湖の悪魔
「リシャ殿、このオニギリ美味しいです」
むしゃむしゃと、口に入れるクリストファー。
「少しは、遠慮しろよ……」
美味しいけど、と肩を竦めるアルマ。
「あらあら、そんなに急いで食べますと体によくありませんわ」
水筒の水を注ごうとしたが
「あら、水がなくなってしまいました」
リシャの言葉を聞いて
「私が、湖で汲んで来ましょう」
立ち上がったクリストファー。
「いいえ、ここは……シグルス様とアルトリウス様に」
さっきから一言も話していません、とリシャ。
「いや、別に仲が悪いってわけじゃ」
「話すことがないだけだ……」
なんだか、ぎこちない二人。
「私たちが居ては、話にくいこともあるでしょう」
リシャはシグルスに近づくと
「シグルス様、ファイトです」
今こそ男の友情を深める時です、と強く念を押した。
「……おい、さっさと行くぞ」
シグルスは空の水筒を片手に、慎也に一緒に行動するように促した。
「え、ああ」
頷いて、立ち上がった慎也に
「おい、一人で大丈夫か?」
小声でアルマが聞いた。
「ちょっと気になるんだよな」
「ああ、知り合いに似てるって言ってたもんな」
お前は勘がいいからな、とアルマは慎也を見送った。
「悪魔の住処近いんだろ、二人で行かせていいのか?」
アルマが言うと
「実は……悪魔には奇妙な噂があるんです」
美少年二人が話してる現場によく出るんですよ、とリシャ。
「とんだ悪女だな」
顔を顰めたアルマに
「あら、何の話です?」
向こうから寄って来たらラッキーですね、とリシャ。
「な、それでは二人は囮に……いや、リシャ殿の作戦は見事と言うべきか」
勉強させていただきます、とクリストファー。
♦︎♦︎♦︎
「綺麗な水だ。この辺でいいだろ」
そう言って、シグルスは水筒に水を汲む。
「……なあ、委員長だよな?」
慎也の問いに
「……」
シグルス無言。
しばらく続いた沈黙。
(あれ、間違った)
慎也が気まずそうにしていると
シグルスは深いため息をついて
「……お前も異世界ガチャか?」
そう言った。
つまり、隣国の王子だと思っていた青年はーー慎也の同級生。
「やっぱり、委員長も異世界ガチャで!? 」
「オタク眼鏡……いや、黒崎慎也。君は、さっきから委員長、委員長と……人の名前を覚えているのか?」
不機嫌そうに言う。
フルネームで呼ばれた慎也の方は
「え、だって委員長は委員長だろ?」
「工藤優希だ」
そう言って、慎也の襟元を掴むと
「新学期始まって、二ヶ月だぞ」
いいかげん憶えろ、と念を押した。
「え、ああ、悪い。ほら、あまり話さないから」
「フン」
優希は鼻をならして、慎也を解放した。
その時、湖の水面が揺れた。
「何だ?」
「何かいるぞ」
慎也と優希は、警戒して湖から離れる。
「いかん、いかんぞ。美少年は、仲良くしないと」
湖の底から、巨大なドラゴンが現れた。




