勝つのはどちら(6)
「私を殺す?物騒ね」
真希は教壇からおり、両手を広げて僕に歩み寄る。窓から差し込む炎の赤い光のせいで、彼女の全身が真紅に染まっていた。
にやりと口角を上げるが、彼女の眼差しはただ僕を鋭く睨むだけだった。
「私に何回攻撃をした?あたった試しが?っていうか、そもそもひどくない?大の親友である私を殴って、刃物で突き刺して。何考えている?とても友人のするべきことではないわ」
「ごちゃごちゃうるせぇ」僕は包丁を右手に持ち、そしてその刃先を左手首にあてる。「お前はこうすれば、死ぬだろ」
右手に力を込め、手首の肉に数ミリ刃が食い込んだ。その途端、右手を誰かに止められた。――真希が僕の右手を掴んでいた。
「何をしているの、お前」
ギリギリと歯ぎしりそうな表情だった。彼女はただ僕の右手を握りしめているだけなのに、そこから怒りが伝わってくる。
「お前は僕で、僕はお前だ。だったら、僕が死ねばお前も死ぬ。違うか」
真希は左手の人差し指を自分の口元にあて、「チッチッチッ……」と舌を鳴らした
僕の右手首をつかむ彼女の握力が強くなった気がした。もしかしたら本当にそんな気がしているだけで実際には握り締められていないのかもしれない。
だが、彼女が手を引くと僕の右手もそれにつられて浮き上がり、包丁の切っ先と左手首の間にわずかなすき間が生じた。
「ダメよ、そんなこと。許さないわ。君は大事な私の親友なのだもの。死ぬなんて決して許さないわ」
「そのセリフだけ聞くと、まるで僕のこと心配してるみたいに聞こえるな」
「ハッ!心外ね。心配しているわよ、だからほら、さっさと離せやオラッ!」
彼女は空いている左手で僕の頬を平手打ちした。鋭い痛みが走った。だが、僕は包丁を握り締める手を離さず、ぐいぐいと自分の首元に近寄せた。
「そうだ。僕らは友達だ。だから、僕がお前を葬ってやる」




