中学生編
オレたちは、下駄箱に入った。そこには、誰もいなかった。
下駄箱といえば、オレは中学生の頃、下駄箱で決闘したことがあったな。
二年前。中学時代。
「おい、山吹!! 逃げずによく来たな」
「……あ、ああ! 来てやったぜ」
オレはニヤリと笑う。
「ただし、一人じゃねえがな!!」
オレの叫びに呼応し、一人の男が現れた。
「行け! オレの最強助っ人! 高橋紅蓮くんよ!!」
「ちっ。呼び捨てにすんなよ、相棒」
先輩達は、突然現れた紅蓮に混乱する。その隙をついて、オレはボディブローを二、三人にくらわす。
紅蓮はというと、取っ組み合いをしていた。
その末に、オレたちは先輩の上に立った。
何故、こんなことを思い出すのだろうか。この記憶は忌まわしき記憶。これが公になり、オレたちの進学が絶望的になったのは、今でも覚えている。
オレは義和を見る。
(コイツも、そんな記憶があるのだろうか)
そもそも、コイツは何故、ヤンキーに喧嘩を売りに行くのか。疑問だ。
そんなことを考えて、一言も喋らないまま歩いていると、三階まで来た。不思議と、誰とも会っていない。
義和は言う。
「僕が呼び出されたのは、屋上だ」
オレは相槌を打つ。返事の暇など無かったのだ。
オレはひどい胸騒ぎに襲われた。
オレは思う。
(何故ここに、アイツが持っていたキーホルダーが……)
このキーホルダーは、紅蓮が大切にしていたキーホルダーだった。
あれは、紅蓮と会ったばかりの頃。
中学入学したての時、オレは紅蓮に会った。
「よろしく」
オレは隣の席の奴に話しかけた。中学が始まったんだ。新しい友達が欲しい。そう思った。
だが、オレの思惑を外し、隣の奴は言った。
「黙れ、雑魚が」
三ヶ月ほど前まで、小学生だったオレは当然我慢できず。
「っ! なんだと。今なんて言った!!」
取っ組み合いを始めてしまった。
最悪の出会いだった。
それから何ヶ月か経った頃。オレは紅蓮に呼び出された。
「なんだよ」
とオレは言う。
「うるせえよ。とりあえず聞け」
紅蓮は、オレに「助けてくれ」と言った。理由を聞くと、先輩に喧嘩を売ってしまったらしい。一人では勝てないと悟ったのか、オレに懇願しに来たというわけだ。紅蓮は入学当初から、嫌われていた。理由は単純。口が悪いのだ。おまけに、誘いも全て、けんもほろろに断っていた。
おそらく、声をかける奴がいないのだろう。オレはなんだか気分がよくなり、それを快諾した。
そして、喧嘩をし、その後も先輩に喧嘩を売られ続けたというわけだ。
ちなみに、オレはその喧嘩をきっかけに、紅蓮と仲良くなった。
そんな紅蓮が大切にしていたキーホルダーが落ちていたのだ。
オレは思う。
(あいつ、元気にしてるかなー?)
オレがそんなことを考えていると、義和はオレの意識を呼び戻すかのように、言った。
「早く行こう」
「ああ」
オレはキーホルダーをポケットに忍ばせ、義和の後をついて行った。