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【コミカライズ化】無能と追放された最弱魔法剣士、呪いが解けたので最強へ成り上がる  作者: 青空あかな
第四章

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第106話:海の戦いと荷の中身

 警鐘が鳴り響くと、たちまち甲板はパニックに陥った。

 乗客は狼狽しながら荷にしがみつき、乗員は忙しなく走り回る。

 俺たちはすぐ左舷のへりに行き、海を見下ろす。

 青い水面に異様な黒い影が見える。

 二本ほど濃い紫色の触手が顔を出しており、それだけでも全体の大きさはかなりのものだと推測された。

 四十代ほどの船長が、船全体に大声で呼びかける。


「お前ら、戦闘準備だ! 迎撃態勢を整えろ! 乗客はそこを動くな、俺たちが倒す! ……クソッ、モンスターの出現報告がない航路を選んだってのに! よりによってSランクかよ!」


 魔喰クラーケンは魔力が好物で、より上質で強い魔力を求めて世界中の海を旅する。

 言わずもがな、海に棲息するモンスターの中でもかなり上位の強さだ。

 リリンドラの受付から、乗員はみな冒険者でもあると聞いた。

 海の上という立地もあり、連携を取った方がより安全かもしれない。


「船長、討伐を手伝う! 俺は四せ……」

「手伝うだぁ!? ええい、素人は引っ込んでろ! お前みたいな素人に剣を振り回されたら、こっちが怪我するわ!」


 討伐を申し出るがすぐに断られてしまい、船長は乗員に指示を出す。


「お前ら、準備できたな! 俺の合図で一斉に攻撃するんだぞ! ……攻撃しろ!」


 船長の号令とともに乗員は弓や魔法攻撃を撃ち、船からは大砲が放たれる。

 全弾、触手と水中の黒い影に命中した。

 激しい爆発音とともに巨大な水柱が出現する。

 一転して、甲板には歓声が沸いた。


「やった、全部命中したぞ! モンスターを……Sランクモンスターを倒したんだ!」

「すごい威力だったな! さすがの攻撃だ! やっぱり、リリンドラの船は設備が整っている!」

「これで安心して島に行けるわ! ああ、よかったわね! 島に行けなくなったらどうしようかと思った!」


 乗員も乗客も大変に喜び、船長は満足げに俺の肩を叩く。


「まぁ、というわけだ。申し訳ないな、少年。お前にまだモンスター討伐は早いと思うぞ。見たところ、剣を握って数日だろう。まずは剣に精通した良い師匠を探したまえよ」

「「ちょっと待て、あれを見ろ!」」


 そこまで船長が話したところで、何人もの乗客と乗員が海を指す。

 水柱が消えると、無傷の魔喰クラーケンが姿を現した。


「なんで生きているんだ!」


 船長は叫ぶ。

 単純にそれぞれの威力が足りなかったのと、水中にいる状態で攻撃してしまったのでダメージが弱かったのだ。

 さらに、魔喰クラーケンの身体には薄っすらと淡いオーラが見えた。

 今まで喰らった魔力を集め、バリアを張っている。

 薄いものの相当な高密度であるため、突破するには相応の威力が必要だ。

 甲板は再度パニックに包まれ、乗員も乗客も慌てふためく。

 魔喰クラーケンは五本の触手を大きく伸ばし、凄まじい勢いで船を攻撃した。


「うわあああ、やめてくれー! まだローンが残ってるのにいいい!」

「《ドーム・バリア》」


 船全体を巨大なバリアで覆い、触手を弾く。

 魔喰クラーケンは激しくバリアを叩くが、まるでビクともしなかった。

 乗員も乗客も呆然とした様子で眺め、特に船長は目の前の光景が信じられないようだった。

「お、お前は何者だ……。なんでこんな桁外れの魔法が使える……。え、Sランクの冒険者に匹敵する魔法だぞ」

「まぁ、俺は四聖だからな」

「四……聖……?」


 なおも呆然と呟く船長を置いて、俺は船のへりに近づく。

 魔力を練る中、ナディアたちの言葉が聞こえた。


「あんなモンスター、アスカに任せとけばいいんだよ」 

「皆さんは眺めているだけでいいんです」

「あいつが全部倒してくれる。四聖で、Sランク冒険者のアスカ・サザーランドがな」


 攻撃を続ける魔喰クラーケンに対し、俺は練った魔力を一気に放出した。


「《エクス・クリーヴ》!」

『ギャアアアアアッ!』


 巨大な魔力の斬撃を放ち、魔喰クラーケンを真っ二つに切る。

 触手からは力が抜け、死骸は海の底に沈んでいく。

 戦闘は終息し、少しずつ海上には静けさが戻る。

《ドーム・バリア》を解除すると波の動きも戻り、船はゆっくりと進行を再開した。

 遠目にはエリュシオン島の姿が見え始めたので、すでにだいぶ近づいていたらしい。

 船が動き出すと、ナディアたちが労ってくれた。


「お疲れ様、アスカ。すごい威力の魔法だったね。海が割れるかと思ったよ」

「張ったバリアの内側から攻撃できるなんて、敵からしたら信じたくもない魔法ですね」

「実際は、相当に緻密な魔力コントロールの訓練が必要だ。念のため言っておくが、アスカだから簡単そうにできるのだ」


 四人で勝利の余韻を話していると、多数の乗員に囲まれた。

 みな、輝く瞳で俺の戦闘を讃える。


「さっきの魔法はどうやったんだ!? コツとか指導してくれ!」

「Sランクモンスターも一撃で倒すなんて、四聖の力を見た気分だ!」

「魔力を練るとき、意識していることがあったらぜひ教えてほしい! 俺はずっと苦手にしているんだ!」


 乗員は冒険者でもあるからか、魔法や戦闘に強い興味があるらしかった。

 先ほどの魔法や日頃の訓練の方法などをあれこれと聞かれる。

 説明してはひとしきり感激された後、船長が乗員の間から現れた。

 しばし黙ったかと思うと、心底悲痛な表情で俺に頭を下げる。


「見くびって本当に申し訳なかった。あんたは四聖だったんだな。あんたがいなかったら、今頃俺は魔喰クラーケンの腹の中だ。素人は俺だよ」

「いや、別に気にする必要はない。俺もいきなり申し出て悪かったな。船長の指示は、むしろ乗客に対する責任を感じたよ」

「俺より大人だ……これが四聖……」


 話を聞くと、俺たちの受付をした女性が船長の妻らしく、船が壊されたら自分も壊されていたと深く感謝された。

 船長や乗員は礼を言いながら持ち場に戻り、船の作業を再開する。

 入れ替わるようにして今度は乗客が集まり、同じように感謝の言葉を述べた。


「助けていただいてありがとうございました。せっかくここまで運んできたのに、自分が死んでは意味がありませんからね」

「私たちは何があっても、絶対にエリュシオン島に行かなければいけないのです」

「まさか四聖様だとは思いませんでした。本当に素晴らしい魔法でした。グランド辺境伯閣下はあなたに会っていれば、もっと早く成果が出たかもしれませんね」


 甲板はパニックになったが、怪我人が出なくてよかった。

 話を聞いて、やはり長方形の荷は乗客が運んできたのだとわかった。

 大切な物が入っているのだなと思った直後。

 乗客の一人が言った言葉に、俺とナディアたちは強い衝撃を受けた。


「四聖様たちも、大切な人を生き返らせてもらいに来たんですよね? エリュシオン島のグランド辺境伯閣下に」

「……なに?」


 あまりにも予想外の言葉だったので、聞き間違いかと思ったが違ったようだ。

 乗客たちは不思議そうな表情で話を続ける。


「えっ、ご存じないのですか? 四日後、エリュシオン島では"死者蘇生の儀"が開かれるじゃありませんか。てっきり、それに参加されるのかと思っていましたよ」

「そういえば、皆さまの棺桶が見当たりませんね。もしかして、船の倉庫に預けてしまったので? それはさすがにちょっと可哀想だと思いますが」

「できる限り近くにいてあげてください。きっと、死者は生き返るまでは心細いです。思い出の話でもして、魂を呼んであげた方が成功確率は上がるはずです」


 俺の隣では、ナディアたちが顔を見合わせる様子や心の機敏が手に取るようにわかる。

 乗客の話を聞いて、俺は全てを理解した。

 彼らが持つ荷の中身。

 それは……死者の納まる棺桶だ。

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