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【コミカライズ化】無能と追放された最弱魔法剣士、呪いが解けたので最強へ成り上がる  作者: 青空あかな
「第三章」

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第97話:アスカの戦い②(三人称視点)

 デュラハン卿が剣を天に掲げると、上空に無数の黒剣が出現した。

 膨大な魔力が地上のアスカにまで強い圧をかけ、肌が締め付けられる感覚を覚える。


(全身にデュラハン卿の魔力を感じる。相当練り上げたか)


『《天墜》』


 直後、黒剣は猛烈な速度で降り注ぎ空気を揺らす。

 およそ、直径100mほどの広範囲攻撃だ。

 すかさず、アスカは全身の魔力を自分の剣に注ぎ込む。

 

「《飛天》!」


 巨大な斬撃が放たれ、高純度の魔力により黒剣を全て蒸発させる。

 その光景に、デュラハン卿の笑い声が響いた。


『はははっ、これも防ぐか! 面白い……面白いぞ、アスカ・サザーランド! 其方に魔法は効かぬようだな!』


 デュラハン卿は魔法による遠距離攻撃を止め、再度近接戦闘を仕掛ける。

 互いの剣がぶつかり火花が散った。

 幾人もの人間が戦う乱闘のような音が、アスカとデュラハン卿のたった二人によって奏でられる。


(剣撃のキレが格段に増している。斬撃の配置も俺の動きに適応し始めた)

 

 躱し、捌き、斬りかかる中、ふとアスカは異変を感じた。


(……この息苦しさはなんだ?)


 急に呼吸が浅くなり、空気を取り込めなくなった。

 最初は戦闘による激しい動きか精神的なものかと思っていたが、明らかに違うことがわかる。

 アスカの脳裏に思い出されるのは、幼少期に受けた登山訓練だ。


(昔、高山に登ったときの感覚そのものだ。これは……空気が薄くなっている?)


 何かされたと勘づいたアスカに、デュラハン卿は斬撃を浴びせながら種明かしをする。


『ふむ、気付いたか。今の我の剣は空気を奪う。我に呼吸の必要はないが、其方たち人間はどうかな?』

「……なるほどな」


 デュラハン卿が剣を振るうたび、アスカの周囲に漂う空気は刀身に吸収され消滅する。

 そのような魔法を剣に発動したのだ。

 呼吸を奪われつつあるアスカは、あくまでも冷静に状況を把握する。


(このまま斬り合っていても、いつか呼吸できなくなって死ぬ。かといって距離を取るにしても、退避した瞬間を切り裂くようにデュラハン卿は斬撃を配置している)


 激しい斬撃の応酬は、それだけで大量の酸素を奪う。

 デュラハン卿の魔法も相まって、アスカは急激に呼吸困難の状況に陥り始めた。

 胸には圧迫感と痛みが徐々に現れ、動機が増す。

 本来なら使わぬ肩や首の筋肉も呼吸のために動くことで、剣筋にもズレが生まれる。

 視野は狭窄し、暗く、かすみ、デュラハン卿の斬撃が二重に見える。


(いよいよ眩暈も出てきたか……)


 アスカの意識は薄れゆくが、失うには至らなかった。

 彼の脳裏には三人の仲間が浮かんでいたから。


(ナディア、ティルー、ノエル……。みんなも命を懸けて戦っているはずだ。俺なんかについてきてくれたみんなのためにも、ここで負けるわけにはいかない)


 今一度呼吸を整え、アスカはとある策を練る。


(長期戦は妥当ではない……それなら……)


 窮地に陥っても、尚もアスカは剣撃を捌き、確実に鎧の魔石を狙う。

 その粘り強さにデュラハン卿は感銘と畏怖を覚えた。


 ――……まだ動けるか。さすがは魔族四皇を二体も倒した強者だ。だが……。


 剣撃を捌いていたアスカの足下がわずかにフラつき、ついに"隙"が生まれた。

 今首元を狙えば、確実に勝てる。


 ――ここだ。


 デュラハン卿が勝利を確信し、首切りの一撃を放った瞬間。

 アスカは掻い潜るようにして躱し、鎧の魔石を貫き砕いた。


『な……に……?』

 

 デュラハン卿の全身にヒビが走る。

 急激に力が抜け、がくりと膝をついた。

 戦闘が始まって初めてのことである。

 漆黒の鎧から血のように魔力が漏れ出る様子を、アスカは冷静に見やった。


「留めの一撃は必ず首斬りの一撃と聞いたからな。わざと首を切りたくなる体勢を取らせてもらった」


 その言葉を聞き、デュラハン卿は全てを悟った。


『……隙を作ったのは我。其方に誘われた、というわけか。首切りの一撃を放ちたくなるように』

「ああ、そういうことだ。お前に斬り伏せられた数多の強者が突破口を見つけ出してくれた」

『フッ……あの極限状態でよくやったな』

「仲間のおかげだ」


 デュラハン卿の留めは必ず首切りの一撃。

 その信念を解明したのは数多の強者たちだ。

 そして、アスカの意志を繋いでくれたのは、ナディア、ティルー、ノエルの三人だった。


(目に見える仲間と目に見えぬ仲間……みんなのおかげで俺は勝てた)


 跪いたデュラハン卿は身体を支えることもできず、瓦礫に背を預けた。

 もう攻撃の意思や力強さは感じられない。


(あとはこのまま朽ち果てるだけか)


 アスカが剣を仕舞うと、どこからか自分の名前が呼ばれた。


「「アスカ(さん)!」」

「みんな、無事か!」


 ナディア、ティルー、ノエルの三人だ。

 彼女たちは傷だらけだが命に別状はなく、アスカの勝利を喜ぶ。

 

「デュラハン卿を倒したんだね! アスカなら絶対に倒せると思ってたよ!」

「さすがです! これで三体連続の討伐ですね!」

「お前はどこまでも強くなるな。追いつくのが大変だ」


 傷だらけの三人を見て、アスカの胸には熱い思いが溢れる。


「ありがとう。みんなのおかげだ」


 彼女たちがいたから勝てた。

 アスカはそう強く思う。

 勝利に喜ぶ四人をデュラハン卿はしばらく眺めていたが、やがて力なく話した。


『……そうか、部下たちは負けたか。我らの完敗だな』


 すかさず戦闘態勢を整えたアスカたちを見て、デュラハン卿は弱々しく笑う。


『まぁ、落ち着け。我にはもう何もできん。其方たちの勝利を讃え、我を倒した褒美をやろうと思ってな。気になっているであろう……マリオネット王女に関する情報だ』

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