出ましだな!」
炎の中から人型のモンスターが現れる。これが竜王か.......。俺は強気な態度を崩さない。
「ファルファットが一瞬で消えた時、なにか変な感覚を覚えたのだ。貴様らは芽が出る前に葬っておかねばならぬ存在であるようだ。さあ、来い愚か者ども!」
竜王は杖を振り上げると、力を込めて魔法陣を展開させる。
「この竜王は世界の半分をどうとか言わないのか......」
「王子様!何か来ますよ!」
「【大火炎魔法】!」
「クリスタリア!シールドを頼む!」
「わかりました、展開せよ!【蒼空防御結界】!」
火炎魔法と操水結界が衝突する。溢れるエネルギーの流れが空気を揺らし、頬がピリピリとするのを感じる。
「やはり、なかなかの実力と言ったところか。表向きのレベルとはかけ離れた魔法を使うところを見ると、転生者か何かだろうか......。早いうちに潰しておく必要がありそうだな!」
転生者......?
「王子様!もう持たないです!うあっ......!」
力で押されたのか、クリスタリアの結界が崩れる。
「危ない!」
すかさず、クリスタリアをかばう。力を抑えているので無属性の結界しか出せない。
「王子様っ!」
「無属性結界だと......笑わせるな」
「ぐっ.....」
思わず、結界が弾かれそうになる。
「姉さん!アキヒサ!私も手伝うわ!【閃光連鎖召起】!」
初めてハニーがアキヒサって呼んでくれた!これはやっぱり心の距離が近くなった証拠なのかもしれな......。
「ふはははは!こんなもの効かぬわ!」
閃光が一瞬にして竜王を突き刺す。しかし、その光は広がることなく、消え失せた。
「そんな!?」
「こーれは予想外だなぁ......」
「アキヒサよ、我を忘れてはおらぬか?」
「ああ、バルバロス。お前なら、抑えた状態でも互角ぐらいにはなるはずだろうな」
バルバロスは大きな身体にふさわしい、牙のような鋭い大剣を出現させると竜王に歩みよる。
「ほう?お前はなかなか手応えがありそうだ」
竜王はそれに応じるように杖を構えると、バルバロスは地面を蹴り、剣を振りかざす。
剣と杖とがぶつかると、金属の打撃音が高く響く。互いに手を休めず、攻めの姿勢を崩すことは無い。
「ぐっ.......」
先にダメージを食らったのは竜王のほうだった。身を引きつつ、攻撃を仕掛ける。
「【波動砲】!」
バルバロスはそれを避けることなく、受け止める。その身体には黒く厚いシールドが張られていた。
「【絶対障壁】だと!?魔王族は滅んだはずでは.......!?」
魔王族ってなんだ?
「クソが!こんなところで負けるわけにはいかぬ!【大氷結魔法】!」
「ぬ!?」
竜王は極限までバルバロスに近づくと、自分もろとも凍らせた。動けなくなったバルバロスに至近距離で魔法を打ち込む。
「【大閃光魔法】!」
自身にもダメージを与えかねない規模である。流石のバルバロスも竜王の捨て身の攻撃には膝を床に落とした。
「......すまぬ、アキヒサ.....」
竜王も同じようにボロボロの状態だ。
「これほどとはな......だがまだ力を抑えた状態だ......。これで終わりにしてやる!竜王としての真の力を見せてくれるわ!」
竜王はそう言い終えるかどうかというところで、自身に火炎魔法を唱えた。
次の瞬間、竜王はその名にふさわしい姿に変わっていた。