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「暮林さんのふわふわした文体が好みで、このひとの文章好きだなと思える作品でした」
Xにて、大谷みずきは文学フリマ京都で買ったフォロワーの暮林野花のエッセイの感想をポストする。かわいいタイトルと表紙写真に惹かれ、取り置きをお願いした上で開場前に買いに行ったのだ。みずきは小説カテゴリー、野花はエッセイカテゴリーでの出店だったので少し距離があったけれど、みずきは必ず野花のエッセイを買うと心に決めていた。
しばらくして、みずきのXアカウントに知らないアカウントからいいねされたと通知が来る。野花の本の感想を綴ったポストにいいねされたけれど、そのアカウントは野花の名前をもじったアカウント名だった。暮林さんのなりすましかなと思い、みずきはそのアカウントのページを見てみる。すると、
「暮林野花は気が乗らないと約束を平気でブッチする。複数人に借金を申し込むも返さない。暮林との金銭トラブルの被害者多数。裏アカ女子もやってて男性と2人で会ってる」
などと野花の顔写真付きであることないことが書かれていた。野花に恨みがあるにしても、こんなの誰が信じるんだとみずきは思う。そのアカウントをブロックし、みずきはページを閉じた。