第70話:vsリッチーロード
「降参しろ、リッチーロード。お前の仲間たちはもういない」
「そうだよ、降参して!」
「無駄な抵抗はやめろ」
「私たちはまだまだ戦えますよ!」
王都に出現したモンスターたちは全滅したし、ゴーマンたちは騎士に縄で縛られた。
リッチーロードは一人。
対してこちらは大勢の仲間たち。
まさしく、孤立無援の状況だ。
『フフフ、雑魚どもには用はなイ。用があるのはお前だケ。アスカ・サザーランドダ。《闇の引力》』
「なっ!」
リッチーロードが手をかざすと俺の身体が浮き上がり、勢いよく引き寄せられた。
ヤツの手には鋭い杖が握られている。
有無を言わせぬ強さに、“魔族四皇”の実力が見えるようだ。
だが、この程度は十分に防げる。
「《ウィップ・サモン》」
地面から何本もの木の鞭を召喚し、自分の身体を支える。
『一筋縄ではいかぬカ。まぁいい、《暗き隔離》』
リッチーロードがパチンと指を鳴らすと、ヤツを中心とした巨大なバリアが展開された。
瞬時に、遥か上空まで昇る。
仲間たちは隔離され、俺とリッチーロードだけがバリアの中に取り残された。
「「アスカ! ……くっ!」」
すかさず、ナディアたちがバリアを突き破ろうと攻撃を仕掛けるが、どんな攻撃も弾かれるだけだった。
遠目にバリアの表面が燃えているのが見える。
母から伝え聞き、文献で読んだ記憶が蘇った。
“魔族四皇”レベルでないと使えない、大変に高度な結界魔法だ。
「みんな、離れているんだ! このバリアはリッチーロードを倒さなければ解けない!」
『そこまで見抜くとは大したものダ。さすがはヴァンパイア伯爵を倒した男だナ』
吸い込みの力が消え、俺は地面に降り立つ。
魔族やモンスターの援軍がいるのかと警戒するが、リッチーロード以外の気配は感じない。
俺は今一度剣を構える。
「どうやら、最後に残ったのはお前だけのようだな。王都の平和、国の平和は誰にも壊させない」
『貴様さえ倒せれば、ワタシの目標はほぼ達成されたも同ジ。アスカ・サザーランドさえ倒せれば、他の者に殺されても別にいいのだよ』
「……なに?」
リッチーロードは不気味に笑いながら言う。
やたらと俺に執着するのは……なぜだ。
バリアの外にはナディアやティルーの他にもノエルや修道会の騎士たち、四皇までいるのにだ。
言葉の真意まではわからなかったが、まずはこいつを倒すことに集中しなければ。
リッチーロードは全身に魔力を貯めている。
『そろそろ始めようではないカ。互いの未来をかけた殺し合いヲ……《闇の包囲弾》』
俺の周囲に無数の黒い球が出現した。
間髪入れず襲い掛かる。
弾の配置やタイミング、襲い来る方向から、全てを躱し切るのは難しい。
「《光の鎧》!」
聖なる鎧を召喚して身を守る。
聖属性の魔力が結集した、あらゆる攻撃を防ぐ鎧。
魔力の消費量が多いが、黒い球の効力がわからない以上、防御には手を抜かない方がいい。
弾が当たると鎧にはヒビが入り、地面はグジュグジュと朽ち果てた。
やはり、特殊な攻撃だったか。
魔力を温存するため、一度鎧は解除して生身に戻る。
リッチーロードは怖じ気づくこともなく、次の攻撃を仕掛けてきた。
『永遠の闇に囚われるがいイ。《闇の棺》』
突如として、空中から黒い棺が現れ俺を閉じ込める。
目の前に広がるのは漆黒の闇。
剣を持つ指先の感覚が弱まり、少しずつ五感が奪われていくのを感じる。
封印魔法か。
このままでは完全に閉じ込められる。
意識を剣に集中させ、上方へ向けて魔法と剣術の融合技を放つ。
「《ブレイズ・インパクト》!」
剣から発生した衝撃波が天を貫く。
漆黒の闇は完全に切り裂かれ、王都の景色が見えた。
地面には黒い棺の破片が飛び散っている。
初めて、リッチーロードの顔に戸惑いの感情が見えた。
『……ほぉ、この封印魔法さえ破るとハ。そんな人間は初めてダ』
「お前の攻撃は俺には効かない」
『それなら、これはどうかナ? 《闇の流星群》』
バリアで囲まれた上空にいくつもの黒い岩が出現し、その全てが俺に向かって降り注ぐ。
たとえ躱したとしても、王都には甚大な被害が出るだろう。
となると、ただ避けるだけではダメだ。
「《次元一閃》!」
剣を振るい、次元を切り裂く。
時空の狭間が出現し、全ての岩を吸い込み消える。
リッチーロードはもはや同様を隠せていなかった。
泰然とした雰囲気は鳴りを潜め、その顔はうろたえる。
俺は地面を蹴り、一直線にリッチーロードへと向かう。
遠距離魔法で攻撃されるが、もう完全に動きは見切れた。
『お、お前は、本当に人間なのカ!? あり得ない……あり得なイ!』
「ああ、ただの冒険者だよ。“魔王”討伐を目指すだけのな」
リッチーロードの胴体を斜めに切り裂く。
魔法に長けた分、身体能力は低かったのだろう。
あっさりとした感触だった。
俺とリッチーロードを隔離していたバリアも消滅した。
ナディアたちが駆け寄り、俺と合流する。
「アスカ、やったね!」
「素晴らしい活躍ぶりだ。“魔族四皇”を2体も倒すなんて」
「まさしく敵なしですね!」
彼女たちの笑顔を見ると、ここが俺の居場所なのだと実感する。
『うっ……な、なぜ、お前はそれほどまでに強いのダ……』
ふと、地面からリッチーロードの声が聞こえた。
致命傷は負ったはずだが、まだかろうじて生きている。
「まだ生きていたか」
『ま、待てッ! 殺すのは待てッ!』
剣を構えたら、リッチーロードは命乞いをした。
俺たちを見下していた面影はすでにない。
『ワ、ワタシは……ま』
「ま……なんだ?」
リッチーロードは言いよどむ。
この期に応じて何を仕掛けてくるつもりだ。
自然と警戒心が湧き、
『ま…………“魔王”様の正体を掴んだのダ!』
心の底から叫ぶように言った言葉が、王都に響いた。
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