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31/60

その31

それは、エフラムと王都の中心街にあるカフェに行く約束の前日だった。

この日の夜オリヴィアはまた羽を背中に生やしていた。無論、ワザとではない。

いつもの如く膝を抱えて寝台の上にいるオリヴィアの事を、心配そうにローズは見つめている。


一人きりではないのは、いつでも羽を消せるようにといった練習を兼ねているからだ。町中でいきなり羽が出現してしまったりして迷惑を掛けるかもしれないと、今後の事も考えてやはり羽は自在に操れた方がいい。それに少しずつではあるが、確実に羽を消したり出現させたりのコントロールが、前より短縮してきてはいる。



静寂が部屋を支配する中、コンコンと窓からガラスを叩く音が響き渡った。

ローズが目線を送ると、オリヴィアはコクリと頷き、それを了承と受け取ってローズは窓の方へ歩いて行った。


カーテンを開けると、部屋とバルコニーを挟むガラス戸の向こうには、月を背景にして佇む小柄な少女。侍女のミオが立っていた。


「ミオ、どうしたの?」


ミオの姿を確認すると、オリヴィアも歩み寄って来たので、ローズはミオが部屋の中に入れるようにガラス戸を開けてやった。



「頑張るお嬢様にお夜食お持ちしました~」


そう言うミオの腕を見るとバスケットを携えており、中に食べ物などが入っている事が伺えた。


「本当!?う、嬉しいっ」


ワクワクしながらオリヴィアはミオからバスケットを受け取ると…。


「………」



中に入っているのは泥団子とゴブレットに入った泥水だった。


「泥ー!!!!!」


オリヴィアの叫びはバルコニーを超えて庭園に響き渡った。すると、オリヴィアの背中の羽が光に包まれ、跡形もなく消え去った。それを見たミオは満足そうに手でVサインをつくる。



「成功しました、任務完了です」

「あああ………」


オリヴィアはバスケットを手にしたまま、放心時状態となっている。そんなオリヴィアとは対照的に、ミオはウキウキと語る。


「お嬢様をどん底へと叩き落とす方法、まだまだ色んなパターンを考案中ですから、どんと来いです」


そんなミオを見てローズは呆れた表情で言う。


「あんた、結構楽しんでるでしょ……」

「嗚呼、次はどんなパターンでいきましょう…」


ミオはいつものポーカーフェイスだが、頬は薔薇色に染まり明らかに高揚している。

これは確実に楽しんでいる。

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