世界→異世界!
「勇者様御一行、到着!!」
扉の先は異世界。異世界から異世界に来たわけである。
さすがにピエロはダサいから俺もカッコいい格好になっている。
「はー!ここが異世界ですかぁ!」
「我は初めて異世界なるところに来たぞ」
「ここって本当に安全なの?」
「そりゃあ、安全も何も危険だらけに決まってるさ。ステータスとかあるだろうから見てみ?」
三神明久
職種:ピエロ・神
Lv.1
「ん?アキヒサよ、なんだかステータスがすっきりしすぎていないか?」
「そうだとも、ここはゲームだぞ。職種はなぜか消せなかったけど、ステータスは綺麗さっぱりクリアクリーンな状態だろ?」
「うむ、そのだな......」
バロバロス
職種:魔王
Lv.1
「お前、バロバロスって名前だったの?」
「そうだとも、知らなかったのか?」
「言われるまで気にならなかったな.....」
ベリザーナ
職種:『元』光の女神、俺の嫁
Lv.1
「愛してるぜー!マイハニー!」
「ちょっと!!変な肩書き追加するのやめてくれる!?よ....嫁とか.....。それになんか『元』っていう表記が強調されててすっごくやだ!」
「顔、ちょっと赤くなーい?照れてるのー?」
「ちょっと黙ってて!」
クリスタリア
職種:『元』水の女神、パン屋
Lv.1
「この女神っていう欄、なんですかぁ?」
「姉さん!思い出して!私たち天界にいたのよ!」
「はて?そうだったかしら......?」
「へえ、クリスタリアって名前なんだ。素敵な名前だねえ。ベリザーナ......だったけ?あれに比べるとほんとに......」
「うるさい、うるさい!」
「そうムキにならないの。怒ったマイハニーもかわいいー!」
「もう喋らないで!!」
「はいはい、わかりましたー!さて、んじゃあ早速冒険と言いたいところだが、今日は宿屋にでも泊まっていかね?ほら、初日はゆっくりしようぜ」
「私は賛成ですー」
「我はどっちでもよいぞ」
「私もどっちでもいいわ」
「じゃあ決まりだな。適当な村にでも行きますか」
その辺をうろちょろしてなんだか村っぽいところに着いた。しょぼすぎもなく、まあまあ大きな村である。ここならいいだろう。
「ここにしよう。それで決まり」
**********
「このステッキってどうなってんの?」
クリスタリアのステッキを借りて振ってみる。
「私もこれがなんだか覚えてないんですよー。なんかすごいことができたような気がするんですけどー」
「しょうがないなぁ。ちょっと大人しくしてろよ」
「な、何するんですか!?」
「ほら!」
俺は片手でクリスタリアの頭を叩いた。
「痛ぁっー!」
みるみるうちに、パン屋のへなへなした様子が変わっていく。
「え!?ベリザーナ、なんでここに!?って何この宿屋みたいなところ!?.あれ.....私の羽衣が無い!!」
「よお久しぶりだな女神さま。思い出したか?」
「あ!あんたは!あの悪魔みたいな男!」
「悪魔ぁ?失礼な。俺は神だぞ、神様だぞ」
「神の名を語るなんて、なんと不敬な!この私が.....」
立ち上がるとステッキを構え、臨戦態勢になる。
「やっぱダメだこいつ。もとに戻れ」
手を叩くと、クリスタリアは元のパン屋に戻った。
「ああ!なんか思い出しましたあ!これ水が出せるステッキですよねー!ステキなステッキ、なんちゃってー!あははは!」
「やっぱこっちの方がやりやすくていいわ」
ベリザーナは終始俺を冷めた様子で見ている。
「怒らなくてもいいじゃないか。ほら、大して困る事でもないだろう?」
「私やっぱりあなたのこと嫌いです!最低です!」
「なー......ごめんごめんって」
まだ、俺に懐いてくれるには程遠いようである。