第73話(第二章最終話):新たな四聖と次なる冒険
「アスカ・サザーランドさん、そしてお仲間の皆さん。王都を救っていただき本当にありがとうございます。王国騎士修道会を代表して、心よりお礼を申し上げます」
「「うおおおお!」」
イセレの言葉に、騎士たちが歓声を上げる。
俺、ナディア、ティル、ノエルは、修道会本部のバルコニーにいた。
眼下にはたくさんの騎士と住民たち。
みな、俺たちの戦いを讃えてくれているのだ。
ゴヨークが失脚し、修道会はイセレが治めることに決まった。
まずは冒険者たちへの評価を改め、生じた軋轢を無くすそうだ。
彼女ならやり遂げてくれるだろう。
イセレは微笑みながら言葉を続ける。
「修道会で議論した結果、あなたたちをSランク冒険者に任命することが決定しました」
「エ、Sランク!? 本当か!?」
思ってもみない話だった。
俺が言うと、ナディアとティルーもおずおずと尋ね返す。
「あなたたちって……私も入っているってこと……?」
「私はウンディーネですが、Sランクになれるのですか……?」
「ええ、もちろんですよ」
二人の問いかけに、イセレは笑顔で答えてくれた。
広場にいる騎士たちから、ひと際大きな歓声が上がる。
ようやく……Sランクになれた。
感慨もひとしおで、俺はナディアたちと喜ぶ。
ノエルは冒険者ではないので残念だが、彼女も一緒になって喜んでくれた。
「そして、お伝えすることはもう一つあります。アスカさんを四聖に迎え入れたいのです」
「……俺を四聖に?」
「ええ、あなたの活躍は目を見張るものがあります。“魔族四皇”を単独で倒した人間など、修道会の歴史でも初めてです」
俺は仲間たちと顔を見合わせる。
イセレ曰く、ダグードは精神錯乱状態からの復活の見込みがないそうだ。
欠けてしまった穴を埋めるためにも、ぜひに、と頼まれた。
「すごいじゃん、アスカ! 四聖だって!」
「冒険者と騎士、両方の頂点ですよ!」
「誰でもなれる存在ではない。……どうした、アスカ。嬉しくないのか?」
「もちろん、嬉しいのだがな……」
実力が認められたのは素直に嬉しい。
だが、修道会の四聖になったら、身動きが取り辛くなるだろう。
俺の目標はあくまで“魔王”を討伐し、世の中に平和を取り戻すこと。
やはり、ここは断るべきか……。
そう思ったとき、広場の騎士たちから大きな声が湧いた。
バルコニーに誰かが現れる。
「俺からも推薦したい。お前は俺の命を救ってくれた」
ルトロイヤの一本槍、ググリヤ・ルノニンだ。
再会するのは“穢れ”を浄化したとき以来か。
握手を求められる。
その手は力強く、もう身体は完全に回復したようだ。
今は前線復帰に向けて、リハビリの毎日を送っていると聞いた。
ググリヤもまた、俺の四聖入りを期待している……。
しばし、考えたが結論が出た。
イセレたちには悪いが、四聖は断ろう。
「気持ちは嬉しいが、俺は“魔王”討伐という目標がある。ノエルは別としても、ずっと修道会にいるわけにはいかないんだ」
「ご心配はいりません。四聖といっても、修道会に束縛するつもりはありません。ノエルさんも、“魔王”討伐まではアスカさんと共に行動されて構いません。“魔王”討伐こそ、私たちの悲願なのですから。皆さんなら……絶対に討伐できるはずです」
イセレは力強く言う。
ナディアたちもまた、ワクワクとした表情だ。
どうやら、俺の思い過ごしだったらしいな。
「そうか、そういうことなら……謹んでお受けしよう」
「「新しい四聖の誕生だあああ!」」
眼下の騎士たちは盛大な拍手とともに、俺を称える。
これからは四聖の名に恥じぬよう、今まで以上に鍛錬を積まなければ。
心の内で強く決心する。
みなが盛り上がる中、イセレがそっと俺たちに話した。
「アスカさん、あなたの元パーティーメンバーの件ですが……」
「ああ……」
イセレからゴーマンたちの処遇を聞く。
まだモンスター化の後遺症が残っているようで、今は収容施設で治療の最中だそうだ。
彼らはすっかり意気消沈し、静かに過ごしているとも。
“魔族四皇”に手を貸したわけだから、お咎めなしというわけにはいかないだろう。
しばらくは修道会で監視下に置かれる。
それdめお、改心して再び世の中に出てくることを祈る。
「ゴーマンたちの処遇は私たちに任せてください」
「よろしく頼むよ」
「さて、アスカさん。今後はどうされるのですか?」
「そうだな、どうしたものか……」
“魔王”に近づくも、また離れる日々だ。
かと言って、探索をやめるわけにはいかない。
何かしらの手がかりが欲しいところだが……。
「これはまだ修道会でも極秘情報ですが、“魔王城”の痕跡が見つかりました」
「「“魔王城”の……!?」」
イセレの言葉に俺たちは驚く。
――“魔王城”……。
その名の通り、“魔王”が住むと言われる城だ。
場所は常に移動しており、見つけるだけでも一苦労とされている。
痕跡だけでも大いに手がかりになり得るはずだ。
ナディアたちを見ると、みな険しい顔でうなずいた。
「どこにあったのか教えてくれないか? さっそく向かおうと思う」
「カッシア山麓地帯か……」
レンブルク王国がある大陸の、東一帯を占める広大な森だ。
あまりにも深い森なので、人類未踏派の領域が多いと聞く。
モンスターの種類も多く、厄介な特殊能力を持つとも。
どちらにしろ、一度は王国を出ることになりそうだ。
「行こうよ、アスカ」
「今さら迷うこともあるまい」
「私たちの旅が終わるのは、“魔王”を討伐したときです」
逡巡していたら、周囲から仲間たちの声が聞こえた。
ナディア、ティルー、ノエル……。
俺にはもったいないくらいの最高の仲間たち。
彼女らがいれば、どんな困難も打ち砕ける。
そう強く思えた。
「ああ、行こう!」
俺たちは力強く手を合わせる。
次なる目的地は、カッシア山麓地帯だ。
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