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仮面の話

作者: puru

怖い昔話にしようとがんばりましたが、如何せん文章力が・・。

 江戸の大通り、太陽は頭上を通り越そうとしており、多くの人が行き交っていた。そんな中、通りの端に人だかりが出来ており、男は何事かと気になりそちらに足を向けた。

 人を掻き分け見てみると、どうやら、何者かの晒し首であった。その首は、奇妙な表情をしていた。眉間には皺がより、目は飛び出さんかと云うほどに見開かれている。口は、歯を食いしばっていたのだろうか、今は半開きになり笑っているかのように見える。男は首を見て、どのようにすればこのような表情になるのだと薄気味悪く感じたが、興味はすぐに、横に立てられている立て札に移る。

 それには「この者は江戸を騒がした妖怪である」、と書かれていた。男は妖怪なんぞ信じていなかったが、この首の顔を見れば納得してしまいそうである。他に、「まだ妖怪がおり捕まえたのなら褒美を出す」と書かれていた。褒美、貰ってみたいが、どんなものが出されるのかと、男が考えていると、周りでは、何両もらえるだの、いやいや、大層珍しい物品をくださるのだとか、根も葉も分からぬ噂が飛び交っていた。

 男は褒美が何かいよいよ気になり、金でも物品でも悪いものではなかろうと、さっそく友人のもとに向かい、どうしようかと話し合うのであった。

 男も友人も妖怪がいるとは思っていない。では、どうしようかと話し合い、友人が「いないのなら作ろう」と言った。男がどう言うことだと訊くと、友人は、少し待てと言い、押入れから変な仮面をとりだした。友人はそれを持ちながら「これを被り、恰好も奇抜にすれば妖怪に見えるのではないか」と言いだした。

 男は、確かに仮面は、晒し首のあの表情にどことなく似ており、これにそれっぽい着物を着ればいけそうな気がしてきた。だが、誰が妖怪の役をするのかと訊けば、この仮面はお前に丁度よさそうだと言い、渡してきたので、嵌めてみればピタリと男の顔に嵌まるのであった。鏡で自分を見てみれば顔と仮面の境が分からないほどであった。それと、仮面の内側に溝が彫ってあるのか、長く着けていると痕ができそうだが気にはならなかった。

 仮面を外し、首を斬られないようどうするのか訊けば。「褒美を貰い。斬られる前に、呪いがないよう払いに行くと言って逃げればいいのだ」と言う。そういうものなのかと思い、男は「それなら大丈夫だな」と言い、友人も「ああ、大丈夫さ」と言う。

 そうと決まれば、さっそく仮面を嵌め着物を着、通りに出て、妖怪を捕まえたと騒げば、町奉行所に連れて行かれた。

 着けば早々に、腕を後ろに回され手を縛られ座らされた。この者は本当に妖怪か、と訊くので、なにかそれらしい事を言おうと思い、声を低くし言ってみれば変にくぐもる。そうか、仮面を着けていたのだと気づき、今度は声を変えずに言ってみれば、仮面でくぐもりそれらしい声になるので一言二言言ってみた。

 どうやら信じたらしく、友人には、よくやったと何か渡していたが仮面を着けていると見えにくく何か分からなかった。

 斬首せよとの声が響いた。さあ、頼むぞと思い友人を見てみれば、素知らぬ顔をしてこちらを見ていた。どういうことかと驚き、もう一度見るが言い出す様子などなくこちらを見ているだけだった。どうしたのかと思い友人の名を言おうとするが、そこで言葉が詰まった。・・・なんと言う名なのだ?そもそもこいつは誰なのだ。友人と思っていたが、さっき喋った以外こいつとあったことがない。どういうことだ?

 いや、今はそれどころではない。自分が人だと伝えなければ首が離れてしまう。自分は妖怪ではないと言っても仮面でくぐもり声にならぬと気づく。ならば仮面を外してしまおうと、地面に仮面を擦り付け外そうとするが、よほど嵌まっているのか外れるどころかズレもしない。今の行動が奇怪に見えたのか体を押さえられ、動けないようにされ、自分の後ろに誰かが立っているのに気づく。

 男は、焦りと緊張からか、仮面を着けていることも忘れ必死に声を出す。だが、どれもくぐもり、死に際に、嫌だ嫌だと、騒いでいるようにしか思われていない。男は助からぬ事を悟り、友人だと思っていた何者かに顔を向け、ありったけの罵詈雑言を吐いた。顔の肉が、仮面の内側の溝に食い込むように感じたが、気にも留めなかった。この声もくぐもり言葉になっていないのだが、気迫は伝わったのか、何者か以外は慄き、早く斬れ、と言い次の瞬間には首が飛んでいた。落ちた後も男の顔は、何者かを睨んでいたと云う。

 次の日、江戸の大通りには、似たような表情をした晒し首が、二つが並んでいた。

 






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