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4.神の恩恵

「ふわぁぁ、朝か、昨日はゆっくり寝れたな〜」

「あ、起きた。アクトおはよ〜」

 ティナと目があった。どうやら俺の寝顔でも観察していたらしい。

「ティナ、いつからそうしていた」

「んー、朝ごはん食べてからかな」

「おい、もう昼かよ! 起こしてって言ったよね!」

「起こしたんだよ? でも、あと10分だけって言ってずっと起きないからこうして見てたの」

 ゴネてたのか俺は。日本でも朝は弱かったからな。学校がない今わざわざ朝起きる意味がなくなったわけで、そうなったら朝早くなんて起きたくないのが当たり前だ。


「よし、ティナ、お昼ご飯にしよう。お腹へった」

「分かった! 今作るからちょっと待っててね」

「あ、俺猫じゃないからな。普通のご飯で頼む」

「はーい」

 そう言ってティナはキッチンに向かっていった。その間に俺がやる事と言ったら、2階にあるティナの部屋のベッドの横にある窓から、町の様子を見渡すくらいだ。ちなみにティナの家は、亜人達が住む2階建てのアパートだ。

「ほんとに異世界に来たんだなー」

 町には亜人しかいない。ファンタジー漫画などで読んだ世界そのものだ。町並みはオシャレな商店街、いろんなものが売ってある。武器屋なんてもちろん見たことなかったもんだから、窓から眺めるだけでも興奮する。あとで行ってみよう。

 俺は出来上がるまで、窓の側で日の光を浴びながら寝ていた。



「アクトー、出来たよ。起きてー」

 起きたら目の前にお昼ご飯があった。

 食パンとサラダとスープ。一般的な家庭料理だ。それに美味しそう。ただ……

「俺1人じゃ食べれないな」

「確かに、そうだね」

「じゃあーー」

「じゃあ私が食べさせてあげる!」

 俺が頼もうとする前に言われた。


「まあ、そうしてもらうしかないな。悪いがたのんだ」

「大丈夫! 全然いいよ」

 ティナも乗り気だしいいか。ここはティナの好意に甘えよう。


「じゃあ、はい! あーん」

 サラダをフォークで刺して食べさせようとしてくれる。

 あーん……食べさせてもらう以上それは避けては通れないのか。あーんするのは好きだけど、されるのは恥ずかしいんだよな。

 でも、せっかく食べさせてもらえるわけだしそこは我慢するか。

「あ、あーん……」

「ふふ、よくできました」

 んん、恥ずかしい。あーんされるのも恥ずかしいが、何よりティナがニコニコこちらを見ながら食べさせてくるのが恥ずかしい。なんかこう、むず痒くなってくる。

 でも……美味しい。シャキシャキしてるのは当然として、噛めば噛むほど野菜の甘さが出てくる。サラダ食べただけなのに頬が緩んでしまう。


「美味いなこれ!」

「良かったぁ。頑張って料理した甲斐があったよ〜」

 俺の為に頑張って作ってくれたと思うと、それもまだ14歳の子が頑張って作ってくれたと思うと、とても愛らしく感じてしまう。言っておくが俺は決してロリコンじゃない。ただ、ストライクゾーンが広いだけだ。


「はい、あーん」

「あーん」

 うん。こうやって食べさせてくれる事に愛らしく思うが、決して俺はロリコンじゃない、はずだ。


「ふーっ、ふーっ、はい! 多分、猫だから熱いの苦手だよね? これで飲めるかな?」

 こうして気遣ってスープを冷ましてくれる事とか、スープを冷ます時の仕草とか、なんかドキドキしてしまう。

「ありがとう。助かるよー」

「へへ、はいどうぞ。あーん」

「あーん」

 ああ、今俺は異世界生活を充分に満喫してる。ささやかな幸せを感じていた。



 昼ご飯も食べ終わったところで、当初の目的を果たそうと思う。今日はまずギルドっぽいとこに行く予定だ。異世界って言ったらやっぱ冒険だよな。それで冒険って言ったら冒険者があって、それをまとめるギルドがあるわけだ。

 そんな適当な理由だったが、ティナも冒険者という事だからこの世界にはちゃんとギルドがあるらしい。


「ちなみにティナは何の役職なんだ?」

「私は『魔法戦士』だよ! 魔法や剣で戦うの」

「へえ、強そうだな」

「そんな事ないよ! 私なんてまだレベル10だし、大した事ないよ!」

 レベル10か、まだ駆け出しってとこかな。あんまり俺と差をつけられちゃっても、俺が足手まといになるだけだから良かったけど。



 ギルドに着いた。中には屈強な亜人の冒険者達が沢山いた。冒険者登録の受付口があったので俺達もそこに並ぶ。

「ティナ、もしかしてこの世界には亜人しかいないのか?」

「亜人というのは何か分かんないけど、みんな耳とか特徴があったりするよ」

 さすがはファンタジーな異世界。こういう設定はちゃんとしといてもらわないとな! 変に普通の人とか居ても盛り上がりに欠けるってもんだ。

 さてと、次は俺の番だ。


 受付の女の子はティナより少し年下そうな猫耳の女の子だった。名札にはルルと書いてある


「いらっしゃいませ。冒険者の町アベルへようこそ。本日はどういったご用件ですか?」

 ルルはティナに話しかけた。

「あ、要件があるのは私じゃなくって。この子なんです。」

 ティナは俺を持ち上げた。

「猫、ですか。可愛らしい猫ですね」

「その猫が用事があってギルドまで来たんだよ」

「わっ! 猫が喋った! 『変身』ですか?」

「だからその、変身ってのはなんなんだ。俺はれっきとした喋る猫だよ」

 やっぱり喋る猫って驚かれるのか。俺としては喋る猫より亜人の方が驚くんだけど。


 俺は受付のカウンターに飛び移る。

「今日は冒険者手続きをしに来たんだ」

「冒険者手続き……ですか、本気で言ってますか?」

「ああ、出なきゃ来ない」

「ええっと、猫が冒険者登録なんて出来るのか分からないのですが」

 なんてこった。ここにも猫になったことによる弊害が。

「でも! やったことないだけなので出来ないことは無いと思います。やってみましょう!」

「ありがとうルル、助かるよ」

 俺は感謝の気持ちを込め笑顔で言った。

「あ、いえ! お安い御用ですよ、えへへ」

 ルルは照れながら俺の頭を撫でてきた。人に感謝される事は気持ちの良い事だし嬉しかったんだろう。ティナはジト目でこちらを見ていた気がするけど俺なにかしたか? 大方、自分のペットが取られたとかでも思ってるんだろう。


「アクトさんでしたね。それではステータスの読み取りをしますので魔法陣の中に入ってください」

 俺は言われるがまま魔法陣の中に入り、ふぅっと息をついた。

 これで俺の冒険者生活が始まるわけか。ワクワクしてくるな。ただ、ここで浮かれて俺の秘められたら力が、などと言い出すとフラグになりかねない。俺はそっと待機した。

「ではいきます!」

 ルルがそういうと、魔法陣が光り出し、少し眩しくなったあたりで光は消えた。

「はい、読み取りに成功しました! これであなたも今日から冒険者です」

 ルルはICカードのようなものを渡してくれた。

「これは、ステータスカードです。ギルドで経験値に応じて更新する事が可能となっています」

「ほー、なるほど」

 

 さてさて、俺の能力はいかがなものか。


 

 ――――――――――



 結果から言うと、能力値は知力と俊敏が平均を大きく上回り、逆にそれ以外は平均を大きく下回った。魔法は今のところはなし。これから覚えていく事が可能だ。まあそれよりも色々とある。


「スキル『神の恩恵』とは一体何なんでしょうか。今までこんなスキル見た事がないですよ」

 ルルは不思議そうに考えている。多分俺のチートのことだろう。そりゃそうだ。チートですから、一応あのロリ神から授かった恩恵ですから。見たことないのも頷ける。

 ところで、ステータスカードには『神の恩恵』と表記されているんだな。あやふやなスキル名になっているのかは分からないが、おそらくあのロリ神のことだ。どうせチートの存在を天界に知られ自分が咎められたくないとか適当な理由だな。


「んー、使ってみればわかるよね! アクト」

「そ、そうだな」

 多分だが、俺の能力は戦闘では使えない。つまり戦闘において俺はなんのスキルも使えない猫ってことだ。ちょっとすばしっこいだけで、特に戦えはしないだろう。そうなると武器が必要だな。取り敢えずスキルのことは後でティナには誤魔化して使えないことにしておこう。


「よしティナ、武器屋に行こう」

「いいけど急だね、てかアクトって武器使えるの?」

「ふっ、その辺はちゃんと考えてある。じゃあルル、ありがとう。これからもお世話になるよ」

「アクトさん、ティナさん、またお越しくださいねー!」

 手を振って見送ってくれるルルを背に、俺たちは武器屋に向かった。




うぉひ(よし)ふぉえあらふぃへる(これならいける)!」

 俺は武器屋でまあまあの値段のする業物のダガーを口に咥え構える。ちなみに俺は一銭も持ってなかったので、ティナに謝って買ってもらうことにした。対価として毎日モフモフさせてと言われた。猫だからそんなに毛はないんだが、俺も触れ合いは嫌じゃないし、プラスのことが多いので快く受け入れた。


「黒猫にダガー、中々似合ってるねぇ」

 ティナは頷きながら何か納得している。

 俺は頭を振ったり、飛び跳ねたりしてダガー使用時の躰の調子を確かめていた。


「おお、可愛い……」 

 ティナはあれだな。結構な猫バカだな。猫を前にすると、我を忘れてまで可愛がろうとするし。そこが可愛らしいところなんだけどな。


 俺は咥えてたダガーを一度ティナに預けて、

「じゃあ、外で戦ってみよーう!」

「おおー!」

 町の外に出ることにした。


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