5.『黒猫』
今後もゆっくりと書いていきたいと思います。よろしくお願い致ししますm(_ _)m
アベルの町周辺は冒険者の町というだけあって冒険者が多く、アベル周辺のモンスターはほとんど狩り尽くされている。
と言いたかったんだがなんだこのモンスターの量は。モンスターの湧きスポットでも近くにあるんだろうか。そしてそのモンスター達に群がるかの様な冒険者達。
「バーゲンセールみたいだな」
「ばーげんせーる? それってなんのこと?」
「あ、いや、何でもない。気にしないでくれ」
この世界にはバーゲンセールとかは無いのか。しなくても店には十分人くるもんな。
「じゃあアクト、私たちもモンスターを狩ろう!」
「そうするか」
俺たちもその狩場の方へ向かった。
「ところでティナ、この一帯のモンスターはどんな奴が居るんだ?」
「うーん、アベル周辺は初心者でも倒せるゴブリンとかキッズパンサーとかが多いよ! アベルから少し離れたところに行くと、ちょっと強いけどフレイムタートルとかがいるかな〜」
パンサー、タートル。虎と亀か。安直な名前だが異世界でも言葉が通じるのはありがたい。
「ゴブリンが来たよ! アクト、私がまずやるから見てて!」
「いや、問題ない! 俺も加勢する」
ゴブリンなんてゲームで散々狩ってたんだ。俺の腕を舐めてもらっちゃ困る。
ゴブリンが短剣を持って飛びかかって来た。
俺はダガーを加えて直ぐさま横に飛び、ゴブリンの背後に回って背中を斬りつけながら相手の懐に入り込む。そして間髪入れずに腹を切り刻む。
そしてダガーを離して。
「今だ、ティナ!」
「てやぁ!」
痛がっているゴブリンにティナの剣でとどめを刺す。
「やったねアクト! 初めて戦うのに凄いよ! 俊敏な動きでゴブリンを斬りつけて注意を引いてくれて助かっちゃった!」
そう言ってティナはしゃがみ、俺の頭をナデナデしている。
「うん、悪くない。猫だからどういう立ち回りになるか考えていたけど、この素早さがあれば相手の攻撃を容易に回避できるし撹乱も出来る。ただ一つ問題があるとすれば、ダガーだと決定だに欠けるってとこだな。その辺はティナに手伝ってもらえばなんとか」
「もう〜、ぶつぶつ考え事しちゃって」
「わるいわるい。初めて戦ったもんだからさ、結果から色々と考察してたんだ」
「うーん。勝てたから良いんじゃないの〜?」
ティナは割と楽観的な子だ。だから俺がしっかり考えなくちゃいけないと思わされる。ただ、それがティナの良いところであり、見ていると心が安らぐ。
「そうだな。勝てたからいいか」
「うん、そうだよ!」
「ただなティナ、一応ここは戦場だから頭を撫でるのは後にしようか」
「あっ、ごめんね! うっかりしてた!」
ティナは我に返って立ち上がり、剣を構えて周りを警戒する。
やっぱり不安だ……! 俺がしっかりしないと。うっかりしててやられたんじゃ元も子もない。自分の身や、ティナを守るためにも、俺が強くならなきゃな……
「よしティナ、次に行こう」
「じゃんじゃん倒しちゃお〜!」
ーーーーーーーーーー
今日の成果はゴブリン5体にキッズパンサー3体。俺はレベル5になり、ティナはレベル12なった。
「やったねアクト! レベルが2も上がった! アクトは4つも上がったんだね!」
「まあ、初心者ほどレベルは上がりやすいからな〜」
俺はステータスカードを入れるカバンやポケット無いのでティナに持ってもらっている。言わばティナは俺の保護者でもあるからな。
「あのさ……! ステータスの事で1つ聞きたいことがあるんだけど……」
言いたいことは何となく分かる。
「この、役職『黒猫』って何?」
「それは俺も思ってた」
普通、こういうのって最初の『旅人』とか基本職の『戦士』とかのはずなんだけどな。そこんとこは転生とこの姿によるバグがあんのかな。
「黒猫か〜、どんな役職なんだろうね〜?」
「そうだなー」
こういう、いかにも特殊な事例ですよってのは主人公みたいな感じがして悪くはないんだけどなー。なんかパッとしないよな。どうせなら、チート剣持ちのソードマスターにでもなるんだった。
まあ結局この姿にされてたら宝の持ち腐れになるだろうし同じことか。
「とりあえずその『黒猫』ってのと『神の恩恵』は保留って事にしよう。今日は疲れたから、家に帰ってのんびり寝たいのですにゃ〜」
「あ、今の可愛い……もう一回言って〜?」
「はいはい、寝たいから帰るのですにゃ〜」
「あっ、待ってよ〜!」
俺はとぼとぼ我が家の方へ向かいながらティナとの会話に適当に付き合って、最終的にはティナに抱っこされて家に帰った。抱っこされるのは何もしなくていいから楽ちんだ。ティナは俺に敵意なんて無いだろうし、信頼してるから安心して身体を預けられる。
ああ、まじで楽ちんだ。猫サイコー。
ーーーーーーーーーー
「はい到着ー」
俺は家に着いたら速攻ベットに向かい、飛び乗ろうとしてジャンプした瞬間にティナに捕まった。
「ほ〜ら。寝る前にっ! お風呂入りますよ〜!」
「ティナ、お前は俺のお母さんか」
「お母さんみたいなもんだよ。一応保護者なんだから〜」
「はいはーい」
ティナが色々と構ってくれるのはありがたいが、尽くしてくれすぎて、なにかとお母さんすぎる。つい母親と話す様な感じで話してしまう。
「ねぇ、アクト今日なんか私への扱い雑じゃない?」
「そんなことはないぞ〜」
手で身体をわしゃわしゃ洗って貰いながら会話する。
「じゃあ、なんか……褒めてよ」
今……照れた? というより恥じらったか? なんか急に女の子の顔になった気がするんだけど。どうしたんだ。
「アクト……」
「はい?」
「アクトってさ……気付いてないと思うんだけど、すっっごく人気なんだよっ!?」
俺の身体を洗うティナの手の力が強くなった。てか痛い。凄く痛い。痛い、痛いって! 俺の脇腹がすっごく痛い! そんな強く脇腹を押さないでくれ!
「今日だってさ! 狩りしてる途中も周りの女性冒険者はみんなアクトの事ばっかり見てたんだよ!? 帰り道に私が抱き抱えたのだって……周りが…………ってもう〜!!」
そこまで言って恥ずかしくなったのか急に手を素早く動かして洗い出した。
「あはははっ! ティナさん!? くすぐったいんですけど!」
「全然気付かないアクトには! くすぐりの刑ですぅ〜!」
「それはほんとに待ってくれぇ!!!」
入浴後。
「はぁはぁ……風呂入ったのに疲れたよ……仕方ない。明日、風呂でのお手伝いさんを探そう……女性の」
「ま、待って! 早まらないで〜! わ、私がちょっと興奮して暴走しちゃっただけだからっ! 気を付けるから〜!」
「そう言って2日連続なんですけど!」
「あうぅ……」
風呂から上がってまだ身体から湯気が出てるティナはベットの前で正座し、俺はベットの上におすわりの体勢で見下ろしていた。
「まあでも、あんな行動をとったってことは、少なからず嫉妬してくれたって事だよな」
「〜〜〜っ!!?」
俺はティナが忘れようとしていた事を、爆弾を投下した。
無かったことにしようとしているがそうはさせるものか。この際色々とからかってやろう。さっきの仕返しだ。
「そういや最初会った時も色々と恥ずかしいことしてたよな〜! にゃんにゃ〜ん、だっけ〜?」
「やめてぇ〜〜! 掘り返さないでぇ〜!!」
ティナは一気に赤面して顔を逸らそうとする。だがそうはさせない。俺はベットから飛び降り、正座したティナの太ももの上に乗って見上げて。
「こっち向いて欲しいにゃ〜? 可愛いお顔を見せて欲しいにゃ〜!」
「どうしてそんなとこまで覚えてるのぉぉ〜!!?」
忘れるわけがないだろ……あんなに可愛くて癒されたんだし。
ティナは恥ずかしさのあまり顔を手で隠して固まってしまった。
「今日はあと寝るまでの間このネタでいじろうかにゃ〜♪」
「や、やめてよぉぉぉ……!」
俺はこの後寝るまで、ティナが落ち着き、顔から手を外そうとしてる所をニヤニヤしながらティナの顔を見つめてはまたいじり、ティナが羞恥でまた顔を隠すの繰り返して楽しんでいた。