プロローグ
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日課というものがある。
つい最近からなのだが、1日1回、ストーキングされるようになった。
それは高校への登校中の事もあれば、高校内での休み時間中の事もある。
そして今日は、どうやら下校中のようだ。
こそっ。こそっ。
「……」
本人はばれていないつもりらしいが、正直分かりやすすぎて、ストーキングと言えるのかどうかも怪しいところだ。
取り敢えず、お互いに話し合わないと何も始まらないと思った俺は、途中であるにも関わらず、その場で足を止めた。
ぴた。
当然、ストーカーも動きを止めることになる。
「あの」
……。
呼びかけてみても、反応がない。
ならば直接、こちらから出向いてやるしかないだろう。
…電柱の後ろに隠れてるお前、ばれてるぞ。
「おい」
「ひゃっ!?あ、秋月くん……?」
「……はぁ。やっぱりお前だったか、天沢」
「……あははは」
身を潜めていた(つもりの)人物は、天沢 結衣という、同じ高校に通っている女の子である。
彼女とは、これまでにも何度か認識があった。
というのも、天沢がストーキングしているのを見かけては、こその都度注意しているのだ。
それなのに今日もまたストーキングしてきたと言うことは、俺の忠告など、全く聞いていなかったということになる。
「……俺、それやめろって言ったはずなんだけどな」
「うっ……。そ、それに関しては面目ない限り、です……。」
今にも消え入りそうな声だった。
申し訳なさそうにするくらいなら、最初からやらないでくれよ。
「大体、何で毎回毎回ストーキングする時間帯が違うんだよ。いつやられるか分からない不安と戦っているこっちの身にもなってくれ」
「あぅぅ……。」
俺が責め立てると、天沢は今にも泣き出しそうな表情をして、うつむいてしまった。
……あの、これだと俺が悪者みたいに見えるからやめてくんない?
悪いのはストーキングしている君で、俺は被害者なんだからね?分かってる?
まぁ、分かってるからそんな表情をするのか。
そんなことを考えていると、天沢は突然ばっ!と顔を上げ、
「でもね、でもね!それだけは譲れないの!」
「え?お、おう」
やたら前のめりになって、意気込んできた。
よく表情の変わるお人だ。
「秋月くんを後ろから見守る(?)のはね。いわば、私にとってのご褒美なの!だから、いつやるかは私の気持ちひとつなの!」
「うん……ん?」
ストーキングする事がご褒美?
何でそれが、時間帯が不定期になる理由になるの?
てかそもそも今、日本語喋ってた?
……いいや。
疑問が次から次へと生まれてくるが、取り敢えずは保留としておく。
「……はぁ。とりま、今日は帰れ。」
「えっ!?今日はお話ししてくれないのっ?」
「あのなぁ、俺だって別に、暇って訳じゃねえんだよ。」
「うっ……そ、そうだよね」
いくら帰宅部とはいえ、多少はね。
……ほんとだよ?
しゅん、という感じで、あからさまに落ち込んだ態度をとる天沢。
……本当に、何から何まで手のかかる子だな、おい。
俺は、そんな様子の天沢の頭に手をのせ、ぽんぽん、となでてやった。
「あ、秋月くん!?」
「どうせ、明日もやるんだろ?ならいつでも話せるだろうが」
「そ、そうだよね!…あぅぅ~~」
俺の言葉でそうなったのかは知らないが、天沢は顔を真っ赤にさせ、照れくさそうにもじもじ、とし出した。
……いや、可愛すぎんだろ。
いくらストーカーとはいえど、実は彼女、学校内では「学校一の美少女」と言われているほどの人気を誇っている。
そんな天沢にそういう態度をとられてしまえば、俺みたいな普通の人間は、心臓バクバクフェスティバルを開催してしまう。
「も、もういいだろ。いけよ、天沢」
これ以上は平静を保っていられないと判断した俺は、そう催促した。
しかし、世の中はそう上手くいくようには作られてないらしく。
何故だか天沢は、俺から離れるどころか寧ろ近づいてきて、手を握ってきた。
「もう少し!もう少しだけ、だめ、かな……?」
あろう事か、こんな上目遣いをされてしまえば、ついに俺は限界を迎えてハートブレイク!!
……まぁしかし、冷静に考えてみると彼女って、いや冷静に考えてみなくてもストーカーだよね。
ストーカーって、犯罪でしょ?
俺、何でストーカーとこんな、中睦ましげなの?
なんか、おかしくない?
色々と分からない事だらけだが、俺と彼女の奇妙な関係は、今後も続いていきそうだ。
今回はプロローグみたいなものです。次回からが本編の予定ですので、お楽しみを!