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公開実験(4)

『おかけになった電話番号は、現在使われていないかもしくは電源が入って――』


「ふざけるなッ!!」


 頭に血がのぼるとはこういう事を言うのかもしれない。僕は携帯電話から流れる無機質な女性の声を聞いて、携帯電話をぶっ壊してやろうと思ったが、電柱を蹴り飛ばすだけにした。おかげで足に激痛が走った。


 クソ、クソ、クソ――なんで家が燃えるんだよ。ていうかあの馬鹿親父。なんで電話に出ないんだ。


 いや、よく考えたらここ数年、親父に電話なんかかけたことがなかった。突然海外に出張するような親父だったし、そもそも電話をしたいと思ったこともない。



 でも、それとこれは話しが別だろ。家が燃えちまったんだぞ。なんで電話が通じないんだよ!


「お前、保護者じゃねえのかよ。僕にどうしろって言うんだよ」


 本当にどうしたらいいのかわからなかった。僕は誰もいない公園のベンチに座り込み、バッテリーの残量を確認した。


 バッテリーは、もう少ない。たぶん、これ以上繋がらない相手に電話をかけるわけにはいかない。時間と電池の無駄だ。



 家を失ってしまった。帰る場所がなくなってしまった。こんな時、誰を頼ればいいんだよ。


 春の夜は寒かった。昨日までは暖かい布団の中で眠っていたのに、たった一晩ですべてがパアになってしまう。


 一体、どうすればいいんだよ。


 ぶーん。突然、携帯が震えた。バイブレーションだ。画面を見ると、メールが一通着ていた。


 萌花からだ。早速メールを開くと、「今日は長話に突き合わせちゃってゴメンネ。この埋め合わせはまた今度するよ(。・ ω<)ゞ」とふざけた内容だった。


 指が、震えていた。


 彼女は、助けてくれるかもしれない。


 はやく、返信を送るんだ。今日、泊めてくれないかってメールを送れ。それだけだ。別にいいじゃないか。断られたって。突然、家が燃えたから泊めて欲しいなんてメールを送信したら、普通の人間だったら誰だって断る。でも、もしかしたら、いいよって言ってくれるかもしれない。そっちの可能性に賭けて、メールを送るだけだろ。


 本当にそれだけだ。リスクなんてない。なのに、僕はメールを送ることができなかった。


 画面を切り替えて、電話帳を眺める。友人と呼べるような奴なんてほとんどいなかった。どいつもこいつも名前を知っているというだけで、心の底から頼りになる奴なんて一人もいない。


 終わった。僕の人生、やっぱり終了だ。


 携帯の電源を落とそうとした。だが、最後に一通だけメールを送ることにした。


 Eメールを送信する。バッテリーが減った。返事はすぐに来た。


 メールの内容は簡潔だった。『OK。駅前の一番安そうな店で待ってろ』


 萌花、ではない。結局僕が頼りにする友人は、真希だけだった。

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