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天災賢者の愚者笑曲  作者: こーはい
7/17

第1章七節 剣聖は襲われた

はいどんどん

 フォルナが学校に行った日の夜、レガートはバイトで精を出していた。

「レガート君!」

「あ、先輩」

 レガートはバイトを掛け持ちしており、その日は土方作業の日だ。

「いつも静が出るねー!」

「ありがとうございます」

「そんな畏まらなくていいって!あの文恵さんの紹介で入ったってなれば、入れない訳にはいかないからね!」

 レガートはこの仕事を文恵に紹介してもらった。

 素の身体能力が高いので、レガートにはうってつけだった。

「そういえばもうすぐ初給料でしょ?大切に使えよ〜?」

「はい」

「あ、そういえば主任がもう上がれって言ってたから上がりな」

「はい、お先にあがります。先輩達は?」

「俺たち正社員はこの後用事があるから」

「分かりました。お先に失礼致します」

「おう、気をつけて帰れよ〜」

 レガートは着替えて帰った。


・・・


「・・・そこにいる奴、出てこい」

 そこはガード下の場所だった。

 帰宅途中、レガートは妙な気配を感じ取った。

 常人ならば、ただの人だと思うがレガートはそこを敏感に感じ取っていた。

(明らかに人間とは違う気配・・・これは俺たちの世界の・・・)

 レガートと謎の気配の者の間に、静かな間が支配した。

「どうした?出てこないのか?」

 謎の気配は動かず、レガートをじっと凝視している。

「・・・」

(!動いた)

 僅かな気配の揺れを、レガートは見逃さなかった。

 素早く後ろを振り向くが誰もいない。

「上か!」

 レガートが顔をあげると、頭上からローブ付きのマントを被った奴が襲いかかってくる。

 手にはナイフを持っている。

「!」

 レガートは素早く避ける。

「ちっ、さすがに無理か」

「何者だ?正体を表せ」

「見せろって言って素直に見せるかよ」

「お前、俺たちの世界(トロンメールの者)だろ。どうやってこっちに来た!」

 この世界に来たのは、レガートを含めれば3人しかいない。

 実際そういう芸当が出来るのは、賢者であるロウグだけだ。

「悪いが教えられない。ただこっちに来たのが()()()()()()()()()()()()()

「なに?」

(まさかロウグと同じく世界を渡って来たのか?)

 レガートはマントを被った奴の言葉に目を細める。

「お前と戦闘になったら絶対に勝てない。ここは引かせてもらおう」

「!待て!」

 奴はそう言い、建物の屋根に飛び乗った。

 人間ではありえない身体能力だ。

「やはり人間には人間をぶつけるのが1番か」

 奴はあっという間に姿を消した。

「逃げられたか」

 追えば追いつくが、レガートの身体能力じゃ屋根を踏み抜いてしまう。

 敵はそこも計算していたのだろう。

「これはあいつらにも言うか?。にしても最後の言葉はいったい・・・」

 レガートは謎で頭を埋めながらも、急いで家に帰った。


・・・


「ただいま」

「遅いぞレガート!お前今日6時半には終わるはずだろ?」

「すまん、仕事が遅れたのと、帰宅途中で少しトラブルが起きた」

 時刻は7時を下回る。

 レガートが家に帰ると、ロウグが出てきた。

「トラブル?まぁいいや。今日はおばちゃんが飯作ってくれたから、食べようぜ」

「お前以外の気配もあるが」

「さっすが剣聖、結笑ちゃん達が来てるぜ!」

 レガートは気配で他に客がいる事が分かった。

「今日の飯はなんだ?」

「焼き鮭だ。冷めねえ内に食おうぜ?」

「ああ」

 リビングに入ると、魚のいい匂いが漂ってきた。

 この世界に来てからロウグ達は、日本の和食にハマっており、毎日食べている。

 リビングのテーブルの椅子に座っている結笑とフォルナがレガートに気付き、お辞儀をする。

「おかえり、レガートさん」

「おかえりなさい」

「ああ、ロウグに変な事言われてないか?」

「ひどい!?(;ω;)」

「大丈夫ですよ、()()されてませんから」

「結笑ちゃん!?」

 結笑の言葉がロウグの心に刺さった音がした。

「そうか、とりあえず飯にしよう」

「いただきます!」

 レガートの言葉を忘れようとするように、ロウグはご飯をかき込んだ。

 レガートも味噌の匂いを堪能しながら、味噌汁を飲んだ。


・・・


「ごちそうさまでした」

「いやー、やっぱりおばちゃんの作る飯は最高だねー!」

「兄さん!食器片付け手伝って!」

「えー(´ε`;)」

(やはり言うべきか)

 片づけをしている女子2人と面倒くさがる兄の会話を聞き流し、レガートはつい先ほどの襲撃を思い出す。

 これは言うべき問題だろう。

「おいお前ら」

「どうしてレガート?飯食ってる時も仏頂面だったし・・・何かあったのか?」

「お前らの・・・特にトロンメール組に聞いて欲しい」

「レガートさん、本当に何があったの」

「今話すよ」

 フォルナの問いに答えるように、レガートは自分への襲撃を話す。

「という事だ」

「それはほんとか?レガート」

 ロウグも相応の事態と察し、いつもの態度も鳴りを潜める。

「ホントだ。あれは確実に俺たちの世界と同じ住人だ」

「でも兄さんの魔法に巻き込まれたのは私たちだけだよ?」

「そのはずなんだが・・・」

 レガートは低く唸る。

 あの剣聖と言えども、このような事態は初めてだ。

「相手の種族は?」

「分からん、一瞬だった上に、何より気配がぼやけて分からなかった。おそらく魔法を使ってる」

「まじかよ・・・」

「しかし魔族である事は確実だ」

「暗殺特化で尚且つ気配の隠蔽が得意ってあいつら(魔族)しかいねぇだろ」

「あのー、すみません・・・」

 そんな会話をしていると、台所にいた結笑が出てきた。

「会話を途中から聞いてたんですけど、魔族や種族って?」

「ああ、そういえば結笑には細かく話して無かったな」

「人間以外の二種族は神獣や竜の魔力を取り込んだ人間や獣。魔族ってのは、竜の魔力を取り込んだ奴らって事だな」

「創造神エイク、神獣ゼルネア、竜神ジアカーダ・・・この3柱の神がいる」

 結笑の疑問にがロウグとレガートが的確に答える。

「戦時中も、奴らはすげぇ厄介だったな」

「厄介?どういう事ですか?ロウグさん」

「三種族はそれぞれ、教え?みたいなものがあってな、人間は文明発展を、亜人は自然との共生を信条としていて、まだ平和思想の方に入るんだよ」

「では魔族の人達は?」

「破壊と混沌」

「え?」

 結笑は思わず聞き返した。

「魔族達は基本、破壊を第一にしてる。元々竜が世界の破壊を司ってるからな」

「亜人や人間は、力を見せれば大人しくなるが、魔族は基本的に殺戮を楽しんでるせいで力の脅しが効かないんだ」

「レガートの言う通りだな」

「そんな・・・!じゃあまずいじゃないですか?」

「まずいね、魔族ならたとえ1人でもテロの一つや二つやりかねん。ほっとけば死人が出るぞ」

「死人・・・!」

「安心しろ結笑ちゃん!そんなことはこの(賢者)がさせねぇ!」

「ああ、剣聖の名に誓って、この世界の人達には指一本触れさせん」

 震える結笑をレガート達は勇気づける。

「ありがとございます」

「とりあえず、まずはそいつの身元調査だな。ロウグ」

「任せろ」

「私はどうすればいいの?」

「フォルナちゃんは結笑を守ってくれ。学校の中で守れるのはお前しかいない」

「分かった」

「相変わらず指揮が上手いな」

 レガートは寸分たがわずに指示を出す。

 戦争中、レガートはよく軍の指揮をとっていた。

「あの、もうひとついいですか」

「ん?どうした結笑?」

「その竜の魔力って人が持つとどうなるんですか?その・・・持っていない人が急に」

 結笑は言葉を纏めながら質問する。

「どうしてそんな事を?」

「いえ、気になる事があって」

「まず、魔力を持たない奴が魔力を持つと、その魔力によって性格が変わるって言われてる」

「性格?」

「そうだ、神獣の魔力を持てば、物腰穏やかな性格になりやすいと言われてる」

「実際エルフや精霊等の亜人族は穏やかな性格のやつも多い。例外はいるけどね」

「ちょっと兄さん、なんで私を見ながら言うの」

「反対に竜の魔力を持つと性格が残忍になりやすい」

「残忍?」

「ああ、負の感情が表面上に出て、憎しみや嫉妬のような感情で動きやすくなる」

「・・・」

「ん?どうしたの結笑ちゃん?」

 いきなり黙る結笑に、フォルナが問いかける。

「少し・・・心当たりがあります」

「え?」

「もしかしたら、その犯人に会えるかもしれません」

読んでいただきありがとうございます!

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