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その7

 薔薇に囲まれた東屋に、紅茶とバターたっぷりのマドレーヌ、フィナンシェなどの焼き菓子が用意された。

 暖かい紅茶の香りと甘いお菓子の匂いが、心を穏やかにしてくれる。


 紅茶を何口か飲んだ後に意を決してエフラムは口を開いた。


 

「ところでさっきの、求婚の件なんだけ……」

「お断りします、エフラム殿下」


 改めて面と向かっての求婚をしようとし掛けたものの、直球にフラれてしまった。王宮での婚約破棄事件の時もフラれてしまっていたが、あの時とは心の痛みが雲泥の差だった。

 一瞬にして深手を負ったものの、ここまで来たからには、あっさりと引き退る訳にはいかない。


 そんな王子を見て、ローズは視界に入らない角度でニヤついていた。


「……オリヴィア、敬称は止めて気軽に……名前で呼んでほしい。ローズもこの湖の屋敷にいる間は、僕に対して特に遠慮はいらない。むしろ不満は全て言ってもらえると助かる」


 マイペースにお菓子を摘んでいたオリヴィアは、マドレーヌを一つ食べ終えると、改めて口を開いた。


「では、エフラム様。今後第一王子派と第二王子派の均衡が一気に崩れ、国は混乱してしまう恐れがありますよね。もう既にそうなっているかもしれませんが」


 第二王子であるエフラムは正妃の子であり、第一王子は側妃が産んだ王子。そして少し前まで第一王子ヨシュアは聖女との婚約を結んでいた。


 後継はどちらか未だ決まっておらず、ヨシュアが聖女と婚約する事によりバランスを保っていたのだが、今回の事でヨシュアには何らかの処罪が言い渡される。側妃の生家は損害を受ける事が避けられない。第二王子を支持していた貴族達にも、不利益が招じる可能性がある。


「確かに、第二王子である僕は正妃の子であり、オリヴィアは真なる聖女。

 兄上が継承権を取り上げられる可能性が高い今、国の内部は混乱するかもしれない。

 だから婚約の件は国が落ち着いてからで大丈夫だし、何よりオリヴィアの気持ちを優先しようと思っているよ。

 オリヴィアは更なる混乱を招きたくないから、今は婚約を受けないという事かな?」

「いいえ」


 オリヴィアは静かに首を振る。


「婚約の件は頃合いを見て、とのお考えとの事で安心致しました。先程の発言は、確認させて頂きたかっただけですわ。

 それとは別に、わたしは婚約や結婚、王子妃という柵から解放されたのですもの。今は自ら再び檻に入ろうという気には、なれないだけですわ。

 それに、この国や民は生涯を掛けて守りたいと思っておりますが、わたしが王妃にならなければいけない訳ではございません。

 わたしは聖女としてこのユヴェールのために、自分が出来る事をここで考えていきたいと思っております」


 王位継承はきっとエフラムに行くだろう。

 そうなるとエフラムと婚約すれば王子妃になり、果ては王妃という大役が待っている。


「……それでも僕も諦めたくない。オリヴィアが聖女でも聖女じゃなくても、僕はオリヴィアがいいんだ」

「時期がくれば、国のため国民のために、国母として相応しい方をお選びください」


 二人のやり取りに見兼ねたローズはついうっかり、と見せかけてわざと口を滑らせる。


「しつこいと女性に嫌われ……何でもございません、失礼致しました」


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