第99話:再びの王都
王都に帰還した俺たち四人は、まずイセレにデュラハン卿討伐の報告をした。
彼女はたいそう喜んでくれ、討伐は凱旋式も兼ねて住民に周知された。
リッチーロードに続いて恐怖が去ったことで、多数の住民や騎士が感謝してくれたのだ。
破壊された王都の復興はすでに完了しており、彼らの懸命な努力が感じられた。
凱旋式の後は、短いながらも華やかな宴が開かれた。
貴族たちに讃えられた俺たち四人は、イセレとともにようやくルトロイヤ教会の会議室に戻ってきた次第だ。
着席すると、笑顔のイセレが和やかに切り出した。
「みなさん、お疲れ様でした。王都の人々も、アスカさんたちと話せて嬉しかったことと思います。せっかくの凱旋ですのに、四聖が全員揃っておらず申し訳ありません。ググリヤは各地のモンスター討伐に出ており、ドソルは騎士団の力を底上げする訓練で忙しいのです」
「どうか気にしないでくれ。みんな、それぞれの仕事に真剣なのだから。まぁ、こう何度も宴や凱旋式を開いてもらわなくてもいいんだがな。俺は目の前の敵を倒しているだけなんだ」
「アスカ、謙遜もいいけど、感謝されるときはちゃんと感謝されなきゃダメだよ。みんなで嬉しさを分かち合うんだから」
たしかに、ナディアの言うとおりかもしれない。
住民や騎士、貴族たちはみな笑顔だった。
宴などを開かれると恐縮するのだが、今まで以上に楽しめたらいいと思う。
さて……。
俺はナディアたち三人と顔を見合わせ、この旅で得た情報を伝える。
「聞いてくれ、イセレ。デュラハン卿からマリオネット王女に関する情報を得た。目的は不明だが、今はエリュシオン島にいるらしい。次の満月、何かしらの行動を起こすとも聞いた」
「とうとう居場所がわかったのですね! ……しかし、グランド辺境伯からは何も報告がありません。まだ気付いていないとしたら、早急に伝えた方がいいですね。満月の日というのも気になります。私から連絡を取ってみます。緊急の連絡なので魔力鳥を飛ばしましょう」
イセレは窓を開け、魔力で作られた青色の鳥を飛ばす。
マリオネット王女の動向は不明だが、やはり情報は共有した方がいいという話でまとまった。
情報の信憑性をより裏付けるためにも、俺より四聖の歴が長いイセレが伝えるということだ。
併せて"星詠神殿"に置かれていた強者の首の件を話すと、彼女は心底悲痛な表情となった。
「……そうですか。修道会の騎士を派遣し、埋葬と神殿の修復を進めます。国を守ろうと戦ってくれた彼らに祈りを捧げようと思います。……ご一緒願えますか?」
イセレとともに暫し祈りを捧げ、強者たちの安寧を願う。
せめて、安らかに眠ってほしい。
「では、俺たちはさっそくエリュシオン島に向かおうと思う。今から行けば、ちょうど手紙が届いた頃に到着できるだろう。満月まで日はあるが、予期せぬ事態があるかもしれないしな」
「ありがとうございます。申し訳ありません、アスカさんにばかり……」
「気にする必要はない。俺も四聖だからな」
俺がそう答えると、イセレは穏やかな笑みを浮かべた。
しかし、彼女は険しい表情に変わる。
「最後に忠告させてください。これはまだ公表していない話ですが、先日重要な神託を受けたのです。それは……国中が今までにない危機に陥る、という恐ろしい内容でした」
イセレの言葉に、室内の空気が張り詰める。
彼女が受ける神託の現実性はたしかだ。
緊迫感が増す空気の中、イセレは言葉を続ける。
「現在の各地におけるモンスター活発化を指しているのか、はたまた別のものなのか、それはまだわかりません。でも、十分に気をつけてください。いつどこで、どのような危機が訪れるか予測できていないのです」
危機か……。
俺はナディア、ティルー、ノエルを見る。
彼女たちの姿を見たら、まるで心配はいらないと強く思えた。
「忠告ありがとう、イセレ。だが、たとえどんな危機に襲われようと問題ない。俺には……最高の仲間が三人もいるのだからな」
準備を終えた俺たちは、イセレやたくさんの住民、騎士たちの歓声を受けながら王都を発つ。
目指すは西に位置するグランド辺境伯領――エリュシオン島だ。




