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その29

その日、再び背中から羽を生やしたオリヴィアは広大な庭園へと繰り出していた。

護衛騎士や侯爵家の騎士を連れて。


というのも、オリヴィアが羽で飛ぶ練習をする為の巨大クッションが完成したのである。

これで変な所に落下しかけても、巨大クッションを持った騎士達が走っていけばオリヴィアをクッションで受け止められる。ちなみにローズのお手製である。



「み、皆さん、よろしくお願い致しますっ」


久々に空を飛ぶ練習をするため、緊張の面持ちで挑む事となった。身に纏う衣装は、スカートの中が見えないように、異国の貴族女性が着る煌びやかなローブのスリットから、ゆったりとしたズボンが見えるようになっている。


意を決してバサリと羽を広げ、空に舞うオリヴィア。前よりもスムーズに飛べている気がする。


実は前からこっそりと低い高さで飛ぶ練習をしていたのだが、こんなにも高く飛んだのは久々だった。ローズが心配するのでバレないように細心の注意を払っていた。


騎士達の頭上を飛び、湖の上でくるりと一周して、元いた場所へと降りようと下降に入ったが、予想よりも大分先の地点に向かってしまった。騎士たちがクッションを持って走っても間に合わないであろう、遥か先へと通り過ぎてしまった。



「あっ」


(折角クッション作ってくれたのに無駄にしてゴメンなさいローズ!!騎士様達もごめんなさい!!)


頭上を通り過ぎて行くオリヴィアに追いつこうと、大慌てで騎士達が走って来ている。


しかももう少し緩やかに降りたかったが、焦りのせいか地面に近づくスピードが早い気がする。このままだと着地と同時に転んでしまうかもしれない。



そう思うと怖くて目を瞑ってしまい……衝撃を覚悟したその瞬間、何かに抱きとめられた。


驚いて恐る恐る目を開けると、眼前には麗しい金髪碧眼の王子、エフラムの顔がそこにはあった。

オリヴィアはエフラムに横抱きにされていた。



「オリヴィア、大丈夫!?危なかったねっ」

「え……エフラム様…?」


王宮にいるはずの人がここにいるだけでも驚くのに、しかもいつの間にか抱きとめられ助けられている事に、オリヴィアの頭は理解が追いつかず、思考が停止してしまった。

故にそのまま、ただただ美しい金髪の王子の顔を見つめ続けるしかなかった。エフラムの髪は陽の光に照らされ、キラキラと輝き続けている。



「殿下ーーー!!」


「偶然さっきこの屋敷に到着したらオリヴィアが空を飛んでて、着地が危うそうだったから急いで受け止めに来たよ。間に合って良かった」



オリヴィアの安否を確認するため、そして王子を出迎えるため、護衛騎士達は物凄い勢いでオリヴィアとエフラムに駆け寄ってきた。そんな騎士達を見て、かなりの距離を走らせてしまい、オリヴィアは申し訳なく思った。


そして、騎士達に負けないくらいの速さで、ストレートの黒髪ポニーテールを振り乱して爆走して来た、侍女のローズは大声で叫んだ。



「キャーーーー!!絶対嘘です絶対嘘!!確実にここにこっそり住んでます!!

騎士様方!あの王子です!!オリヴィアお嬢様の悪質なストーカーかもしれません、捕まえて下さい!!」



「ローズ殿落ち着いて下さいっ」


「了解致しました」


女騎士ルイザは素早く懐から縄を取り出した。それを見てグレンはキレた。


「馬鹿野郎!何普通に捕まえようとしてんだ!」


ナチュラルに王子を捕縛しようとしたルイザへの、グレンからの叱咤する声を聞き、ローズは我に返って何とか自分を抑えようとした。



「ハァハァ…申し訳ございません。あまりにも……タイミングが良すぎて嘘くさく感じた挙句、鳥肌が立ってしまいました…。大切なお嬢様を助けて頂いたにも関わらず、取り乱してどうもすみません…でした。エフラム殿下、深くお詫び申し上げます」



ローズはエフラムのオリヴィアに対する真摯な態度を見て、二人を応援すると決めていた。だが条件反射で罵詈雑言をあびせてしまい、顔を引きつらせながら何とか謝る事に成功した。


鳥肌を抑えながら謝罪するローズに対しエフラムは爽やかな王子様スマイルを見せた。


「気にしなくていい。確かにタイミング的に驚かせてしまったね。そんなに謝らなくても大丈夫、僕はローズの毒舌がないと何だか物足りないくらいだから」



「エフラム殿下、やはりそのようなご趣味がっ…ゴフッ!?」


ルイザはグレンから脇腹に肘鉄を食らった。

段々ローズの毒舌が癖になり、ドMに精神が傾いていっていると思ってしまったルイザ。

馬鹿は言っても治らないと、グレンは判断した。

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