第二話 従者
第二話は世界の成り立ちと従者についての説明です。
統合世界「ガイアクロス」
太古より精霊界・魔界が存在し、互いの世界の安定・支配を目論見、戦争を続けてきた世界。
やがて、その二つの世界の境界に小さいながらも二つの世界の要素が混ざり合った世界が生まれた。後に混沌界と呼ばれるようになる。
精霊界には精霊族・神族
魔界には魔族
混沌界にはこの二つの要素が混ざり合い、人間族・エルフ族・ドワーフ族・獣人族・龍族などの多種族が生まれた。
そして、混沌界には多くの文明が誕生し、戦争などにより滅びを繰り返していった。
精霊界・魔界両者にとって混沌界は重要拠点になるのにそんなに時間がかからなかった。そして、混沌界は精霊界・魔界の両者から狙われる場所に変わる。
混沌界は大陸の各地に多数の国を作り、各自で武力を持つことで対処してきた。しかし、精霊界・魔界と混沌界との個人のポテンシャルに開きがあった。
精霊界は魔法関連に強く。魔界は武力に特化していた。その分野に対しては混沌界には足元に及ばなかった。
領地が奪われないものの徐々に疲弊していく。
しかし国々が協力し、ある特殊鉱物を触媒として起動する魔法の開発に成功する。
それが異界人召喚の魔法である。十年に一度しか来ない魔力大量発生期間の時に儀式を行うことで、召喚が可能とした魔法の開発により、異世界人の知識を取り入れた国の生活・武力レベルが飛躍した。
こうして、混沌界は両者の侵略を防ぐ武器を手に入れることができた。
やがて、未知の技術と武力の存在に精霊界・魔界は疲弊することを恐れ、精霊界の主神オーディンと魔界の魔王ルシファーと混沌界代表クラウス国で休戦協定を結ぶことになった。
条約内容は、混沌界への侵略を禁止・交流により世界への平和に務めることを取り決める。それは騒乱に明け暮れた世界に初めての世界平和条約が取り決められたのだった。
条約締結を果たしたクラウス国に戦乱終結の貢献を称え、年号にクラウス歴が付けられて、新たな歴史が始まったのだった。
しかし、条約締結後100年を迎えた時に事件が起きた。
「―――ロキの反乱。第一級神である彼は主神オーディン様を滅ぼし、半数の神族を引き連れて魔界に進撃し、魔王ルシファーも滅ぼしました。」
あれから池の傍で椅子に腰掛けながら、ノエルの話を聞いていた。
オーディンとルシファーとロキについては地球でも同じような神話があるのを覚えてる。
確か、北欧神話に出てきたかな?
ロキは地球ではオーディンが従えるアース神族を滅ぼしたはず……トリックスターとかずる賢い者とかの名前も持ってたよな。
ルシファーも確か……
「―――ルシファ-って元神族関係だったりしない?」
「はい、確かに魔王ルシファーは元第一級神が堕天して、魔王となったのは有名です。」
「どこも似たようなもんだな。」
というより、神族同士がそれぞれのトップってどうだろうか?
ある意味、マッチポンプじゃないかな……これ。
混沌界に滅ぼさない程度に攻撃し危機的状況で、成長を促して、自分たちの戦力に加えるつもりだったのだろうけど、予想外の成長ぶりに平和条約を締結して様子を見るためと予想する。
混沌界が両面からの侵略に魔法開発まで持ちこたえたのが、おかしい話だ。
混沌界の領地が奪われずにただ消耗しているのが仮説を裏付ける理由になると思う。
ノエルがこの辺を理解しているかを知る必要があるな。
「十六夜様、どういう意味ですか?」
「気にしないでくれ。それよりもルシファーが死んでもそこから続きがあるだろ」
「……魔王ルシファーを滅ぼした後、彼は魔界の新たな魔王を名乗り、宣戦布告しました。神族と魔族の連合軍は圧倒的で、混沌界は劣勢を強いられているのが現状です。戦う力がない精霊界は、混沌界が滅ばないために最後の手段を使いました」
「最後の手段?」
「一級神は既に火・風・土・水属性を司る者しか残っていませんでした。そして、混沌界の各地にそれぞれ守護神として祀られ、信仰する者たちに力を分け与えることで侵略を食い止めることができました。」
「―――属性による能力の拡張・各地域における信仰での属性強化か」
「はい、各地域によって有利に働く属性の活用で混沌界は現状を保っています。四属性以外にも属性は存在しますが、それらの属性を司る一級神はいないためそこまで地域の補正がありません。」
基本四属性とマイナー属性がこの世界に存在するのか。
「それじゃあ、祀られた一級神はどうなったんだ?」
「……別の存在に昇華し、こちらへの直接的な干渉できない存在になりました。信仰する者には力を与えることはできるようですが、直接力を行使できないようです」
ある種の上位存在になったというわけか。
昔見ていた、魔法少女が願いで宇宙の法則を変えたように一級神が自分の存在を変質させたということだろう。信仰によって個人よりも多数の平均を底上げさせたのか。
とりあえず、大体の成り立ちから現状までは把握できた。
現状は魔王ロキを倒すことが目標になるのか。後聞くべきことは
「―――従者というのは?」
「従者ということは神族が直接力を与えた存在を指します。現在残っている神族は戦闘に向いていない者が多いため、前衛に立てません。そこで神族が力を与え、従者は神族をサポートする。この両者の存在は双戦騎と呼ばれます。」
……なるほど、四属性の神族が信仰という形で広範囲に力を分け与えることに対して、従者に力を与える関係は理にかなってる。
補正効果は言うまでもなく、従者の方が圧倒的に高くなり、神族自身も戦闘に立つことができる。恐らく、下級神が上級神に比べ信仰による補正が少ない部分を従者個人に絞ることで効率を高くするのを重視したのか。
「このダブルアーツの特徴としては、従者によって変化します」
「変化?」
「はい。従者になることで固有スキルを得ます。固有スキルは従者のみに与えられます。例えば、スキルが前衛関係なら従者は前衛、後衛関係ならば従者は後衛からの戦闘形式になります。これは神族とは関係なく従者個人によるスキルのため、両方の戦闘形式が重複する場合があるため、相性は運に左右されます。」
うーん、聞く限り双戦騎というのはメリットばかり目立つな。
いいことづくめで、デメリットを聞かずになるというのは早計かも
「双戦騎はこの世界に多いのか?」
「いえ、世界には数える程度しかいません」
「何でだ?」
「まず挙げられるのが、レベルリセットがあります。」
……レベルリセット?
「これは従者に対して負担を減らす為だと言われます。なので従者がレベル1の場合、神族もレベル1に下がり、能力値もレベル相応に下がるからです。」
レベル100分の力をレベル1に与えると、容量オーバーで破裂するのを防ぐためか。
「だったら従者が高レベルだったら問題ないだろ」
「それは無理です。なぜならば従者にできるのがレベル5未満なので、高レベルは無理となるからです」
なんという光源氏計画。
「なので、神族の大半はレベルが下がることで死ぬ危険度が高くなるよりはそのまま自分で戦った方がいいと思っているのが大半です」
「……なるほど。」
「もう一つはダブルアーツを持っている神族は相手が亡くなった後、再び取ることがないと言われます。お姉ちゃんに聞いてみても、教えてくれませんでしたので分かりませんが」
……それって、親しい仲になったから、他人と組む気がなくなったんじゃないかな
「私が知っているのはこの2つの理由ですね。他にもある可能性がありますが、ダブルアーツになった神族は極小数と他にあまり教えないため、大半が謎に包まれています」
結論いえばこのスキル……一長一短がはっきりしてるな。
従者にとってはデメリットは無いに等しいが、そのデメリットを神族が請け負うことでバランスを取っていると思える。
知られていないダブルアーツを知っているのも身近に所持者がいたからか。
だからこそ気になるのは、ノエルがそれを知ってなお俺を従者にする理由が知りたい。
「―――ノエル、従者になる件だけど……俺はなるよ」
「本当ですか!?」
「ああ、本当だ。―――ただひとつ気になる点があるから聞いていい?」
「何ですか?」
「従者が必要なのは、彼……ロキと関係あるのか?」
ノエルは俺の言葉にしばらく沈黙をしたあとで答えた。
「それは……言えません。」
その言葉と表情から彼女の複雑な思いが込められいるのが分かる。
それは、言いたいと思いつつ、他人に話せない。
理由は自分の責任であるため、他人を巻き込ませたくない。
世界を旅している中で俺を含めた多くの仲間・友人が抱えていたものを彼女も持っている。
生来、彼女自身が嘘が下手であろうが、それでも嘘を付かないといけない決意を俺は感じた。
「―――なら、これ以上は聞かない。」
彼女自身の問題に首を突っ込むのは今は早い。
ならば彼女のことをもっと知った上で、もう一度聞くべきだろう。
「なぜですか?」
俺の言葉にノエルは驚いてこちらを向いた。
彼女は追求されると思ったのがあっさりと諦めたということが不思議のようだった。
「訳ありなのはお互い様だろ。それにノエルは俺の正体に何となく気づいているだろ?」
この辺は俺が気絶いる間、つまりこの世界に俺が出てきた瞬間に彼女が目の前に居てぶつかったとなると、俺が異世界人であるというのは容易に想像がつく。
第一に召喚技術自体がこの世界にあるし……
「あとは……俺の感かな。それらをひっくるめて俺はノエルを信じるよ。」
「……十六夜様」
「祐也でいいよノエル。だから……俺を……信じてくれないか?」
「はい、ふつつかものですがよろしくお願いします……祐也」
「こちらこそよろしく……ノエル」
ノエルとの握手した。
その表情は不安から解放された、人間であれば年相応の少女の笑顔だった。
ただ、俺はひとつだけ伝えることができないことがあった。
元の世界に帰らなければならない。
その一点だった。
けれどそれをノエルには伝えることはできない。
従者を受けた理由として彼女自身のやるべきことを助けたい……それが俺の気持ちだった。
―――クラウス歴500年―――
ここに一組みの双戦騎が誕生した。
第二話読んでいただき、ありがとうございました。
今回は世界の説明と従者についての説明となりました。
次の話からステータスや能力などについての話となります。
スキル説明
転移
記録した場所に移動できるスキル。効果範囲は自分のパーティまでである。
レベル1<5までに分けられ、レベル1は二箇所の場所の登録できる。レベル5は10箇所の登録が可能となる。