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ラストバトル  作者: 野生
4/8

第3章 決戦 巨大ロボット!?

「あ~~~あ、腹いっぱい。満足満足」

 俺はたっぷり膨れたお腹を擦りながら、さまざまな倉庫が立ち並ぶ学園の一角を一人歩いて

「さ~て、次はどんな奴か……」

 GAGAGAGAGAAAAA

 俺の言葉は、辺り一帯に突如として鳴り響いた轟音にかき消された。

「な、なんだ?」

 続く轟音、揺れる大地。

 そして、

 ひときわ大きい爆音と共に、立ち並んでいた倉庫の一つが吹き飛び、中から校舎よりもでかい巨大ロボが現れた。

 おいおい……

「は~……、こりゃまた」

 もう、なんでもありだな。

 目の前に立ちあがる意味不明理解不能な巨大ロボ。

 その頭部が突然開いたかと思うと、中から拡声機が飛び出し、操縦者であろう生徒の声が聞こえてきた。

「ハッハハハハハハハ、聞こえるかね、一騎君」

「その声は……、誰だ?」

 俺の質問に、巨大ロボットがものの見事にズッこけた。

「コラァァァ、一騎ィ。貴様、この桜花学園が誇る天才発明家を忘れたのかっ」

「うっせぇなぁ。冗談だ、冗談。もっと音量下げろ、バカ」

 まったく、冗談の通じない奴だ。

 俺は、おそらく巨大ロボの中の操縦席で座っているであろう、工学部Aランクの『発明狂』木島洋介きしま・ようすけを思い出し小さく溜息をついた。

「んで、そいつは一体何だ?」

「フッフッフ、聞いて驚くなよ。これこそ現代科学の結晶、超ウルトラハイパーDX桜花君32号だっ」

「ホント暇だな、お前らも」

 なんともネーミングセンスの古い桜花なんたらロボを前に、俺は心底ため息をつきながらも、体はいつでも戦闘を行えるように身構えた。

 すると、再び桜花君32号の頭上の拡声機から、余裕たっぷり自信満々の木島の声が響いてきた。

「フフフフフ。無駄だよ、一騎君。この超ウルトラハイパーDX桜花君32号には、君の戦闘データをすべて入力しておいた。対萩原一騎のシミュレーションは完了している。君の勝てる確率は0パーセントだ」

「ああ、そうかい」

 楽しげに高笑いを響かせる木島にそっけなく答え、俺はゆっくりと《神楽》を鞘から抜き放った。

 そして、木島に向けて宣言する。

「けどよぉ、木島。一つだけ言わせてもらうぞ」

「ん? なんだい?」

「喧嘩っていうのはな、ぜってぇに勝てない奴に勝ってこそ面白いんだよっ」

 その言葉が契機となり、俺&桜花君32号のバトルが始まった。

「一瞬でスクラップにしてやる」

 その意気込みよろしく、俺はすぐさま桜花君32号の足元に飛び込み、そのくるぶし辺りに銀の軌跡を大気に残す《神楽》を切りこませた。

 だが……

「か、硬ぇ」

 桜花君32号の外郭の硬度は予想以上で、俺の振るった《神楽》は外面の塗装を僅かばかりはぎ取っただけで止まった。

「ハッハハハハハ。どうだね、一騎君。僕たち工学部が開発した新超合金の硬度は? この超ウルトラハイパーDX桜花君32号を、今までの超ウルトラハイパーDX桜花君シリーズと一緒とは思わないことだね。さて、今度はこっちの番だ」

 頭上で響く攻撃宣言と共に、俺の《神楽》を受け止めた桜花君32号の足が振りかぶられ、圧倒的な質量をもって俺を蹴り飛ばした。

「がはっ!?」

 なんとか寸前で力を逃がす方に跳びはしたが、殺しきれなかった衝撃に俺の身体が軽々と倉庫のシャッターに吹き飛ばされる。

 俺の身体を受け止め、シャッターが鈍い音と共に大きくへこんだ。

「っ。こりゃ、ちょっとヤバイかもな」

 《神楽》を杖に何とか身を起こした俺は、体の奥底から込み上げる感情に、笑いを堪えることができなかった。

 ホント、この学園の奴らは楽しませてくれる。

「どうだい、一騎君? 超ウルトラハイパーDX桜花君の性能は? 刃が立たないとは、まさにこのことだろ」

「ホント、よくしゃべるやつだな。ちょっとは黙ってろよ」

 憤激を織り交ぜ木島に怒鳴り返してみるが、その言葉はもっともだった。

 初撃の手応えで分かる。

 正攻法じゃ、桜花君32号に勝つのはかなり難しそうだ。

 じゃあ、どうする?

 俺は桜花君32号に目を向けるが、どうにも手は思いつかなかった。

「とりあえず、攻めてみっか」

 行き当たりばったり。

 結局、このスタイルが一番俺に合ってる。

 俺は再び身体を疾風に変え、太陽の光を遮る桜花君32号に向かって、真っ向から切り込んだ。

 先ほど同様に懐に入り込み、飛び上がる。外郭の段差を利用し、俺は一気に頭部へと辿り着いた俺は、その外郭版の板と板の間に《神楽》を滑り込ませた。

 てこの原理を利用し、俺はまず外郭の一枚を引っぺがしにかかる。

 だが、

「無駄だよ」

 あざ笑う声が響き、桜花君32号の顔面に張り付いていた俺は、桜花君32号の巨大な手によって背後から掴まれてしまった。

 桜花君32号の巨大な手が、ぎりぎりと俺を締め付ける。

「この、放せっ」

 鋼鉄の手の中で俺が必至にもがいていると、いかにもの分かりの良い声が響いてきた。

「うん、分かってるよ」

「は? ――う、うわぁ」

 桜花君32号の腕が振り上げられ、俺は思いっきり地面へと投げつけられた。

 なんちゅうことしやがんだ!

 俺は悪態を洩らしながらなんとか受け身を取り、転げるように地面に着地する。

 そして、目線を上げると、

「おいおいおいおいおいおい」

 桜花君32号がミサイルのギッシリ詰まった胸のハッチを開け、俺の方を向いていた。

「ファイアッ」

 楽しそうな攻撃の掛け声と共に、ミサイルが俺目掛けて放たれる。

「あんにゃろう」

 俺は舌打ちしながら、向かってくるミサイルに対して自ら飛び込んだ。

 ミサイルが完全に加速する前に下をトップスピードで駆け抜けた俺は、桜花君32号の股をくぐり、背後からその膝を蹴り飛ばす。

 膝の裏を蹴られ体勢を崩す桜花君32号。

 だが、俺は追い打ちをかけることはせず、桜花君32号の背中から伸びる黒いコードに目を奪われた。

「まさか……」

 いや、間違いない。

 桜花君32号の背中から伸びる太く黒いコード。

「有線かいっ!」

 俺は天才でありながらやはりどこか壊れてる木島に辟易のため息を漏らしながら、そのコード目掛けて《神楽》を握る腕を振り抜いた。

 バチバチバチバチバチッ

 凄まじい電気がショートする音と共に電源コードが断ち切られ、体勢を立て直そうと踏ん張っていた桜花君32号の眼から光が消える。

 桜花君32号の巨体が背中から地面へと倒れ込み、重々しい地鳴りが鳴り響いた。

「よし、終わりだ」

 意外にあっけなかったな。

 どこか肩すかしを食らった俺は、微妙にすっきりしないまま、地面に背を付ける桜花君32号に背を向けた。

 ウィ―ン

「ん?」

 背中越しに聞こえる、電子機器の起動音。

「まさか……、なぁ」

 ゆっくりと振り返ると、再び両眼に光を取り戻した桜花君32号が、倒れた身体を起き上がらせていた。

「おいおい、電源はぶった切ったはずだろ」

「ハッハッハー。甘いな、一騎君。予備電源だよ。たとえ電源コードが切断されようとも、この超ウルトラハイパー桜花君32号は、連続35時間の起動が可能なのさ」

「だったら、初めから電源コードなんていらねぇだろ」

「細かいことは気にするな」

「結局それかよっ!」

 呆れ交じりに吐き捨て、俺は再び桜花君32号に切り込んだ。

 一足飛びに桜花君32号の足下に潜り込んだ俺は、そこ関節部分の隙間に《神楽》の切っ先を突きつける。だが桜花君32号は関節部分の強度にもバッチリで、ガチンという音と共に、俺の腕に鈍い痺れが走った。

 俺は仕方なく外郭を諦め、視線を上に上げどこか内部に入り込めそうなハッチを探す。

 そんな俺の頭上から、桜花君32号のトラックのように巨大な拳が降ってきた。

 繰り出される拳の質量は驚愕の一言に尽きる。

 俺はすぐさま背後に飛び退き、拳の射程圏内から離脱。凄まじい音と共に地面が爆散し、土煙が辺り一帯に舞い上がった。

 視界を覆う土煙の中、俺の研ぎ澄まされた感覚神経が、聴覚から知りえた情報を頼りに、俺の肢体に命令を下す。

 突如として現れる、小型の無人ミサイル。

 事前にその軌道を察知した俺は、自らミサイルに突っ込んだ。

 ミサイルの数は、感じられるだけで5つ

 俺はすぐさま迎撃の体勢を整えた。

 真正面から土煙を吹き飛ばし現れたミサイルの真下に一歩で潜り込むと同時に信管を切り飛ばし、返す刀で背後から迫って来たミサイルの後翼を切り飛ばす。そのまま俺の左肩を掠め、バランスを崩したミサイルが地面に墜落し、爆発。辺りの砂埃が吹き飛ばされ、激しい爆風が俺の身体を蹂躙する。

「あっぶね~~」

 制服の端を爆風の余波にたなびかせながら、俺は体中の感覚を研ぎ澄まし、見失った残り三機の捜索を開始した。

「見つけた」

 叫びながらに真横から地面を這うように飛んできた一機を脇で抱え込み、その軌道を背後から俺を襲うもう一機に定める。

 二機分の火薬が爆発し、辺り一帯を熱風が駆け廻った。

 残すは一機。

 気配は……真上だ。

 飛び退く俺の今まで立っていた地面が、轟音と共に爆ぜ割れた。

 更に隙間なく撒き上がる砂塵に身を隠し、俺は桜花君32号に疾走する。

 その瞬間、俺の耳にキュイーンという空気が圧縮されるような奇怪な音が響いた。

 俺の背筋に悪寒が走る。

 カッと目を見開き急ブレーキをかけた俺は即座に背後に飛び退き、無様に地面に転がった。

 俺の前方で眩い光がきらめき、地面が粉々に爆散する

「ふぇ~」

 顔を上げた視線の先にあるモノに、俺は安堵か感嘆かよくわからない溜息をついた。

 俺の進行先にあった地面に、圧縮した光子を超高速で振動させる、マンガでしか見たことのない光化学兵器のビームサーベルが突き刺さっていた。

「つーか、死ぬぞ」

「大丈夫だ、出力は落としてある。安心しろ、一騎。コレを喰らっても、肉が焼けて、粒子まで分解されるくらいで済むから」

「だから、それを死ぬって言うんだよ」

「頑張れ」

「応援してごまかすな」

 悪態をつく俺に、桜花君32号は重々しい音と共に、ビームサーベルを振り押してきた。

 さすがにこれはいくら《神楽》でも受け止めるのは無理だろう。

 幸い桜花君32号そのものの動作は速くなく、俺は余裕を持って光子剣の切っ先から離脱した。

 爆音と共に地面が抉れ、土埃が巻き上がる。

 俺の目前で砂のカーテンが二つに割れる。

「ぬぁ!?」

 砂のカーテンを切り裂いたのは、光子の剣ではなく、超高圧で発射された水の剣、ダイヤモンドをも切り裂くウォーターカッターだった。

 またもギリギリで飛び退く俺の背後にあった倉庫の壁が、凄まじい水圧で発射された水により軽々と切断される。

「こんなもん、人間の体なんか一発だぞ」

 ゾッとしない光景だった。

「さすがにこのままじゃやべぇな」

「つか、死ぬね」

 さわやかな声が拡張期から洩れる。

 さすがに、イラっとしてきたぞ。

 俺は軽く息い、腹を括って桜花君32号へ向けて飛び出した。

 上空から振り下ろされる光と水の刃を掻い潜り、一足で間合いを詰める。

 神速で《神楽》を振るい、奴の足もとの装甲の同じ場所を連続して斬り付けた。

 斬撃に合わせ甲高い音響く。

「くそっ、これでもダメかよ」

 数ミリセンチの誤差なく同じところを切り付けたにもかかわらず、足もとの装甲の塗装が少し剥がれた程度で、実質的なダメージはほとんどない。

 今更ながらこの学園生徒の技術力に脱帽した。

「一体、どうやったら壊れんだよ、こいつは」

 悪態をつきながら、俺は上空から振り下ろされた鉄拳を僅かに体を捌いてかわし、その拳を踏み台にしてそのまま桜花君32号の腕を駈け上がった。

「甘いっ」

 爽快な叫びと共に、俺が駆けあがっている腕の二の腕部分のハッチが開き、中からガトリングがせり上がった。

「やべぇ」

 連続する銃声が木霊し、空薬莢が次々に排出される。

 跳び上がる俺の下方で焦りの叫びが銃弾に引き裂かれた。

 ホントに殺す気で来てやがんな。

「上等っ」

 ガトリングの銃身を振り下ろす《神楽》で叩っ斬り、再び桜花君32号の腕に着地。

 そして、

「これで、どうだっ」

 俺はガトリングの出てきた穴へ神楽の切っ先を捩じり込んだ。

 小さなスパークが俺の眼の前で炸裂し、焦げ臭い匂いが俺の鼻孔をくすぐる。

 桜花君32号の左腕が、ガクンと力無く肩元から垂れ下がった。

「よっしゃっ」

 俺の歓喜の雄叫びが辺りに響く。

 しかし、これは油断以外の何物でもなかった。

 横手から桜花君32号の拳が俺の半身を殴りつけ、尋常でない衝撃が痛みとなって俺の身体を駆け廻る。

 そのまま横手のスっ飛ばされた俺は、なんとか空中で体を捩り、着地。そして、口の中に広がる鉄の味を、唾と共に吐き捨てた。

「ひどいことするな、一騎君。僕の超ウルトラハイパー桜花君32号の左腕をこんなにしてくれちゃって」

「うっせぇ。知ったこっちゃねぇよ。つーか、ホントにどうやったら壊れんだ? そのデカブツは?」

 袖で口の端に零れる血を拭いながら、俺は更に戦気爛々とした眼で目の前の桜花君32号を睨みつけた。

 そして情報を整理する。

 とりあえず、硬いのは外の装甲だけ。中なら、どうにかダメージを与えられる。

 問題は、どうやったら一撃でこいつを止められるかなわけなんだが…… 

 て、あっ!

「いいもん見っけ!」

 俺は地面に横たわるある物を見つけ、渾身の笑みを浮かべた。

「ん? どうした一騎君。そんなに笑って。まさか、今更この超ウルトラパイパー桜花君32号の凄さが分かったのかい?」

 スピーカから聞こえてくる憐れむようなその声に、俺はいかにも悪者っぽく笑い、《神楽》の刀身をを水平に構え、

「いいや、見つけたのは。その木偶の坊の弱点だっ!」

 全身の筋肉を爆発させて、一気に桜花君32号との間合いを詰めた。

 狙うは先ほど連続して斬りつけ塗装が剥がれたその一点のみ。

「くらえっ」

 後は、《神楽》と装甲。

 どちらの強度が勝るかだ!

 そして、その答えはすぐに分かった。

 一瞬の硬い手応えの後に続く、断続的なナニかを斬る手応え。

 桜花君32号の足の装甲に、《神楽》の刀身が突き刺さっていた。

 自分の足に刺さる刀を見て、桜花君32号の動きが鈍る。

 だが、刺した場所が悪かったのか、微塵も不具合を感じなさそうに、桜花君32号は足を持ち上げ、俺を踏みつぶしにかかった。

 俺は刺さったままの《神楽》から手を放し、慌てて上空を影で覆い隠す鋼の靴裏から離脱する。

「ハーッハッハッハッハッハッハ。惜しかったね、一騎君。まさか、あの装甲が破壊されるなんて思ってんかったけど。でも、これで君の武器はゼロ。最後に笑うのは、やっぱりこの僕なんだ」

「いちいち、演説がうるさいんだよっ」

 無駄な演説と吐き捨て、俺はある一点目掛けて足の筋肉の緊張を開放した。

「ん、っど、どこに行く一騎君」

 上空から響く木島の声をまるっきり無視して、俺は桜花君32号の背後に回り込み、そこにあった黒く長いコ―ドを抱きかかえる。

「なっ、まさか」

「その、まさかだっ。くらえぇぇぇ」

「わっ、や、やめろー」

 スピーカーから聞こえてくる制止に耳を貸さず、俺は桜花君32号の脚に突き刺さる《神楽》に電源コードを叩きつけた。

 途端、桜花君の中から凄まじい電気がショートする音が響き、体の各所から火花が発生。そして小爆発を繰り返したかと思うと、眩い光と爆音を轟かせて、まるでマンガみたいに桜花君32号の身体が吹っ飛んだ。

「ギャア―」

 叫び声と共に欧化君32号の背中のハッチが空き、中から脱出ポットが噴出される

「お、おぼえてろ―。一騎ィ―」

「やなこった」

 俺は吹き飛ばされパラシュートで降りてくる木島に向かって、辟易しながら呟いた。



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