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その40 夜会

 王宮で夜会が開かれる前日から、オリヴィアは実家であるフローゼス家へ一時的に戻る事となった。

 帰宅の際にはお手製の焼き菓子をお土産として沢山持ち帰り、侯爵家の使用人達や、自身の父フローゼス侯爵に振舞った。


 サロンでは久々に親子水入らずでお茶を飲み、フローゼス侯爵は涙を滲ませながら、愛娘手製のお菓子を味わったという。


 カルロス監修というその焼き菓子は、とても美味しいと皆から好評で、オリヴィアは幸せいっぱいの気持ちになった。



 そして夜会当日。オリヴィアが纏うオフショルダーのドレスはダスティピンク色。両肩は露出されているが、肩から少し落ちたレースの袖が上品な印象を持たせていた。

 スカート部分はシンメトリーで遊び心を出しつつ、髪には薄水や薄紫、薄ピンクといったパステル調の花飾りで可憐に彩られている。


 侯爵邸までオリヴィアを迎えに来たエフラムが、その姿を瞳に写した途端小刻みに震えだした程、歓喜していた。


 馬車に乗って久々に訪れた王宮の会場は、煌めく水晶のシャンデリアと、ふんだんに使われた燭台で、昼間のような明るさが作り出されていた。


 しばらく公の場で姿を現さなかったオリヴィアが、婚約者であったはずの第一王子ではなく、第二王子にエスコートされて入場した途端、場内は騒つく者や言葉を失う者など。一同は実に様々な反応を見せる。

 奇異な目で見られるのではないかとオリヴィアは内心、心配もしていたが、驚きはしたものの皆はすぐに、暖かな眼差しで迎えてくれた。



 会場内の奥に進んでいくと、一際華やかな令嬢達が目に付いた。オリヴィアがエフラムと一緒である事もあり、気軽に声を掛ける訳にはいかないと、遠巻きでこちらの様子を伺っているようだった。


 彼女達は湖の館に移り住むまで、オリヴィアと定期的にお茶会を開催していたメンバーである。家柄も人柄も申し分のない、国から選ばれた令嬢達だ。

 会場内でも特に華やかで可憐な彼女達だが、着飾った装いの中にも、品の良さが全身から出ているのは流石だった。


 彼女達がオリヴィアと話せるようにと、エフラムの方から歩み寄って挨拶をすると、令嬢達は美しいカーテシーを披露する。


 それぞれの挨拶を終えると、エフラムは一歩下がって、令嬢達と話すオリヴィアを見守った。


「オリヴィア様、お久しゅうございます。お元気そうで何よりですわ」

「お久しぶりです、中々お茶会に参加出来なくて申し訳なく思っておりましたわ」

「本日お会い出来る事と明日のお茶会、とても楽しみにしておりました」


 一時的に実家へ帰省した事もあり、次の日は久々に王宮にてお茶会の予定が組まれている。この数日の帰省が終われば、再び湖の館へとオリヴィアは戻る。


 和やかな挨拶の後、一人の令嬢が仲間内にしか聞こえないような声量で、オリヴィアに囁いた。


「やはりオリヴィア様とエフラム様はとてもお似合いですわ」

「そんな、エフラム様は……」


 慌てて説明しようにも、上手く言葉が浮かばない。


「皆もそう思っております」


 別の令嬢が言うと、続いて周りもにこやかに頷く。


(そうだったの……?)


「このままエフラム様が立太子なさって、聖女であるオリヴィア様が王妃に収まれば、この国も安泰ですわ」


 彼女らの表情からは、お世辞だったり、他意や悪意があるようには見受けられない。

 初めて聞かされる本音に、オリヴィアは内心、微かに戸惑っていた。

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