屋上編 転がり
投稿遅れました、すみません!
高橋紅蓮は舌打ちを鳴らした。それは、山吹に向けたものなのか、己に向けたものなのかは、誰にも分からない。
山吹は拳を握る。
それはまるで、相棒と共に過ごした証明を武器として振り回す、紅蓮のように。
山吹は紅蓮にもう一度問いかける。
「紅蓮、教えてくれよ!」
山吹は心の底からそう願う。だがそれは、叶わなかった。
山吹は認識を怠っていた。気づかなかったのだ。横からくる女に。
「……!」
山吹はラリアットをくらい、階段地に背中を当てた。
「……っ!」
気づかなかった!! オレはなんで、紅蓮一人だけだと思い込んでたんだよ!
オレは秦野義和を一瞥した。義和は紅蓮に首を掴まれていた。
「義和!!」
オレは立ち上がり、義和に向けて手を出した。だが、女がそれを許してくれない。
オレは筋力で女に負けた。山吹は女に担がれて階段から落とされた。
「っ!」
オレは女を睨み、思う。
明らかな分離。紅蓮は、オレのことを警戒しているのか……?
ニヤリと、山吹は笑う。
違うな、紅蓮ならオレを警戒してたら自分で潰すはずだ。なら?
つい、呟いていた。
「なら、お前がオレを倒すための——アイツなりの落とし前ってやつか」
こんな事、前にもあったな。紅蓮と仲が良くなかったころ、紅蓮はよくボコしたやつをオレに差し向けてきた。
……久しいな。
オレは自分でも気づかないうちに微笑していた。
「はは、怖いな」
オレは女を見つめる。女は一言。
「私は今から喧嘩する。あなたを殴る。いいですか?」
「ああ」
「ありがとうございます。それと、私の名前は姫梨花文猫、帰ったら学校中に流しといてくだい」
「……善処はする」
気を抜くとすぐに乾いた笑いが出そうだ。と、オレは心の底から思った。
そんな中で、オレは一言呟いた。
「あやね……か。気持ちの悪い偶然だな」
□◼︎□◼︎□
秦野義和は息を呑んだ。いや、そんな暇もなかった。
「っ!」
紅蓮は恐るべきスピードで義和の首を掴む。
紅蓮は一言、こう言った。
「一つ聞きたいんだが、お前、なんでオレの女を取った? 返答次第じゃあ、オレはお前を許す」
「……え!?」
義和は目を丸くした。もしかしたら、和解できるかもしれない。そんな考えが頭をよぎった。だからこそ、義和には予想もできなかっただろう。
紅蓮は言った。
「だがな、もしオレを怒らしたら、今度こそ」
紅蓮は力を強める。
「分かってるよな」
義和は小さい声で言った。
「……うん」
紅蓮と義和。二人の戦いは、この一言から始まる。
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