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流れ星の羽

作者: 白雲木

 

 ぼくの名前はせいいちろう。

 夢は、まだだれも見つけていない星を見つけること。星を見つけたら、ぼくはなまえをつけたいと思っている。



 おたんじょうびに買ってもらった、ぼうえんきょう。とてもたかいものだったから、しばらくたんじょうびプレゼントはなしと言われた。でも、そんなこともかまわないくらい、ぼくは夢中で星をさがした。



 毎日、毎日、夜空を探した。星のずかんと見くらべる。どれもこれも名前がある星だ。どれもこれもだれかが先に見つけた星だ。ぼくはぼくの星を見つけるんだ。だからあきらめないで探すんだ。



 ある夜。ぼくは夢を見た。とおいとおい、うちゅうの夢だ。シリウスよりもとおい、ぎんがをいくつも飛びこえて、ぼくは飛んでいた。



 どこにも星がなくなった。真っ暗なところまできちゃった。ぼくはこわくなった。そろそろもどろう。



 そのとき、声が聞こえたんだ。



 「さみしいよ、たすけてよ。」



 くらやみの中、よわいよわい光があった。ゆらゆら、ゆらゆら、ゆらめいて、泣いているみたい。


 

 ぼくはその星が赤ちゃんなのだとわかった。まだまだ光がよわくて、誰にも見つけてもらえない赤ちゃん星。だから、ぼくはそっと声をかけたんだ。



 「ぼくが見つけてあげる。まっていて!」



 そうすると、星はわらったんだ。



 「ありがとう。まってる。」




 ぼくは毎日赤ちゃん星をさがした。シリウスよりもとおい、ずっとずっととおくの空だ。なかなか星は見つからない。だからぼくはロケット花火に手紙をくくって打ち上げた。



 夜空にはじけたロケット花火。火花がちって、手紙をとばす。手紙はじょうしょうきりゅうにのって、どんどんのぼっていった。そのうち、うちゅうの風にのって、どんどんとおくへ行った。シリウスよりも遠い。ぎんがをいくつも飛びこえた先へ。



 手紙の返事が来た。僕は大人になっていた。それくらい遠かった。手紙にはこう書いてあった。



 「羽をくれたら、ぼくもそっちに向かって飛ぶよ。」



 僕は羽を作ることにした。赤ちゃん星のための特別な羽だ。息子の星司(せいじ)も喜んで手伝ってくれた。



 ある日完成した羽を、僕はロケット花火で星司と打ち上げた。夜空に弾けたロケット花火。火花が散って、羽を飛ばす。羽は上昇気流に乗って、どんどん高く飛んだ。そのうち、宇宙の風に乗ってどこまでも遠くへ行った。シリウスよりも遠い。銀河をいくつも飛びこえた先へ。



 僕は毎日望遠鏡を覗いた。いつしか起き上がるのが億劫になって、今は孫の星夜(せいや)が喜んで星を探している。





 ***



 どれくらいまっただろう。きれいなきれいな青い羽。赤いビーズのついたかがやく羽が、ぼくの元へとどいた。ぼくはそれをせなかにつけた。ぼくはあのときよりも、ずっとずっと強く光れるようになっていた。



 見つけてもらうんだ。夢で会ったあの子に。



 ぼくは黄色にかがやいて、羽をつかってビュンビュン飛んだ。ぎんがをいくつもこえて、シリウスの向こう。ぼくは見つけてもらうんだ。



 ***



 あれからどれくらいたっただろう。ぼくはいそいでいた。じぃちゃんはもうすぐ天国へいくというからだ。今日もぼくはぼうえんきょうをのぞく。冬の夜だ。



 ピカッ。

 


 何か光った!あれは流れ星?シリウスの方からやってくる。



 きっとあれだ!ぼくにはわかる!


 


 ぼくは父さんを呼んで、じぃちゃんのところへいそいだ。しんしつのじいちゃんをおこして、まどぎわにこさせる。せなかを支えて、みんなでぼうえんきょうをのぞいた。



 黄色の光に青い羽。羽のつけねに赤いビーズが光る。



 あの子だ!


 

 じぃちゃんは泣いてよろこんだ。ぼくもうれしくてないた。父さんも泣いていた。


 

 きがついたらじぃちゃんは、いきをしていなかった。じぃちゃんは流れ星にみちびかれて、天国へいったんだ。ぼくはさみしかったけど、かなしくはなかった。



 「じぃちゃんは、アイツに会えたんだ。」



 父さんがぼくに言った。



 あの子の名前はじぃちゃんがつけるはずだった。 だから、ぼくたちはあの流れ星を「アイツ」とよんだ。



 ***



 青い羽でビュンビュン飛ぶのは楽しくてかいてきだった。



 ふと、同じはやさでとんでいるなにかを見かけた。かたいぼうしのようかものをかぶって、まるいものが2つついた、大きなのりものにのっている。そののりものはブンブン大きな音をたてている。



 「ちょうしはどうだい?」



 ひげのはえたその人は言った。かすかに、むかし夢に見た、男の子のおもかげがあった。



 「ぜっこうちょう!」



 ぼくが笑っていうと、その人も笑っていった。



 「きみ、なまえは?」



 「え、ないよ。かんがえたことなかった!」



 「それなら、………はどうかな?」



 ぼくはその人がかんがえてくれたなまえをとてもきにいった。にっこりうなずくと、その人は言った。



 「いっしょに夜空のドライブと行くか?」



 そうしてぼくたちは、夜空をブイブイ飛んでいった。光の尾を引きながら。

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― 新着の感想 ―
すごく美しくて、優しくて、雄大なお話でした。星の赤ちゃんが来るまでに何十年もかかるのが、すごく良かったです。どんなお名前だったのかなと気になりますが、伏せてある方が余韻でてますね。
最後、星の名前をあえて伏せるところが良いですね! 夜空の光景が浮かぶ、素敵なお話でした。
さ、刺さりました。 シリウスよりも遠い、の言い回しがすごく好きです。
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