うしのくび【前日談3】
長い。
長い。
とてつもなく長い時間。
僕はアウトドアに憧れていた。
だが金銭的な理由。
それだけでは無い。
時間的な理由も有るが実現できなかった。
他の理由としては妻がアウトドアに興味を示さなかったのもある。
というかアウトドア嫌いみたいだ。
それどころか危ないからと禁止される始末だった
それでも何とか説得し貯金しようとしたが上手く行かなかった。
そうして時間だけが過ぎた。
時間の経過と共に諦め初めていた。
いや。
諦める筈だった。
キッカケは息子の誕生。
妻と結婚して二年後に生まれた長男存在がキッカケだった。
昔子供が生まれたら一緒にアウトドアをする夢を思い出したのだ。
決意を新たに僕は小遣いを貯め貯金し続けた。
だが貯金は会社の付き合いの関係もあり中々上手くいかない。
其れでも目標を見据え必死に目標額を貯めれたのは丁度息子が十歳の時だ。
資金が貯まった僕は即座にアウトドアに使うキャンプ用品を買い求めた。
其のまま僕はキャンプをしに息子と出かけた。
嫁を留守番させて。
嫁のアウトドア嫌いは筋金入りみたいだ。
目的地は山頂の指定された所に広場らしき場所。
過疎化した田舎の村に有るキャンプ場がある。
其処が目的地だ。
但し此処まで徒歩一時間。
駐車場から遠いのが欠点だ。
というか封鎖というか閉鎖というか……。
管理人が居ないけどキャンプ場だ。
勝手に使って良いとネットで調べたら書いてあったが良いんだろうか?
だが金銭的な理由で使用料が無料なのは有り難い。
山頂から見下ろすと村が見える。
後はキャンプを楽しんだ。
いや~~ダッチオーブンて便利だな~~。
息子も喜んでるし。
いいな~~。
長年の夢が叶えられました。
鉱石ラジオを聞きながら僕は食事をした。
食事した後洗い場に残飯が少し残ったが別に良いだろう。
此れぐらい。
それから暫くして就寝した。
深夜。
何やら物音がする。
いや違う。
悲鳴だ。
恐る恐るテントの外に出ると洗い場に何か居る。
懐中電灯……。
やめとこう。
何故か嫌な予感がする。
分厚い雲に覆われた月が晴れ周囲を照らす。
其処に居たのは大きな黒い影。
熊だ。
熊は水飲み場で息子を襲っていた。
此処で記憶が曖昧だ。
無我夢中で息子を助け熊から逃げ出した。
着の身着のまま。
息子を背負い逃げ続けた。
見知らぬ大木の根元で息子を下ろすと傷口を見る。
深い。
酷く深い。
右手を失っていた。
其れを僕は止血していたみたいだ。
記憶にない。
スマホで連絡を取ろうにも無理だ。
テントの中だ。
置き忘れたみたいだ。
徒歩で車まで……。
道が分からない。
林の中を彷徨い道を見失った。
仕方ない。
諦めず歩くだけだ。
朝になれば方向が分かるだろう。
朝になった。
道が分からない。
どうすれば良い?
息子が死ぬ。
歩くしかない。
水が欲しい。
時間の経過が分からない。
時計は何処かに無くしたみたいだ。
息子が唸っている。
不味い。
不味い。
雨が振ってきた。
水だ。
息子に水を飲ませて僕も飲む。
何処かで鉱石ラジオの音楽が聞こえた気がする。
時間が分からない。
お腹すいた。
日が暮れる。
もうダメだ。
此処で泊まるしか無い。
朝になった。
道が分からない。
どうすれば良い?
息子が死ぬ。
歩くしかない。
水が欲しい。
時間の経過が分からない。
時計は何処かに無くしたみたいだ。
息子が唸っている。
不味い。
不味い。
雨が振ってきた。
水だ。
息子に水を飲ませて僕も飲む。
何処かで鉱石ラジオの音楽が聞こえた気がする。
時間が分からない。
お腹すいた。
日が暮れる。
もうダメだ。
此処で泊まるしか無い。
朝になった。
道が分からない。
どうすれば良い?
息子が死ぬ。
歩くしかない。
水が欲しい。
時間の経過が分からない。
時計は何処かに無くしたみたいだ。
息子が唸っている。
不味い。
不味い。
雨が振ってきた。
水だ。
息子に水を飲ませて僕も飲む。
何処かで鉱石ラジオの音楽が聞こえた気がする。
時間が分からない。
お腹すいた。
日が暮れる。
もうダメだ。
此処で泊まるしか無い。
朝になった。
道が分からない。
どうすれば良い?
息子が死ぬ。
歩くしかない。
水が欲しい。
時間の経過が分からない。
時計は何処かに無くしたみたいだ。
息子が唸っている。
不味い。
不味い。
雨が振ってきた。
水だ。
息子に水を飲ませて僕も飲む。
何処かで鉱石ラジオの音楽が聞こえた気がする。
時間が分からない。
お腹すいた。
日が暮れる。
もうダメだ。
此処で泊まるしか無い。
朝になった。
道が分からない。
どうすれば良い?
息子が死ぬ。
歩くしかない。
水が欲しい。
時間の経過が分からない。
時計は何処かに無くしたみたいだ。
息子が唸っている。
不味い。
不味い。
雨が振ってきた。
水だ。
息子に水を飲ませて僕も飲む。
何処かで鉱石ラジオの音楽が聞こえた気がする。
時間が分からない。
お腹すいた。
日が暮れる。
もうダメだ。
此処で泊まるしか無い。
お腹すいた。
動けない。
どれぐらい時間が過ぎたか分からない。
その時だった。
眼前に仔牛が現れたのは。
倒れた仔牛。
僕は最後の気力を振り絞り仔牛を殺して生で食う。
美味い。
美味い。
其れを息子に与える。
ニコリと嗤う息子。
美味しいね。
何処かで鉱石ラジオの音がする。
何処かで。
翌日捜索隊に発見された僕は隊員の絶叫に首を傾げた。
そのまま精神病院に直行した。
僕が食べたのは仔牛ではない。
少なくとも二足歩行の仔牛は居ない。
ではアレは……。