第67話:水vs炎(三人称視点)
ノエルがダンの初撃を《戦蛇連撃》で防いだちょうどその頃。
ティルーはフェニックスと化したバルバラと戦っていた。
「《フレイムゴスペル》!」
「《アクアピラー》!」
バルバラの口から蒼炎の波動が放たれる。
鉄をも容易に溶かすほどの超高温の火の波動。
ティルーは地面から水の柱をいくつも作り出し、かろうじて打ち消した。
だが、高熱の余波は完全に防ぎ切れず、ティルーの肌は焼かれる。
痛みに顔をしかめる彼女を見て、バルバラが勝ち誇ったように笑った。
「ほらほら、どうしたの!? ウンディーネは水魔法が得意なんじゃないのかしら!? アハハハッ!」
「……くっ!」
バルバラの火魔法は大幅に強化されており、その火力はウンディーネのティルーをもってしても対応に苦慮していた。
「諦めて降参しなさいな。今ならリッチーロードに口利きしてやるけど?」
「降参なんて……するものですか。アスカさんの敵は私たちの敵です」
「あら、まだ戦う気力があったのね。褒めてあげる」
ティルーは全身に力を込める。
彼女の目には、絶対にバルバラを倒すという強い意思がこもっていた。
ティルーが両手を上げると、上空に水分が集まる。
「《サーペント・レイン》!」
無数の水竜がバルバラ目掛けて飛び込んだ。
バルバラは逃げることなく、全身に魔力を貯める。
赤い光が腹から喉へせり上がったと同時に、バルバラは空を向いた。
水竜の群れに向けて巨大な火球が放たれる。
「《ブレイズボム》!」
火球は水竜たちの中心に到達すると、大きく爆発した。
水竜は熱波とともに消える。
すかさず、ティルーは連続攻撃を仕掛けた。
「これで終わりでありません! 《アクア・ランスショット》!」
「だから、無駄だって言ってんじゃん! 《フレア・フェザー》!」
水と火の応酬。
攻撃がぶつかるたび、水は蒸発して火は消える。
拮抗したように見える二人の激突は、わずかにバルバラの方が勝っていた。
その事実は、少しずつ、しかし着実にティルーを追い詰める。
水が蒸発するにつれ、ティルーの身体は火傷が徐々に増えていった。
五回にもわたる攻防の末、両者には明確な違いが現れる。
バルバラは無傷、対してティルーは満身創痍だった。
「もういい加減に諦めなさいって。あんたの水魔法じゃアタシの火は消せないのだから」
「絶対に……諦めません……」
「往生際の悪いヤツ。……ねえ、ウンディーネは温めると蒸発しちゃうのぉ? うふっ、楽しそうな光景」
バルバラはニヤニヤと笑う。
「近くに川や湖でもあれば違ったよかったのにねぇ。地の利を得られれば、あんたも負けることはなかったでしょうに」
「地の利……ですか」
傷む足に手をつき、ティルーはぐぐ……と体を起こす。
バルバラが水魔法を打ち消すたび、周囲には大量の水蒸気が発生した。
一時的にではあるが、それこそ川や湖の中にいるに等しい環境が生まれる。
ティルーは大気中の水分に敏感だが、常に身体が燃えているバルバラは大気の変化に気づけない。
今までの攻撃は次の大技の伏線。
全身の魔力を使い切るつもりで、最後の水魔法を発動した。
「これであなたを倒します! 《雫》!!」
「なにっ!?」
巨大な水滴がバルバラを閉じ込める。
周囲に大量の水がなければ使えない、正真正銘の大技。
バルバラは予期せぬ攻撃に面食らうも、すぐに体勢を直した。
「ふんっ、これくらい簡単に蒸発してやるわ……《フレイムボルテックス》!」
バルバラの全身から業火が迸る。
だが、水中で火を燃やしても消える道理と同じで、巨大な雫が蒸発することはなかった。
さらに、水にはティルーの魔力が念入りに込められている。
呼吸が断たれたバルバラは徐々に目の前が暗くなった。
「ア、アタシが……こんなヤツに負け、る……なん、て……ごぼっ……」
バルバラの意識が消え、動きが完全に止まる。
力と力のぶつかり合いは、ティルーが制した。
《ドロップ》が解除されると、バルバラは地面に落ちる。
彼女はすでに人間の姿だった。
ティルーもまた、魔力を使い果たしてがっくりと膝をつく。
「勝った……勝ちましたよ……アスカさん」
彼女は呟くように言う。
難敵ではあったが、辛勝を納めることができた。
お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます
【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】
少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!
評価は下にある【☆☆☆☆☆】をタップorクリックするだけでできます。
★は最大で5つまで、10ポイントまで応援いただけます!
ブックマークもポチッと押せば超簡単にできます。
どうぞ応援よろしくお願いします!




