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その16

騎士達はカルロスに驚いてしまったが、普段屈強な騎士や兵士など見慣れている。

近衛騎士にだって筋肉ダルマくらい普通にいるのだ。

だがその筋肉を覆うのは、騎士服や頑丈な鎧であり、ピンクのフリフリ姿などは当たり前だが見た事はなかった。カルロスがもしいつもの格好をしてこの場に現れていたら、ここまで驚かなかった事だろう。




「カルロス、皆さんこのプレートのデコレーションをとても褒めて下さいます。この可愛らしさはカルロスの心が現れているようですって」



オリヴィアはクリストファーの言葉をそのままカルロスに伝えた。


「え、照れますねぇっ!皆さん王宮のスイーツやらは夜会などで食べ慣れてますでしょうにっ」



「いえいえ、予々フローゼス家のパティシエの腕はとてもレベルが高く、見た目も味も王宮に引けを取らないと思っていました。


昨日晩餐の後に出して頂いたケーキの上に、薔薇のように飾られた桃のコンポートも大変美しく、見た目も味も絶品でした。」


紳士的な女騎士ルイザの言葉を聞いてカルロスは、顔をパァッと破顔させた。



「ありがとうございますっ。いつも侯爵家の方々にもよくして頂き、騎士様方もとても感じのいい方ばかりで、大変嬉しく思います!」


言いながら、カルロスはポケットから薄ピンクの可愛らしいポケットチーフを取り出し、額の汗を拭った。それを目にしたローズは衝撃を受けた。


(か、可愛い…!ポケットチーフまで可愛い!?ピンクのフリフリエプロンの件は、お嬢様何つー事してくれんのっ!て思っていたけど、カルロス自身も元々可愛い物好きって事!?)


エプロンの件はオリヴィアに仕方なく付き合って上げてる可能性もある、と思っていたがそうでもなかった。



「カルロスが褒められると私も嬉しいわっ」


オリヴィアが満面の笑みでカルロスを見ると、カルロスはハニカミながらその場の全員向かって言った。


「ちなみに今回のプレートのテーマは、『陽気に誘われて、クマちゃん春のお茶会中』です」



(お、乙女だ!!)

(乙女!!)

(乙女だわ!)

(可愛い……!!)


カルロス自身が描いたデコレーションへ、付けたタイトルに、グレン、クリストファー、ローズ、ミシェルはそれぞれ衝撃を受けたが、声には出さなかった。



「で、ではお嬢様。ふわふわの方もいつでも焼いて頂いて結構ですので」


カルロスは照れたまま、何度も頭をペコペコと下げてティールームを後にした。


そんな人の良さそうなカルロスに、「何だか可愛く見えてきた。」と思う者もいた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



健康的な騎士達はパンケーキを早々にペロリと平らげ、既にパンケーキが乗っていたお皿は下げられ今はお茶を楽しんでいる。


「皆さま、今から先程とは違ったパンケーキを焼こうと思うのですが、二枚目を食べれたりしますか?」


もう一種類焼く予定があったので、先程のパンケーキは敢えて小さめに作っていた。



「頂いてもよろしいですか?」

「私もっ」

「僕も」


全員が二枚目を食してくれるのだと言う。


「では、早速焼きに行って……」


オリヴィアが立ち上がった瞬間、ティールームのドアが叩かれた。


「お嬢様、お客様がいらっしゃいました」


「まぁ、どなたかしら?」


オリヴィアが首を傾げながら考えると、扉から現れたのは金髪に碧眼の王子。第二王子エフラムだった。

突然の第二王子の登場に、今までお茶を飲んでいた騎士の面々が急いでティーカップを置いて立ち上がった。



「で、殿下!?」


「オリヴィア、会いに来てしまった」


「暇なんですか?」


ローズはすかさず言った。

護衛騎士の面々は肝が冷えた。



「報告で、護衛騎士達がオリヴィアの手作りのお菓子を食べていると聞いて、羨ましくていても立ってもいられず…!」


「暇なんですね?」


「ろ、ローズ殿っ!」


ローズはいつもはっきりと物を言うが、流石に王子であるエフラムにそのような物言いはまずいだろうと、グレンは止めに入った。


「いや、大丈夫ですグレン兄様。ローズに罵られる事に至っては僕が許しています。存分に罵ってくれて構わない」


エフラムは従兄弟であるグレンを兄と呼ぶ。


そして『ローズに罵られても構わない、存分に罵っても構わない』というエフラムの言葉を聞いてルイザは言った。



「なんと、殿下にそのようなご趣味がっ!」

「馬鹿野郎っ」



どうやらルイザは、エフラムが女性に罵られたい願望を持っているのだと勘違いしたらしい。


グレンはルイザの事を本気で馬鹿だと思った。

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