第72話:末路(Side:ゴヨーク④)
「ゴヨーク・カヨブイク。顔をあげなさい」
「……うっ」
私は今、修道会本部前の広場に座らされている。
両手を縛られて。
今までの行いを糾弾されているのだ。
目の前にいるのはイセレ・グトートン。
あの生意気な聖女だ。
周囲には、騎士や貴族の住民どもが取り囲む。
みな、冷ややかな目で私を見る。
今まで支配していた者たちが私を見下ろす。
とうてい、許されることではなかった。
縄で縛られていなければ、私の高貴で素晴らしい魔法で八つ裂きにしてやれるのに……。
「あなたは修道会の騎士に命じ、遠征のたびに黄金を集めていましたね。修道会のためと嘘をついて。これは命を懸けて戦う騎士に対しての冒涜に等しい行いです」
「そ、それは……」
広場の一角には、私がせっせと集めた金が山積みになっていた。
リッチーロードが倒された後、秘密の地下室にも調査が入り、私の企みは白日の下に晒されてしまった。
大好きだった煌びやかな輝きも、今となっては私の欲望を証明する光だった。
恥ずかしさと気まずさから、今すぐ消え去りたい気持ちになるが、イセレは糾弾を続ける。
「教皇という修道会を導く立場でありながら、“魔族四皇”と手を組んでいた罪は重いです。アスカさんたちがいなければ、王都は今頃廃墟と化していたでしょう」
ま、まずい。
黄金の収集までならどうにか誤魔化せたが、リッチーロードとの繋がりはさすがにまずい。
どうやってこの場を切り抜ける。
賄賂を渡すか? 隙を見て逃げるか? 騎士の誰かを人質に取るか?
頭の中で必死に思考を巡らせる中、イセレは静かに息を吸い、淡々と私の処遇を告げた。
「あなたから教皇の身分を剥奪します。これは修道会全体の総意です」
「…………え?」
イセレの言葉は、信じられなかった。
思わず思考が止まる。
教皇の身分を剥奪……。
そんなの許されるはずがない……。
力の限り叫んだつもりだったが、私の声が喉から出ることはなかった。
「ゴヨークを連れて行きなさい」
「ま、待て! やめろ!」
数人の屈強な騎士が私を担ぎ上げる。
有無を言わさず、本部の地下にある監獄へ連行された。
ここは重罪人が収容される場所だ。
不気味なほど暗く、寒く、私の心を締め付ける。
騎士たちはぞんざいに私を牢の中へ放り込んだ。
「ま、待て! 私は教皇だぞ! ここから出せ!」
力の限り叫ぶが、騎士たちは誰一人として振り向くこともなく立ち去る。
地下牢を静寂が包むと、ようやくじわじわと実感が湧いた。
――もしかして、一生ここから出られないのか?
周囲にあるのは暗闇だけ。
ものすごい孤独感を覚える。
これも全て、自分の欲深さが招いた状況だ。
――どうして……どうして……私はこんなに欲が深いのだ。アスカ・サザーランドが街を訪れた時点で全てを話していれば、監獄行きとはならなかったかもしれないのに……。
つい、欲が出てしまった。
まだ大丈夫だろうと。
私は己の欲深さを、いつまでもいつまでも後悔し続けた。
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