エピローグ 終演を彩る天に咲く花
闘いが終わり、保険医の先生と優風に左腕をくっつけて貰った俺は、全校生徒の集まった体育館の壇上に上がり、校長から表彰を受けた。
「表彰状 萩原一騎殿
貴殿は第78代卒業生に於いて、その気高き精神と逞しい肉体で戦い抜き、頂点の栄冠を手にしたことを讃え、これを賞します
平成21年3月23日
桜花学園学園長
おめでとう、一騎君」
校長から表彰状とトロフィー、そして300万円の小切手を渡された瞬間、体育館の中が拍手と喝采に包まれた。
そんな中、あの実況していた女の子が、壇上に飛び乗り、俺にマイクを突き付けてきた。
「卒業式バトルの王者、萩原一騎さん。今のお気持ちをどうぞ」
「あ、ああ。そうだな……」
俺は会場の仲間の顔に眼を向け、浅く瞼を閉じた。
「初めは……、つーか、入学した時は、……なんてメチャクチャな学校だろうと思ったな。何かに付けてケンカして、バカやって。自慢できることなんて、なんも無いかもしれねぇけど。でも、これだけは言える。俺にとって、最っ高の三年間だった」
俺の言葉に、会場中が沸き上がった。
「おお! 素晴らしいお言葉ですね。それで、一騎さん。もう1つだけ質問しても宜しいですか?」
「ああ、何だ?」
「ズバリ、賞金の300万円は何にお使いになられるおつもりですか」
「あっ」
きたっ!!
待ちわびたその質問に、俺を含めた卒業生一同がニヤッと笑った。
「あの~、一騎さん。どうかしましたか?」
「あっ、わりぃわりぃ。何でもない。そんで、300万円の話だが、もう全額使っちまったよ」
「えっ、それは一体どういう……、キャッ」
首を傾げる彼女の言葉は、突然鳴り響いた轟音に掻き消された。
「やっべ。もう、おっ始めやがったか。おい、在校生諸君。全員まとめて、さっさと表に出ろ」
俺は彼女からマイクを引ったくり、体育館の全員を外に出るように促した。
ピヒュ~~~…ドーン
ピュ~~~……ドドーン
「「「ワアーーー。何だアレ。スッゲー」」」
何処からともなく零れる、驚きの声。
既に夜の帳が降ろされた体育館外の夜空は、次々と打ち上げられる花火に、色鮮やかに染められていた
そう
コレこそが俺たち卒業生全員でした約束だった。
卒業式バトルの賞金で在校生にモノ以外の何かを残したいという思いから持ち上がった、季節外れの大花火大会。
クサイ演出に思えたが、評判は上々のようだ。
夜空に咲き誇る大きな花火の一発一発に、学園生活の思い出が蘇ってくる。
そして時間が過ぎ、うち上がる花火がもう少しになった頃、今日の為に特別に作った特大の花火が夜空に咲いた。
「……あ」
刹那に咲くその花火の色はピンク色。
それからは、大きな桜が次々と春の夜空に咲いた。
そんな上空ばかり見上げる俺の手に、嫉妬でもしたのか、桜花学園の桜の花弁か一枚舞い降りた。
そして
俺は、今この時まで溜めていた言葉を、囁くような大きな声で吐き出した。
ありがとう
(完)




