集団の罠(5)
「ちょっと遅くない?」
後ろを振り返ると、そこには黒い長髪の女の子、北川萌花その人がいた。休日だというのにどういうわけか制服姿で、猫のような瞳でいたずらっぽく僕に微笑む。
「あの刑事ども、全員帰っちゃったよ。ああ~、やだやだ。肩が凝る」
「刑事って、警察の刑事?」
「それ以外の刑事ってあるの?」
萌花は髪の毛をかきあげた。白いウナジが見えた瞬間ドキリとした。
「ついてきてよ。お茶でも出すよ。できればあのおっさんどもと同席して欲しかったんだけどなあ。もっと早く来てよ~」
マジで疲れた~と彼女は僕の手を引っ張っていく。
神社には本殿の他にも社務所、摂社、舞殿、宝物殿、御神木があり、本殿の脇を通り抜けてまっすぐ進むとやがて大きな竹林が現れた。その竹林の中をうねうねと曲がりながら進んでいくと、古めかしい一戸建ての木造建築が建っていた。四方を竹林に囲まれた一階建てのその家の玄関は開けっ放しで少し無用心な気もしたが、こんなにボロい家では泥棒も入らないだろう。
「今、失礼なこと考えてなかった?」
萌花はジト目で僕を見る。首を横に振るが、いいよいいよと乾いた声で笑った。
「実際、なんで存在しているのか不思議なくらいここは貧乏だからね」
「萌花以外にも、誰か住んでいるの?」
玄関で靴を脱ぎ、床を踏んだ瞬間にぎしぎしと軋む音がした。今にも倒壊しそうな勢いではある。
「今日は私だけ。本当は里親がいるんだけど、今日は仕事で外にでちゃった。他の孤児の子は学校で給食か食堂でご飯中かな?」
そういえばもうお昼だった。長い廊下を渡るとやがて居間に到着する。畳が敷き詰められた居間にはフローリングとは違う、乾燥した匂いがする。
「何か食べていく?私もお腹空いたし。取り調べといったらやっぱり、カツ丼よね」




