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その28

『背中から羽が消えている』という、ローズの信じられないような言葉に、オリヴィアは急いで姿見で全身を写す。

確かに羽は見当たらない。


今度は後ろを向いて振り返ってみるとそこには……背中には、羽など一切形跡のない、普通の背中が鏡に映し出されていた。

なんと、本当に背中からあの大袈裟な純白の羽が消えていたのである。



鏡を見たオリヴィアはワナワナと全身を震わせ、拳を握りしめ、ガッツポーズを取った。


「こ……ここ…これは……治ったー!呪いが解けました!」


「呪いじゃないよ祝福だよ!」


フェリクスはすかさず訂正した。


「でもどうして解けたんでしょうか??もう一生羽は生えてこないとか…?」


解けたのは嬉しいが、原理がイマイチ分からなかった。



「と、取り敢えず一旦このしおしおパンケーキを片付けないと。羽の事は後回しです。食べ物を粗末にする事は出来ませんっ」


オリヴィアは長椅子に座って、冷えきってしまったパンケーキに向かった。




「オリヴィア、大丈夫。しおしおパンケーキは僕が半分食べるのを手伝ってあげるよ」


「フェリーさん」


「だからもう一枚焼こ?」


「あんた自分が焼きたて食べたいだけでしょうがっ、フォンダンショコラはどうするのよっ」


ツッコむローズの言葉を聞いてフェリクスは飛び跳ねた。


「両方食べた~い!」






「あぁ…何て美味しいんでしょう…幸せ」


ハートのココット皿から取り出された、出来立てフォンダンショコラを割ると、中からトロリと熱々のチョコが溢れてくる。


出来立てフォンダンショコラにを一口食べると、オリヴィアの頬は文字通り蕩けそうだった。



フェリーはパンケーキを半分くれた代わりに、フォンダンショコラはオリヴィアとローズにも分けてくれた。

ローズには、命を助けてくれたお礼も兼ねているらしい。


全部独り占めするかと思っていたから意外だった。そこで、ようやくローズは『そういえばこのデブ鳥は神の使いだった』と思い出した。

がめついだけでなく、施しの精神くらい持ち合わせていても不思議ではないのかもしれないと。


「本当に幸せ」


最後の一口を食べ、そう呟いた瞬間再びオリヴィアの背中が光り出した。


「おっお嬢様っ!?せ、背中!羽!」


「……え?」


振り向くと、視界にはもう既に見慣れた純白の天使のような羽が堂々と出現していた。



「げっ!?」


驚愕により、何秒間か停止したのち、オリヴィアは声を荒げた。


「うぁ~ん!!また呪われましたー!!」

「祝福だよ!」

「なぜ…一体どうして……」


愕然とするオリヴィアに向かって、ローズは何か気付いたようで、「もしかしたら……」と呟いた。


「ローズ…何か分かったの…?」



そこにタイミングよく黒髪の騎士、グレンがやって来た。



「ぐ、グレン様丁度良いところにっ」

「どうなさいましたローズ殿?それにオリヴィア様」


慌てた様子でローズが駆け寄り、一瞬グレンは面を食らっていたがローズの話を聞くと、神妙な面持ちとなった。

そしてローズは、オリヴィアの羽が突如消え、今再び背中に出現した事と、それに関するローズの考えをグレンに伝えた。



「はい、ローズ殿の意見で間違い無いと思います。オリヴィア様のその羽はオリヴィア様の感情と連動しているように思えます」



「ぐ、グレン様はどうしてそう思うのですか?」


「オリヴィア様が嬉しそうな時は羽がパタパタと動いたり、ショックな事や悲しい事があると羽が垂れ下がったりしていたのです」


それを聞いた途端、オリヴィアの羽はオリヴィアの体を隠すように包み込んだ。


「えええ~!そうだったのですかっ!知りませんでした、恥ずかしいです~!」



これは連動しているからなのか、ワザとなのか他の者には分からなかった。

だが、何となく原理は分かってきた気がするので、早速オリヴィアは羽を再び消すため、闘志に燃えた。





その後一人オリヴィアは暗い部屋に閉じこもって、世界に一人取り残された妄想を延々と二時間ほど繰り広げ、背中から羽を消す事に成功したのだった。

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