目の前への行動を
水歌が目を開けると、そこは牢屋の中だった。
「...ガチで捕まってるじゃん。」
水歌は嫌そうな顔をした。
そして、考えた。
「...とりあえず稲荷神社には行かないとだし、まずここから出ないと...。」
水歌はボソっとそう言った。
そんな時だった。
「もう起きてたんだな。」
牢屋の前には赤いメッシュが少し入ってる黒髪に赤色の目を持った青年が立っていた。
「...誰?」
「俺はルアン。お前を見張るように言われるんだ。」
「へぇ...。ルアンさんって強いの?」
「魔王城の四天王の1人ではあるからな。強いぞ。」
水歌は四天王という言葉に反応した。
「じゃあなんで四天王が人質を見張っているのですか?普通なら部下に任せるとかじゃ...。」
「お前は捕まえた人質の中でも一番大事だから、逃げないように見張ってるんだ。」
「なるほど...。」
この時、水歌は思った。
他に人質がいるということは、協力すれば脱出も可能かもしれないということを。
「そういえば、お前は他の人質と違って大人しいな。他の人質はみんな魔族に怖がっているんだがな。」
「あぁ...そっか。」
水歌は怖い物が1つしかない。
それは、死ぬことだった。
それ以外なら、お化けだって虫だって大丈夫。
勿論、魔族だって平気だ。
「うちはあまり怖くないですね。ルアンさんだって、人っぽいですし。」
「まぁ、俺は吸血鬼だからな。」
「吸血鬼...人の血を吸って生きるあの...?」
「そうだな。ま、俺は少食だから、1年に一度でも飲めたら、あとはトマトジュースで平気だけどな。」
吸血鬼はトマトジュースも飲むという話はたまにあるが、本当だったことに水歌は驚きつつあった。
そして、チャンスとばかりに話し始めた。
「そういえば、聞きたいことがあるんですが、いいですか?」
「ん、なんだ?」
「今まで、脱獄した人はいたんですか?」
「...1人だけな。この牢屋、火魔法にだけ弱くてな、突破された。」
「へぇ...。」
水歌は良いことを聞いたというようにニヤッとした。
「まぁ、その首輪がある以上、魔法は使えねぇけどな。」
「首輪...。」
水歌は今、赤き宝石が目立つ首輪をつけられている。
「この宝石が魔力の封印を行ってる的な?」
「そうだな。」
「そっか...。」
「...あ、俺用思い出したから行くわ。大人しくしてろよ。」
「はーい!」
ルアンはその場を去っていった。
その後、水歌はやることをし始めた。
「封印してるのがこれなら、壊せばよくね?」
水歌は宝石にデコピンをした。
その瞬間、宝石が弾け飛んだ。
転生前の水歌は、デコピンでスイカを壊したり、ギュッと力を込めて握ったらコンクリートにひびが〜なんてのは当たり前だった。
そのため、今回もこんな感じで上手くいったのだ。
「さて、魔力は戻っただろうしやろうかな。...【ファイアーボール】!」
ジュ。
その音と共に鉄格子が解けていった。
「【修復】。」
そう言うと、鉄格子が治っていった。
「証拠隠滅も出来たし、行くか。」
水歌はどこにあるかはわからない稲荷神社に向かって歩いていった。
牢屋から離れたルアンはとある部屋に来ていた。
「お呼びでしょうか?魔王様。」
ルアンの目の前には、水色の髪に濃い青の目の青年がいた。
彼こそが魔王である。
「今は魔王じゃなくていいだろ。ルアン」
「...ははっ、わかったよ、リアス。」
「それでいい。で、お前のとこの人質はどうだ?」
「いや、それが...魔物に怖がる素振りがないんだよな。」
「...は?」
「えっと...マジ。」
「...嘘ではなく?」
ルアンは頭を縦に振った。
「マジか...。」
リアスは頭を抱えた。
「なんで怖がらないのかわかるか?」
「人型だから平気らしい。」
「ってことは俺も平気の可能性が高いかもなぁ...。とりあえず、会ってみていいか?」
「いいと思う。まぁ、行くか。」
「だな。」
2人は牢屋に歩いていった。
誰もいない牢屋へ。
「...扉には門番がいるのか...。角とかどっかに落ちてないかな?」
水歌は魔族になりきってやろうと思っていた。
そのため、落ちてないかさがしているのである。
が、角なんか取れるはずがなく、落ちていなかった。
代わりにマントが落ちていた。
「...これでいいか。」
水歌はマントをつけ、門に向かっていった。
そしたら、何もなく通れた。
「...えーっと、確か森にあるんだよね。ってことはあそこか。」
水歌は目の前の森を見て、絶対に行かないとと決心したのだった。
水歌が森に入ろうとしてる時、魔王城内では水歌の詳細不明事件に頭を悩ませている上位2名がいた。
「嘘だろ...。」
「嘘じゃないんだよなぁ...どこ行ったんだよ、アイツ。」
「ルアン、どうやって抜け出したと思う?」
「...もしかしたらあれかもしれない。牢屋で聞かれたんだ。今まで脱獄したやつはいるのか...って。」
「ということは...取ったのか。あの首輪を。てか、勇者のところに行かれたらヤバい。ルアン、探すぞ。」
「あぁ、わかってる。」
「はぁ...まった面倒くせぇ事に...。」
そう言うと、リアスはマイクを出した。
「全魔族に連絡する!!逃げた人質を捕獲せよ!!」
その言葉と共に、全魔族がウォーっと声をあげた。
そして、全魔族が動き出した。
1人の人質を捕獲するために。
それと同時刻、人間界にも変化があった。
「えっ!?私がリーダー!?」
水歌の妹である彼方が騒いでいた。
「いやだって、勇者って職業の俺より幼馴染みのお前の方が強いじゃんか!!」
「そうだよ!!」
「だな。」
彼方の身に起こった大変なこと。
それもまた、未来を進める大事な分岐点だったのだ。