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【コミカライズ化】無能と追放された最弱魔法剣士、呪いが解けたので最強へ成り上がる  作者: 青空あかな
「第一章:別れと出会い編」

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第14話:勝利の宴

「このカウパリーネンを救ってくださった、アスカ・サザーランド様に心からの感謝を! 乾杯!」


「「「かんぱーーーーーーーーーーーーーーーい!」」」


カチーーーーーーーーーーーン!!


俺たちは今、街で一番大きな酒場にいた。メデューサを討伐し冒険者たちの石化を解いた俺は、神が遣わした救世主ということらしい。街全体で俺を称える宴が開かれている。


「あの時は大変失礼いたしました。あなた様のような素晴らしい冒険者が一目でわからないとは、あの時の自分をぶん殴ってやりたいです。なんとお礼を申し上げたら良いことか。アスカ様はこの街の英雄でございます」


ドリンカーがしきりに酒をすすめてきた。息が酒臭い。どうやら、宴が始まる前から一杯ひっかけていたらしい。


「あのにっくきメデューサがいなくなりましたから、カウパリーネンも以前のような活気あふれる街に戻っていくはずです。どれもこれも、アスカ様のおかげでございます。聞いた話だと、時間すら止めてしまったとか。いやはや、誠に恐れ入りました」


俺たちの周りに、住民や冒険者たちが集まってきた。


「せっかくこの街に来てくださったのに、怒ったりなんかして本当に申し訳ありませんでした!」


「あのまま石にされていたら、って思うとぞっとします! アスカ様は一生の恩人です!」


「感謝してもしきれません! あなた様に出会えたことを、私たちはずっとずっと忘れません!」


皆、涙を流しながら感謝の言葉を口にしている。中には、泣きすぎて床に崩れ落ちる者までいた。


「俺としては、そんなたいしたことはしていないがなぁ」


「アスカはすごすぎるんだよ」


とそこで、向こうからカミラが赤ん坊を抱えてやってきた。横には彼女の夫もいる。


「アスカ様。私はカミラの夫のレジナルドと申します。この度は私どもを助けてくださり、本当にありがとうございました。あなた様のおかげで、この子の命が救われました。いくらお礼を申し上げても足りません」


「失礼とは存じますが、私どもからアスカ様にお願いがございます。どうか、この子の名前を決めて頂けませんか?」


カミラはあの赤ん坊を差し出してきた。赤ん坊は、すやすやと寝ている。無論、俺は名づけ親なんてやったことがない。


「いや、しかし、名づけ親なんてなぁ」


「ぜひともお願いいたします。この子にもアスカ様のように強くて優しい人間になってほしいのです」


「アスカならきっと良い名前をつけてくれるよ」


まったく簡単に言ってくれる。俺は目をつぶり、しばし考える。突然、頭の中にある名前が浮かんできた。


「それなら、ロミリーという名前はどうだ?」


「ロミリー……素晴らしいお名前でございます」


「ありがとうございます。この子が大きくなったら、アスカ様のことを毎日聞かせて育てます」


カミラたちは目を輝かせて喜んでいる。


「別にそんなことはしてくれなくてもいいのだが」


カミラと話していると、ドリンカーが大量の酒を抱えてきた。


「この度のアスカ様の活躍は、目を見張るものでございます。私も長いこと支配人をやっておりますが、こんなにすごい冒険者は初めてです。アスカ様がDランクなんて、私にはとても信じられません。修道会にSランクの申請を出しておきますよ」


「それは助かるな。よろしく頼む。でも、修道会のことだ。Dランク冒険者がいくら言ったところで、昇格は難しいだろうが」


冒険者ランクの昇格は、基本的にギルドの支配人に一任されている。ただし、Sランクだけ別枠だ。国としても貴重な戦力であるSランクへの昇格は、修道会に申請する必要がある。


「ご安心ください。私が全力で説明しますから。それでもアスカ様の実力がわからないなんて、修道会は見る目がないってことです。メデューサの件だって、全然助けに来てくれなかったんですから」


たしか、ゴーマンもSランクだったな。どうしてあいつはSランクになれたんだ? まぁ、どうせ賄賂でも送ったんだろう。


「そういえば、アスカ様たちはどうしてカウパリーネンにいらしたのですか?」


「俺たちは“魔王”討伐を目指して旅をしているんだ。ここは人の往来が多いと聞いていたから、何か情報はないかと思ってな。訪ねてみたというわけだ。ドリンカー、“魔王”についての情報はないか?」


「“魔王”……でございますか。さすが、アスカ様は他の冒険者とは違いますな」


「なかなか足取りがつかめなくてな。探すのに苦労しているところだ」


ドリンカーは、顎に手をやりながら考えている。


「そうですねえ…………“魔王”に関係あるかはわかりませんが、最近ラチッタの街がきな臭いみたいです」


ラチッタの街は、別名“水の都”と呼ばれている。カウパリーネンに引けを取らない、大きな街だ。


「ここと同じく、何かのモンスターに脅されているのか?」


「脅されているのかはわかりませんが、ラチッタのギルドは大掛かりな戦闘の準備をしているという噂があります。私も詳しいことは知りませんがね」


「なるほど、それは行ってみる価値がありそうだな」


「アスカといると、色んなところに行けて楽しいなぁ」


俺とナディアが話していると、ドリンカーが慌てたように言ってきた。


「アスカ様、ラチッタなんか行かないで、ずっとこの街にいてくださいよ! お願いですから!」


ドリンカーの声を聞いて、酒場にいる人たちがすごい勢いで集まってくる。


「違う街に行っちゃうなんてほんとですか!?」


「アスカ様がいなくなったらどうすればいいんですか!?」


「俺の武器にも名前をつけてくれ!」


必死になって俺を引き止めようとしていた。


「そう言ってくれるのはありがたいんだが……。“魔王”を討伐しないと、いつまでも人々はモンスターの脅威にさらされることになるからな」


俺が言うと、途端に酒場が静かになる。


「アスカ様は大変高尚なお方なんですね!」


「そうだよな、他の街でも助けを求めている人がいるかもしれないしな!」


「むしろ、私たちが強くならないといけませんわね!」


「さすがはアスカ様だ! 俺たちの今後のことまでしっかり考えてくださっている!」


しかしまた一気に盛り上がり、夜が明けてもおさまるところを知らなかった。





数日後、俺たちは街の人たちに見送られて、カウパリーネンの外まで来た。皆、名残惜しそうにしている。


「もし“魔王”に関係ありそうな情報が入ったら、アスカ様に最優先でお教えしますよ」


「ありがとう」


「じゃーねー」


「「「アスカ様ーお元気でー! 本当にありがとうございましたー!」」」


そして俺たちは、どうもきな臭いというラチッタの街へ向けて歩き出した。

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