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【コミカライズ化】無能と追放された最弱魔法剣士、呪いが解けたので最強へ成り上がる  作者: 青空あかな
「第三章」

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第79話:庭園にて

 その後夕刻を迎え、俺たちは街外れの庭園に向かう。

 歩きながら、ナディアとティルーは先ほど食べたスイーツの感想を話す。


「あのフルーツパフェすごくおいしかったね。新鮮な果物がいっぱい入っていてビックリしちゃった。ティルーのシュークリームも最高だったけど」

「ええ、ふんわりした食感が幸せでついつい食べ過ぎてしまいましたよ。でも、たまにはいいですよね」


 ノエルも「私はチーズケーキが一番気に入った」と話に加わるが、その表情は雑談を楽しみつつもどこか険しい。

 やはり、俺と同じように警戒しているようだ。

 その様子を感じ取ったのか、ナディアが自分の剣を触りつつ話す。


「情報を教えてもらうだけなら、剣とか持ってこなくてもよかったんじゃないのかな」

「まあ、ちょっとな。念のためだ」

「……ああ、そうか。そういえば、オークションには良からぬ輩も多いって言われたもんね。警戒するに越したことはないかぁ」


 今夜止まる宿はすでに確保できていた。

 武器を置いてきてもよかったが、俺は全装備で向かうよう頼んだのだ。

 歩を進めるにつれ、少しずつ人の往来は減って寂しい雰囲気となる。

 俺はさりげなく周囲を注視するが、尾行の気配はない。

 考えすぎならいいが……。


 訪れた庭園は、街の中心部から十五分ほどの場所にあった。

 公園を思わせる様相を呈し、花は瑞々しく咲き誇り、葉は丁寧に刈り込まれる。

 道には落ち葉などもなく、定期的にきちんと清掃されていることが感じられる。

 一方、よく手入れされた美しい庭なのだが、時間帯と場所もあってか閑散とした静けさに包まれる。

 多種多様人と者が行き交う賑やかな交易都市が持つ、別の一面を見た気分だ。

 考えすぎだったかと疑念頭も隅に追いやり、庭園を歩く。


「なんだか私の実家を思い出す庭園だ。情報屋との待ち合わせ場所は奥にある広場だったな」

「せっかくだから、お花を見ながら歩こうよ。まだ来てないかもしれないし」

「いい香りですね~。初めて見るお花もたくさん咲いています。この地域特有の品種でしょうか」


 オークションハウスでノエルの活躍で俺が四聖だと判明すると、ジェロームは情報屋について詳細に話した。

 灰色のフードを被ったギドーという名前の若い男で、ここ最近はヴァルメルシュに根付いてビジネスをしているらしい。

 口は悪いが、情報収集の腕はたしかという話だ。

 庭園を抜けると大きな広場が現れた。

 整備された花壇が並び、広場の奥には噴水が設置される。

 他にも馬や鳥、ハートなどのトピアリーがいくつも並び、まるで宮殿のようだった。

 予想以上に広く美しい空間に、ナディア、ティルー、ノエルは歓声を上げる。

 

「うわぁ、綺麗! こんな場所があるんだね!」

「街外れにあるのはもったいないです! 中心部にあればもっと人が来るでしょうに!」

「これは見事だ。素人目にも計算して整備したことが伝わる」


 俺もまた彼女たちと同じ心境だったが、肝心の情報屋の姿は見えない。

 そう思ったとき、トピアリーの後ろから痩身の若い男が姿を現した。

 

「お前がギドーか? 俺はアスカ・サザーランドだ。ジェロームから聞いているだろうが、デュラハン卿の情報を教わりにきた」

「ああ、俺がギドーだよ。あんた新しい四聖だってな。んで、お仲間はみんなSランク冒険者らしいじゃねえか。ちゃんと証明するプレートやカードは持っているか? こちとら貴重な情報をそこら辺の雑魚に教えたくはないからよ。俺は自分の目で見たものしか信じないことにしてるんだ」

「わかった、提示しよう。好きなだけ確認してくれ」


 俺たちの魔導プレートとギルドカードを見せると、ギドーはずいぶんと注意深く眺めた。


「……ほぉ、たしかに本物のようだ。四聖の魔導プレートは初めて見たが、かなり上質な金属を使っているな。さすがに、国内最強を誇る四戦士の称号か」

「ねえ、確認が終わったらさっさと返してよ。大事な物なんだから」

「そうですよ、傷でもついたらどうするのです」

「悪い悪い、そう怒るなって。この仕事をしていると、いろんなことに注意深くなっちまうんだよ」


 プレートとカードを俺たちに返した後、ギドーはさて、と話を続ける。


「デュラハン卿は首のない鎧の形をした大型のモンスターだ。ヤツの持つ剣は自分自身の魔力を少しずつ凝縮させた一品で、そこら辺の名剣じゃ受け止めることもできない。敵の首を斬って仕留めることに執着しているようで、首のコレクションをしているらしい。その中に入らないよう、せいぜい頑張ることだな。……ほら、帰った帰った」

「えっ、終わり!? そんなの有名な話ばっかじゃん! どこにいるとか、最後に目撃された場所とかは!?」

「なに言ってんだ。情報はこれで終いさ。有益な情報だっただろ? 金貨20枚じゃ安いくらいだね」

「全然有益じゃありませんし、安くもありません!」


 ギドーの情報は情報ともいえない内容で、ナディアとティルーは怒りを滲ませる。

 デュラハン卿の所在地も何もなく、討伐には寄与しないと考えられた。

 俺とノエルは怒る二人の前に出た。


「俺たちは金貨20枚をジェロームに支払った。どれだけの大金かお前にはわかるはずだ。お前の情報は王立図書館の文献にも記されている話ばかりだ。もし隠している情報があるのなら、ふざけていないで教えてほしい。必ず、有効に活用させてもらう」

「私たちは王国の平和のために頑張っているんだ。巡り巡って、お前のためにもなると思うが?」


 ギドーは黙り込んだまま何も話さない。

 白を切って金だけ持ち去るつもりか?

 そう思った、ふと上空に気配を感じた。

 やけに高度が低い浮遊艇を確認した瞬間、俺は叫ぶ。


「みんな、気をつけろ! 敵襲だ!」


 直後、ギドーは手を上げ指を鳴らした。

 上空の浮遊艇から武装した男が何人も飛び出して、俺たちを取り囲むように降り立った。

 全員衝撃を緩和できる貴重な魔導靴を装備していることや武装の意匠の類似性――狼の横顔の紋章――から、何かしらの組織であることが推測される。

 総勢十五人。

 いずれも剣や斧など、そのままモンスター討伐に行けそうな武器を携える。

 敵襲を受け、俺たちも即座に体勢を整えた。


「こ、この人たちなに!? みんな、武器持っているよ!」

「いきなり空から来て、私たちに何をするつもりですか!」

「胡散臭い人間だと思っていたが、どうやら私の勘は当たったようだな」


 ナディアたちと背中合わせの状況となる。

 十五人の男はニヤニヤとした笑みを浮かべるだけで、攻撃の素振りは見せない。

 誰かの指示を待っているようだ。

 俺はあくまでも冷静にギドー――男たちの雇い主に尋ねた。


「ギドー、これはどういうことだ?」

「なぁに、世の中にはいろんな物好きがいるってことさ。冒険者になる気もないのに高ランクのギルドカードが欲しい金持ちのおっさんとか、剣も握ったことすらないのに四聖に憧れる世間知らずのお坊ちゃんとかな。ちょうど、オークションの参加者にうじゃうじゃいるぜ」

「目的は俺たちのプレートとカードだな。周りの男は傭兵団といったところか」

「だから、さっきあんなに確認したんだ! 私たちを騙したの!?」


 俺たちは厳しい視線を向けるが、ギドーはヘラヘラと軽薄に笑う。

 手慣れた雰囲気から、もう何度もこういった経験をしてきたのだと推察された。


「おいおい、騙すなんて人聞きの悪いことを言わないでくれや。情報はちゃんと教えたし、"襲わない"なんて言ってないだろ? プレートとカードを渡せば何もしねえよ。抵抗すれば何するかわからないがな。今、この街じゃ弱い方が悪いのさ」

「……なるほど、最初から情報提供などどうでもよかったわけか。一つ尋ねるが、この襲撃はジェロームの命令か? 俺たちのプレートとカードをオークションに出品したら一儲けできそうだしな」

「さぁ、どうかな。俺を締め上げればわかるかもしれないぜ? この数を相手に勝てたら、の話だけどよ。言っておくが、こいつらは“鋼牙団”というこの界隈じゃ有名な傭兵団だ。Aランクの冒険者パーティーにも匹敵する強さを持つ連中さ」


 ギドーとその仲間たちは、勝利を確信した表情を浮かべる。

 彼らの武装は決して劣悪ではなく、鍛えた身体からもそれなりの強さを持つことがわかった。

 人数としては、こちらのおよそ四倍の戦力。

 だが、戦いは数じゃないことを俺たちはよく知っている。


「一人、ノルマ四人だね。こっちの方が数が少ないから、むしろ動きやすいよ」

「これくらいの敵、倒せないとデュラハン卿の討伐なんて夢のまた夢です」

「同感だ。……アスカもそう思うだろ?」


 個人の質の高さと連携の密度。

 それが勝敗を分けるのだ。


「ああ、そうだな。これくらいの敵、無傷で倒せないとデュラハン卿なんて倒せやしない」


 俺は剣を構え、力強く駆け出す。

 ギドー一派の戦いが、今ここに始まった。

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