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その22(ヨシュア視点)

怪我を治してくれと言ったのに対し、自然治癒で頑張れと言い出した、自身の婚約者であるオリヴィアにヨシュアは苛立った。


「何だと?怪我くらい治せるだろっ」


「治せますが、それくらいなら自然治癒に任せた方が良いかと。頻繁に治癒魔法を使用するのは…」


「もういいっ!」


ヨシュアはオリヴィアの言葉を最後まで聞く事なく、憤慨して部屋を出て行ってしまった。



人々はオリヴィアを天使や女神に例える。確かに容姿は美しいが、掴み所のないマイペースなオリヴィアの事をヨシュアはそのように思った事はない。


結局ヨシュアは視察の時に、怪我を治してくれた少女の事が忘れられなくて、再びランス地方にある彼女と出会った町に足を運んだ。




治癒能力を持つ少女など一人しかおらず、彼女の事は直ぐに見つける事が出来、無事再会を果たした。


彼女は会った瞬間、笑顔を見せてくれた。相変わらず可愛いらしい。少女の名はアイリーンというらしい。

当初アイリーンには王子だという事は伏せていたが、何日か滞在する最終日にとうとう身分を打ち明けた。


今すぐ決断を迫る事はしないが、もし王都で暮らす事を了承してくれるなら手紙にそう書いて送って欲しい。そう言い残して一旦ヨシュアは帰還した。


すると、半月が経った頃にアイリーンから手紙が届き、王都で暮らしたいと手紙がきた。

ヨシュアは大喜びでアイリーンを迎えに行った。


『貴重な回復魔法を使える人材を確保した』という名目でアイリーンを招く事に成功した。



王都へ連れ帰ってからのアイリーンは、元々平服でも十分に可愛らしかったが、垢抜けて益々美しくなっていった。そんなアイリーンの存在がヨシュアには眩しくて目が離せなかった。


しかもアイリーンはオリヴィアとは違い、少しでも傷を負った者には惜しみなく治癒魔法を施す。


そんなアイリーンを見て、心優しい彼女こそが聖女だったらよかったのに、という思わずにはいられなかった。



そんなある日、目の前で傷付いた小鳥を癒すアイリーンを愛しく思いながら、ヨシュアはついオリヴィアの事を愚痴ってしまった。


オリヴィアは聖女であるにも関わらず、婚約者の自分が怪我を負った時ですら、治癒魔法を使おうとしないと。


オリヴィアが治癒魔法を使っている所は実際に目にした事があるので、使えないわけではない事は知っている。

それにも関わらず、婚約者である自分の怪我を治そうとしないとは!


そうアイリーンに言うと、彼女はポツリと零した。


「もしかして、オリヴィア様は魔力の容量が少ないのではないかしら?」


魔法とは無限に撃ち続けられるものではない。

使える魔法の一日の上限は決まっていて、それは人によって様々である。無論修行をすれば上限が多少上がったりもするが、生まれつき魔力量が多い者もいれば少ない者もいる。


強い魔法を使い続けると当然一時的に容量は枯渇するが、休めばそれは回復する。


「私、治癒魔法を使ってもそんなに魔力保持量は減らないのだけど、元々少ない方が治癒魔法を使うと大変なのかもしれない」


「なるほど…」


もしそうだとすると、同じ能力を授かっているというのにアイリーンの方が魔力量が多く、聖女と名乗っているオリヴィアの方が大した事はないのかもしれない。



ヨシュアのオリヴィアへの疑念はどんどん募って行った。

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