未来【後】
宿泊する予定の旅館へと電話をすると、
嫌そうな雰囲気を出された。
まあ。こっちに非があるので仕方がない。
俺は急いで車を走らせた。
だが、山道は暗く、更には路面が滑る。
寒さと焦りでいつの間にか眠気は何処かへといった。
同僚「アラームセットしたんだけどな、、」
「相当。疲れてたんだな、、
それより、開けっぱで大丈夫だったかな。」
同僚「多分ああゆう所は泊まってんだろ。」
暗くて先が見えない道を。
ただひたすらに進む。
が、、。
一向に、道から出られない。
「、、どうなって、るんだ。」
同僚と運転を変わり、助手席へと座る。
カーブを曲がり、真っ直ぐ進むと。
それが何回も繰り返される。
同僚「どうなってんだよ!」
恐怖なのか、苛立ちなのか。
訳の分からない状況に。
俺達は頭を抱えた。
同僚「電話は、、?」
携帯を見る。
画面は暗く、電源が切れてしまっていた。
「なんで、こんな時に、、」
同僚は焦るようにして何かを探す。
同僚「あそこに、、携帯置いてきた。」
前に進んでも進めない。
だから、戻るしか無かった。
その時は、何となく。
それが正しいと思った。
山は寒く、辺りは暗い。
宿にはまた電話をしなくてはいけなかった。
俺達は来た道をゆっくりと戻った。
すると何故だか、直ぐに着いた。
同僚「どうなってんだ、、」
俺達はそれを見て、立ち尽くした。
建物は、古く。
まるで、廃墟の様になっていた。
今日。昼間に取り付けたはずの看板も。
錆びていて、今にも外れそうになっている。
同僚「ははは。
間違えたのかね?」
道をよく見る。
他に、入れる様な土地は無かった。
「とりあえず。携帯、、」
建物へと入ると。疑いは確信へと変わる。
そこには俺達が。昼間居た場所があった。
湯のみも、同僚の携帯も。
数分前かの様に置いてあった。
同僚「やべえよ。ここっ。
早く、、」
同僚が何かを言いかけた時。
何かの音が響いた。
それは、どんどん近付き、
誰かが廊下を歩いてくる音と共に。
大きな声が響き始めた。
『おぉおおおおお!!!』
低く、唸る様な、声が近付く。
「出よう!」
入り口からはそう遠くはない。
同僚「なんなんだよ、、!」
急いで車へと走る。
焦っているのか、鍵が開かない様だ。
鍵を渡され、俺は車を開ける。
同僚「早く!!」
出てきた入り口から今にもナニカが出てきそうだ。
『うぉおおおお!!』
中から響く声は、直ぐそこまで近付いて来ている。
同僚「やべえよ!!」
ガチャッ。
聞き慣れた音と共に、急いでエンジンを掛けた。
こういう時。普通は逆なのだろうが。
エンジンはあっさりと掛かった。
ライトを付け、建物が照らし出された。
後方を確認しながらバックしていると、
助手席から悲鳴が上がった。
同僚「うわあああああ!」
俺のイライラも溜まり、
ハンドルを切り替え、キレようとした時。
看板の所に映る、何かがあった。
「なんだあれっ。」
よく目を凝らし、見つめる。
「うわあああ!」
そこには、沢山の顔が、
こちらを覗く様に見つめていた。
すると。同僚が俺の肩を叩く。
「なんだよっ!」
同僚は震え、口をパクパクさせる。
何かを言っている様だった。
「ど、どうしたんだよ。。」
同僚を揺すると、俺の後ろの方へと指を指す。
俺はゆっくりと振り向いた。
そこには、、。
古びた斧を持ったおっさんが、ニヤリと微笑み。
血の様なモノを付けて、窓の傍に立っていた。
次に目覚めると、俺はモニターに繋がれていた。
「先生!?」
看護婦さんが、誰かを呼びに行った。
外はまだ寒そうで。枯れた木々が風に吹かれて揺れる。
自分の身体は痛々しい程に。包帯で巻かれていた。
話によると、俺達はスリップしたか何かで、
運良く除雪された雪の中に突っ込んだらしい。
崖から落っこちたら、助からなかったそうだ。
全治3ヶ月。
気持ちを落ち着かせる為にも。
今は、とりあえず休もうと思う、、
医者から聞いた話しじゃ。
あの場所は、今ではほとんど使われてなく。
そこら一帯は、廃村してしまっていた場所だったらしい。
道路は近隣の人達が移動で使う為。
除雪されていて、またまた人が通りかかったのだとか。
「運が良かった」
そう、言われた。
しばらくすると、見慣れた様な顔がやって来て、
会うなり、早々に頭をひっぱたかれ、怒鳴られた。
最初はびっくりしたが、まあ。分からなくもない。
だって、自分の会社の車を廃車にしちまったのだから。
でも、そうじゃなかった。
『何であの場所に行ったのか』
何度もキツく言われたが。
俺は確かに仕事を受けた事は覚えていた。
確か、、。誰かと、一緒に。。
誰かは同僚らしく。彼はまだ見つかっていないらしい。
社長らしき人が言うには、俺と一緒に出たのだとか。
夕方に一度電話する話しだったのだが、連絡すら無く。
終いには、病院から掛かってくる不始末だったそうだ。
社長「まあ。とりあえず治せ。」
優しく心配している様子だったが。
顔色は、良く無かった。
"何であの場所に行った、、"
まるで、何か知っているかの様。
それに、、。
行ってはいけない場所にでも
行ってしまったかの様だった。
事故の衝撃で、軽い記憶喪失の様な状態になり、
当時の記憶すらも。よく分からない、、
警察が来たが、何も話せる事はなかった。
記憶が無いと言うのは不便なものだ。
時間が経てば、少しずつ思い出すのだろうか。
少しずつ、、思い出そう。
そして、、
早く。彼が見付かるのをただ。祈るばかりだ。
そう、呑気に思っていたのも。初めだけだった。
ゆっくりと、あの出来事を思い出して来る。
あれから時が経ったが、同僚はまだ見付かっていない。
俺はあそこには、行きたくない。
けれど、、
彼は待ってるのかも知れない、、