表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ化】無能と追放された最弱魔法剣士、呪いが解けたので最強へ成り上がる  作者: 青空あかな
「第三章」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/115

第87話:終息

 ナイフを突き立てられた女性は、悲鳴に近い声を上げる。


「た、助けてー! お願いだから助けて!」

「ええい、黙れ! 静かにしろ! ……ククッ、取引しようじゃないか、四聖殿。この女の命はお前の命と引き換えだ。この女を解放してほしければ、今ここで死ね」


 ジェロームは血走った目で俺を睨む。

 奴隷商人もモンスターも全て倒されてしまった以上、彼に勝利の可能性はない。

 最後の手段として人質を取ったのだろうが、それはただの悪手だ。


「何とか言ったらどうだ、四聖殿。この女を見殺しにするつもりか? まさか、天下の四聖がそのような無慈悲な決断を下すわけがあるまいな?」


 俺は両足に魔力を集め、即座にジェロームの前に移動した。

 ナイフを持った手を押さえ、女性を解放する。

 ジェロームの顔から不敵な笑みが消え、代わりに驚きと恐怖の色が現れた。


「な、なにっ!? 一瞬で移動した!? 何の魔法を使ったんだ!」

「別に、魔法なんて何も使っちゃいない。ジェローム、お前はもう終わりだ。いい加減、諦めろ」

「……クソ……クソォォォオ!」


 ジェロームの悔しげな声が地下空間に響き渡り、奴隷商人も参加者も罰の悪そうな顔で俯く。

 この戦いは俺たちの勝利で幕を閉じた。

 解放された奴隷たちが喜び抱き合う中、俺はジェロームに"違法競売"を開いた理由を問うた。


「なぜ、こんな酷いことをやったんだ。ここにいる人たちは、お前のせいで人生が壊されていたかもしれないんだぞ」

「……金だ。金がなかったんだ! 投資で失敗して損失を埋める必要があった! 奴隷やモンスターの売買は金になる。あと少しで大金が手に入るはずだったのに……!」


 つまり、完全な私利私欲のために他者を傷つけたというわけか。

 ジェロームと奴隷商人たちは全て拘束し、参加者も地上の倉庫に連れて行った。

 後は、援軍の騎士たちに引き渡すだけだ。

 気絶から目覚めたモンスターは使役魔法の影響か、おとなしいものだった。

 地下の"違法競売"は壊滅したが、まだもう一仕事残っている。


「……俺とナディアは倉庫に残るから、ノエルとティルーは停泊中の船を調べてくれるか? こいつらの仲間が何人かいるようだ」

「承知した。一人も逃さず捕まえるさ」

「逃げようとしたら海の水を操ります」


 二人が向かってからそこそこの戦闘音が聞こえたが、それもすぐに止まった。

 拘束された奴隷商人の残りもまた、倉庫に運ばれてくる。

 "星詠神殿"の修道士たちやモンスターを運ぶための船で、"違法競売"の開催に大いに役立ったようだ。

 やがて、援軍として呼んだ修道会の騎士たちが合流した。

 倉庫の状況を見ては驚愕する。


「「奴隷売買の疑いということでしたが、これは相当の規模ですね。いったい何があったんです」」

「待て、私が説明しよう。私はノエル・ダレンハート、修道会の騎士だ」


 ノエルが経緯を説明してくれ、ジェローム及び奴隷商人と参加者の全員は修道会に連行されていく。

 今後本格的な調査を行い、全容の解明に務めるそうだ。

 捕まったモンスターについては、捕獲された場所に逃がす手筈だとも聞いた。

 残った騎士の数名が握手しながら、俺たちに感謝の言葉をかける。


「さすが、四聖殿です。自分より若いのにご立派です。私も負けてられませんな。部下とともに、鍛錬の時間を三倍ほど増やそうと思います」

「Sランク冒険者の方々にも深く感謝いたします。みなさんがいてくれたおかげで、大きな被害が出る前に奴隷商人を確保できました」

「ノエル様も相変わらず元気そうですね。剣の切り口から調子の良さが感じられました。また今度、手合わせをお願いいたします」


 騎士の面々を見送ると、奴隷として捕まっていた"星詠神殿"の修道士が俺たちの周りを囲んだ。

 みな、笑顔で礼を述べる。


「大げさじゃなく、あなた方は命の恩人です! 奴隷として捕まったときは人生のどん底にいました! 奈落の底から引き揚げてくださった気分です!」

「ありがとう……本当にありがとうございます。おかげで、娘と離れ離れにならなくてすみました。これからも家族と一緒に暮らすことができます」

「あなた方にも神のご加護がありますように。いくら感謝してもしきれません」


 感謝の言葉が飛び交う中、倉庫の入り口に人影が覗いているのが見えた。

 セドリックだ。

 解放された修道士たちを確認した瞬間、転がり込むような勢いで走ってきた。


「アスカ様、やったんですね! 皆様なら、仲間を救い出してくださると確信してました!」


 セドリックは修道士たちの輪に加わり、互いに再会を祝う。

 ナディア、ティルー、ノエルも笑顔で彼らを見守る。

 みんなと一緒に倉庫の外に出たら、爽やかな潮風が吹き込んだ。

 夜空には銀色の星々が輝き瞬く。

 倉庫街に来るときに感じた不穏な気配は少しもなく、むしろ幻想的で美しい。

 まるで、俺たちの勝利を祝しているような景色だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第3巻まで好評発売中! i000000 i000000 i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ