表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天災賢者の愚者笑曲  作者: こーはい
6/17

第1章六節 エルフは学校に行く

マジで溜まってんなー

 ロウグと文恵のやり取りの一方、フォルナ達は学校に着いていた。

「ここが私が通う学校?」

「そう、私立六條(ろうじょう)高校」

 2人のアパートから電車と歩きで向かって20分にある共学制の高校だ。

 外見は少し近代的な外見をしていて、外からでも広い敷地と分かる。

 いくつものでかい建物が並んでいる。

「ここが、楽しみだなー!」

「うん、私もフォルナちゃんと行けるの楽しみ」

 2人は互いに笑いあった。

『ねぇ、あの子可愛くない?』

『あんな子いたっけ?』

「ねぇ、なんかざわざわしてない?」

「フォルナちゃん美人だからね」

「そうかなー?」

 実際フォルナはエルフと言う事もあり、かなり美人だ。

 背も高く、綺麗な金髪と碧の目をしている。

「これでも兄さんより劣るんだよね」

「確かにロウグさんは顔はかっこいいからね・・・」

「そうなんだよね」

「と、とりあえず!早く行こ?確かフォルナちゃんはこのまま校長先生と理事長との面談でしょ?」

「うん、しばらく分かれる事になっちゃうけど・・・」

「大丈夫だよ。じゃあね」

 そう言って結笑はトコトコと歩き出した。

「よし、頑張るぞー!」

 フォルナは頬を叩き、気合いを入れる。


・・・


「フォルウナ・ジニウスさんであってるかな?」

「は、はい」

 校舎に入り、理事長室に入ったフォルナは3人の教師に見られながら理事長と話す。

「そんな固くならないでいいよ。前に紹介した通り、私理事長の榊原(さかきばら)史明(ふみあき)、左は校長の大竹(おおたけ)武元(たけちか)だ。」

「よろしくね」

「はい、よろしくお願いします」

「事情は前にも聞いたからいいけど、君は転入生で大崎文恵さんが面倒を見ている。だね?」

「そうです」

「来たばかりだから最初は戸惑うと思うけど、ここには私もいる。安心して過ごすといい」

「ありがとうございます」

「では校長先生、ここからは貴方が」

「はい」

 榊原はそのまま部屋を出た。

「ジニウスさん、まずは貴方の担任を紹介するよ。先生」

「はい、担任の井手原(いではら)朱里(しゅり)です。英語を担当しているわ。不安があれば言ってね」

「よろしくお願いします」

「いい子ね。では時間もいい頃合いなので、案内します」

「君のクラスは1-2組だ。結笑さんと同じだから安心してね」

 そう言って大竹は微笑んだ


・・・


 時刻は8時を下回り、ちょうどホームルーム開始時間だ。

「はーい、みんな注目!」

 井手原の一声でクラスの人達が集中した。

 クラスは5クラスあり、1クラス35人ほどいる。

「今日から転入生を紹介します。入ってきて」

「し、失礼します」

 フォルナは緊張しながら入り、先生の横に立つ。

 当然周囲がざわざわしだした。

「今日から編入してきました。フォルウナ・ジニウスです」

 黒板に名前を書いて、自分の名前を言う。

 1ヶ月、必死で覚えた。

「見ての通り、留学生です。日本語は今書きを勉強しています。フォルナと読んでください。よろしくお願いします!」

 フォルナは深く頭を下げた。

「・・・」

(やっぱり静かだな)

(いきなり来たからしょうがないけど)

 しばらく静寂が続いた後、1人の男子生徒が口を開く。

「じょ・・・」

『女子だー!』

「え?」

 男子生徒達が次々と喜びが伝播していく。

「こら男子ー、嬉しいのは分かるけどはしゃがない」

 井手原が窘める。

「だって先生女子っすよ!?しかもこんな女子いないでしょ!」

『そうだそうだー!』

「はいはい、じゃあジニウスさんは結笑さんの隣ね」

「はい」

 歩くと皆で目で追う。

 それもそうだ、まさに種族が違うのだから。

「さっきぶり、結笑ちゃん」

「うん、フォルナちゃん」

 恐らく教師達が気を利かせたのだろう。

「はい、じゃあ今日のホームルームは終わりね。次の準備をするように」

 井手原の言葉で、ホームルームは終わった。

「ねぇねぇ、フォルナちゃん!どこから来たの」

「きれーい!まるでお人形みたい!」

「ねねフォルナちゃん!メアド交換してー!」

「俺も俺も!」

 ホームルームが終わると同時に、フォルナの周りには同級生が押しかけてくる。

「ごめんね、私携帯持ってなくて」

「えー!なんでー?」

「この前壊れちゃって」

 フォルナは笑顔で質問に答えていく。

「フォルナちゃんって兄弟いるの?」

「兄がいるよ」

「へぇー!」

「あ、あの」

 フォルナに対する質問が止まらず、結笑は話しかけられない。

 そうしているうちに、休み時間が終わった。

「ねぇ、次ってなんの教科なの?」

「国語だよ」

「ていうか次の授業の準備してないじゃん!」

「ほんとだ!フォルナちゃんまたね!」

 そう言って周りの同級生は戻っていった。

「結笑ちゃん、大丈夫?」

「うん、大丈夫」

 結笑は人付き合いが苦手で、今まで学校で喋った事がない。

 文恵に「結笑ちゃんをよろしく」と頼まれたフォルナは、その責任がある。

「何かあったら言ってね?」

「大丈夫だよ。フォルナちゃんは私より他の人といなよ」

 結笑はフォルナの心配を笑顔で返した。


・・・


 1時限目が終わり、2時時限目の授業は体育だ。

 クラスで体育館に集まる。

「はーい、じゃあ今日はバレーボールやってくぞー。適当にペア作れー」

「フォルナちゃん!一緒にやろ?」

 女性の体育教師に言われ、女子達は次々とフォルナに群がっていく。

「ごめんね、もうペアの約束しちゃったから」

「えー」

「ごめんね、結笑ちゃんやろ?」

「え?う、うん」

『誰?』

『知らない』

『あれじゃない?いっつも本読んでる子』

『あの地味な子?』

 他の女子達がヒソヒソと言い合う。

 聞こえない声で話しているつもりなのだろうが、五感の鋭いフォルナにははっきり聞こえている。

「ね、フォルナちゃん。私はいいよ」

「我慢しないで、他の言う事なんか気にしなくていいんだから」

 結笑は我慢してしまう所があるので、フォルナは笑顔で答える。

「うん・・・ありがとう」

「よーし、ペア決まったな。じゃあトスの練習してろー」

 気だるそうに話す体育教師の声にフォルナはこれでいいのかと不安になった。

「ねぇフォルナちゃん」

 トスの練習をしていると、結笑が話しかけてきた。

「何?」

「なんで他の人とペアにならなかったの?私よりいい人なんてたくさんいるのに」

「んー、結笑ちゃんの魂が綺麗だから」

「え?」

 フォルナの言葉に結笑が固まる。

「私はエルフなんだけどエルフは五感を越えた感覚みたいなものを持ってるの」

「直感みたいなもの?」

 エルフなどの亜人族は森で過ごすために、五感などが発達した。

 しかし、魔力を持つエルフには、特殊な力がある。

「そう、だから私の前じゃ嘘とか隠してる気持ちとかはすぐ分かるの」

「そうだったんだ」

「あの子たちは優しいのは分かるんだけど、何か打算・・・下心のようなものもあって近づきにくいんだよね」

「じゃあ私は・・・」

「結笑ちゃんはすごい綺麗な心を持ってるから安心して話せるんだ」

 フォルナは結笑の心配を払うように笑った。

 その時だった。

「きゃ!」

「結笑ちゃん!」

 結笑の体に飛んできたボールが当たった。

「大丈夫?」

「うん、大丈夫・・・」

「ごめんごめん、当たっちゃった」

 結笑の前に、1人の女子が近づいてきた。

「いえ、大丈夫です」

「ちょっと、当てといてその態度はないんじゃない?」

「なに?文句でもあんの?」

「だって罪悪感ないよね?私に隠して事は出来ないよ」

 フォルナが目を細める。

「ほんとに申し訳ないなら、そうやってニヤけて謝らないし、何よりわざと当てないでしょ?」

「!?」

「え?」

 その言葉にその女子は顔をしかめる。

 結笑もその女子を見る。

「私見てたんだ。貴方がわざと結笑ちゃんにぶつけてたの。反応が遅れて当たっちゃったけど」

「何よ、少し可愛いからってちやほやされて・・・!」

 そう言って、離れて行った。

「全く、大丈夫だった」

「うん、それよりフォルナちゃんこそ大丈夫?」

「なんで?」

「だってあの子、女子の中でも中心的存在だから・・・」

「友達見捨ててまで手に入れたい友情なんてないよ」

「!」

「それよりごめんね、もう少し早く気付いていれば当たる事は無かったのに」

「いいの、大丈夫」

 結笑はそう言って笑った。

「はーい、試合するから集まってー!」

 気だるそうな体育教師の声が聞こえた。

「行こ?結笑ちゃん」

「うん」


・・・


 クラスの女子で5人ずつに分かれ、試合をする事になった。

 結笑にボールをぶつけてきた女子は敵チームにいる。

『フォルナちゃん頑張ってー!』

 他の女子生徒から、応援があがる。

「フォルナちゃん、ルール分かる?」

「分からない」

「それ大丈夫?」

「とりあえず線超えなきゃいいんでしょ?それならいける!」

(不安だなー。バレー部いるし)

 結笑が心配をわきに、試合が始まった。

 試合は進み、ついにフォルナへボールが回ってきた。

「いったよ!」

「任せて!」

 フォルナはフォームを思い出しながら、力いっぱいスマッシュを入れた。

「ふ!」

「きゃあ!」

「やった!」

 スマッシュが入り、フォルナのチームに1点入った。

「すごーい!あのバレー部に勝てるなんて!何かやってたの?」

「何もやってないよ。少し体動かしてるだけ」

「へぇー!」

 他の女子が感嘆の声を出した。

「・・・」

 試合は順調に進むが、そんな時だった。

「きゃ!」

 結笑の方にボールが集中しだした。

 相手はもちろんあの女子だ。

「っ!」

 フォルナは怒りで拳を握る。

 取ろうとしても、結笑にぶつかるのを恐れて取れない。

 そして最悪は起きた。

「ふ!」

「ぐ!?」

 投げたボールが結笑の顔に当たった。

「結笑ちゃん!」

 フォルナは慌てて駆け寄る。

「大丈夫だよ・・・気にしないで」

「・・・!使わないと思ってたけど」

 今まで我慢していたが、もう限界だった。

「結笑ちゃん」

「なに?」

「確か結笑ちゃん魔法見たいって言ってたよね?」

「え?う、うん」

()()()()()()()()()

「何をする気なの?」

「今から見てて」

 そう言ってフォルナは戻った。

 前を見れば、その女子がニヤニヤしている。

「じゃあ初め!」

 体育教師の声でボールが飛ぶ。

「【風よ、私を纏え】」

 試合開始と同時に、フォルナは魔法を発動した。

 フォルナの周りを風が吹いている。

 髪がたなびく。

「ねぇ!なんかフォルナちゃんの髪妙に揺れてない?」

「気のせいじゃない?窓空いてるし」

 女子生徒が疑問に思うが、風のせいと思われている。

 そして敵のスマッシュが来た。

 相手はもちろん結笑だ。

 結笑は恐怖で目を瞑る。

「させない」

 フォルナは足に力を入れる。

 さっきまでとは比べ物にならない速度で結笑の前へ行き、そのボールを受け止めた。

「フォルナちゃん早い!?」

「さっきのは全力じゃなかったんだ!」

 ボールは高く打ち上げられる。

「そのボールさっきより高く上げて!」

「え?わ、分かった!」

 味方の女子がボールを高く上げた。

 それに合わせ、フォルナも高く飛ぶ。

 さっきよりも高く。

「【吹き抜けろ、我が風よ】!」

 打つ直前に詠唱し、風が腕に纏い付く。

「ふ!!」

 ボールを撃ち抜く。

「ぐ!?」

 その威力は普通の女子高生が受け止める事は出来ない速度だ。

 そのボールはそのまま敵のコート内に凄まじい鋭音を発し、着いた。

「そこまで!ジニウスさんチームの勝利!」

「やったー!」

 フォルナはその場で喜んだ。

「すごいねー、フォルナさん。あの人のスマッシュ、受け取れる人なんてこのクラスにいないのに」

「そうなの?」

「そうよー、あの人バレー部のエースだもん」

 フォルナに1人の女子生徒が話しかけてきた。

「でも、ほんとにすごいね!このままバレー部入っちゃえば?」

「んー、考えとく!」

 女子生徒は「そう」と言って、去っていった。

「フォルナちゃん!」

 その時、結笑がフォルナの所に来た。

 すごく興奮している。

「あれがフォルナちゃんの魔法?」

「そうだよ」

「すごいね!あんなスパン!って音初めて聞いた!」

「これでも全然だよ、兄さんなら床抜けてる。確かに加減はしたけど」

「そうなの?でもほんとにすごいよ!!」

 興奮しながら、フォルナの肩を揺らす。

 普段は大人しいので、興奮した時はすごいはっちゃけるのかもしれない。

「にしても、あの子って」

「あの子?」

「結笑ちゃんにわざと当てた子だよ」

「ああ、あの子ね」

「名前は?」

「えっと確か・・・」

 結笑は少し考えた後。

「そうだ、榊原さんだ」

「え?」

「榊原咲野(さきの)・・・()()()()()()()

読んでいただきありがとうございます(*'ω'ノノ゛

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ