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3.エルフとお風呂

 バサッ、ドサッ


 ティナが服を脱ぐ音と共にティナから物凄く女の子の香りが漂ってくる。サラサラしたその緑の髪からか、全身からなのか、フルーティーな香りがする。その匂いは強すぎずほんのりと香るようで、それがまたいい匂いなのだ。


 あれ? 俺なんでティナと風呂入ることになってんの。急に緊張してきたんだが、どうしよう。女の子と2人っきりで風呂に入ったことなんてあるはずもなく、なにをしていいのか分からない……。


 とりあえず、俺は服を脱ぐティナを見続けることにした。


「一応私から誘ったんだけどさ……あの……まじまじと見られるとさすがに恥ずかしいんだけど……」

「気にすんな、眼福だ」

「もう、そんなに見ないでってば!」

 俺に背を向けながらティナはそう言うが、俺はなんせ準備は終えているわけで、やることがない。

 俺はそもそも猫だし、常に全裸みたいなもんだし。初めは抵抗があったけど、慣れてみれば開放感があって悪くない。そんな待つだけの俺にとってやることといえば、ティナが服を脱ぐのをじーっと見つめて恥ずかしがっている様子を見るを楽しむことくらいだ。


 ……もしかして俺は一種の変態だろうか、恥ずかしがっている姿を見て楽しむタイプの奴なのか。いや、そんなことはない。日本の男子高校生なんてこれが普通だ。目の前でこんな美少女が服を脱いでいたら、ガン見せずにはいられない。むしろ、見なきゃ相手に失礼ってもんだ。


「そういえば、ティナって歳いくつなの」

「今年で15になります」

「へえ、今年で15かー」

 ということはは14歳か。これは、日本でいうと中学2、3年生か。中学生とは思えない発育だ、さすが異世界というべきだろうか。

 やばい。すげえ犯罪臭がする。今日知り合ったばかりの18歳と14歳の男女が一緒に風呂に入るとか。

 捕まったりしないよな……? 大丈夫だよな? 異世界のルール知らないから何も言えないけど、これ大丈夫なんだよね!? 合法だよな、合法。そう、これは合意の上での行為だ! なら、なんら問題はないはずだ。

 そう自分の心に言い聞かせた。


「アクトは何歳なの?」

「ああ、俺は18だよ。あ、でも呼び方は変えなくていいからな?」

「年上だったんだ……年上の男性を抱きかかえて、あんなにデレデレと……」

 ティナが何かブツブツ言っている。


「どうかしたか?」

「え!? あっ、いや、なんでもないの!」

「ならいいけどさ。風呂入りたいからドア開けてくんない?」

「そっか! その姿じゃ届かないんだよね」


 脱ぎ終えてタオルを巻いているティナがドアを開けてくれ、俺は浴室に入る。


 特に面白くもない日々、人間をやってきたけど、人生生きてりゃこんな経験もできるもんなんだな。まあ俺、一度死んだんだけどな。

 そうだそうだ。俺はロリ神に殺されたも同然なんだし、第2の人生くらいこんな思いしてもいいはずだ。これは等価交換だ。恨まれる筋合いなんてないぞ。 


「あの……」

 ティナはドアの前に立ったままだ。

「どうしたんだ、入らないのか?」

「…………ってよ」

「え、なんて言った? もう一回言ってくれ」


 ティナは視線を逸らしながら、恥ずかしそうにしている。

「……元の姿にもどってよ」

「えっ」

「だから、いつまで猫の姿でいるのって言ってるの!」

 もしかしてティナは俺が元人間って知ってるのか?

 いや、知ってるのは俺とロリ神だけのはずだ。どういうことなんだ。


「早く『変身』解いてよ」

 ん? なにそれ、変化の術みたいなのがこの世界にもあんの?


「いや、解いてもなにもその『変身』ってやつしてもないんだけど」

「えっ、嘘だよね?」

「ほんとほんと」

「でも、喋る猫なんて聞いたことないし」

「厳密に言うと、猫から戻れない呪いみたいなもんをかけられたってとこかな」

「……」


 俺が元人間ってことは言って良かったんだろうか。まあ、今まで接した感じだとティナは俺のこの秘密を悪いようにはしないだろう。ただ、ロリ神との事、俺が日本という異世界から来た事、それらは言わない方が良いと俺の直感が言っていた。


「よし、じゃあアクトのその呪いが解けるように私も協力する!」

「いいのか?」

 多分、協力してもらったところで猫から戻ることはないと思うが、この世界の事や俺の猫の姿について調べていくのを手伝ってもらえるに越したことはない。


「手伝える事があったら何でも手伝うから!」

「じゃあさっそく、(からだ)洗うの手伝ってくれ」


「 ええ!?」

 ティナは顔を真っ赤にした。


「俺は自分で躰を洗えない、これは正当なお手伝いだ! 何ら恥ずかしがることはない。困ってる俺を助けると思ってさ?」

「大体、猫はお風呂入んないんじゃないの!?」

「そんな事言っても俺は人間だ。さあ、洗ってくれ」

 俺はシャワーの真下まで行き、準備万端で待つ。


「ううぅ、恥ずかしい」

「さっきまでベタベタ俺を触ってたじゃないか」

「さっきまでとは状況が全然違うの! お互い裸なんだよ!?」

 ティナの言いたいことは分かる。今のこの状態を見られたら色々とまずいことになるレベルなことも分かる。だが、それは俺が()()()姿()だった場合だ。俺は今は猫だ。何かしようにもどうも出来ないし、それを分かってる俺はどうしようとも思わない。ただ、可愛い女の子に躰を洗ってもらいたい。それだけなんだ。


「分かった分かった、じゃあお願いねー」

「もう! 全然分かってない!」

 そうは言ってるティナだが、観念したのかバスチェアに座り、俺をひょいっと持ち上げ膝の上に乗せた。

「おっ、ようやく洗う気になってくれたか」

「洗わないって言っても納得しなさそうな感じだし、諦めたの」

 恥ずかしんだろうが、割り切った様で、手を泡立てる。

「じゃあ……洗うからね」

「おう、頼んだ」


 ティナは指先で優しく俺の頭を撫で洗う。ティナの細い指が俺の毛並みを優しく、丁寧に洗う。美容院で頭を洗って貰ってる様な気分だ。久しく美容院になんて行ってないからわからないけど、人に頭を洗って貰うのってこんなに気持ちよかったのか。

「ああ、気持ちいい〜。このまま寝れそう」

 続いて、躰を洗ってくれるがこれもまた気持ちがいい。躰の芯からほぐされていく様だ。マッサージサロンとか行ったらこんな感じなんだろうか。躰の疲労が取れていくのが分かる。


「にゃあ〜、極楽ですにゃ〜」

 やべ。自然と猫語が出ちゃう。恥ずかしい。

あれ? なんかティナがさっきから無言なんだけど。何かあったのか。


「もう一回言って」

 ティナの声色が変わった気がした。


「ん、ティナ?」

 俺は振り返るかどうか迷った。一応ティナが裸で後ろにいるわけで、俺にも最低限の善良な心はある。ここでティナの裸を見ていいものかと。だが、俺は今ティナの雰囲気に寒気を感じ、身の危機を察し、咄嗟に振り返ってしまった。振り返るとすぐ近くにティナの顔があった。

「もう一回言ってくれるだけでいいの! さあさあ、言って言って!」

「うわっ! どうしたんだ!?」

 ビックリして後ろに飛び跳ねようとした所でティナに後ろ足を掴まれた。

 ティナの目が怖い。小動物を可愛がろうとしすぎて逆に怖がられるやつのような。いや違う、ようなじゃない。実際そうだわ。俺小動物だったわ。今のティナには恐怖すら感じる。


「ハァハァ……さあ、さあ、もう一度『にゃあ』と言いなさい!」  

 声荒げちゃってるんですけど! どうしよう、この子なんかスイッチ入っちゃったんですけど!


「はやく言ってよ〜、ねえ、どうしたのかなぁ」


 怖い、この子怖い!

 誰でもいいから、もうロリ神でもいい、猫にしたの許してやるから今のティナと2人きりにさせないでくれ!


「あ、分かった! こうすればまた言ってくれるかな〜?」

「っひゃあ!」

 ティナがいきなり脇腹を優しく撫でたので、くすぐったくて思わず叫んでしまった。


「アクトってそんな高い声も出るんだねぇ、可愛い」

「ティナさん!?」

「」

「へへ、大人しくしててねー、悪いようにはしないからぁ、ちょっと脇腹をいじらせて貰うだけだからぁ」

「だ、だれかー! だれか助けてくれー!」


「んっもう、動かないでってば」

「あ、ティナ、ちょっとまって、って、んにゃあぁぁあぁぁぁあああ!」 



 ーーーーーーーーーー



 俺は風呂でティナに散々遊ばれたあと、疲れ果ててベットに寝そべっていた。


「……今後はいたずらとかは控えていただきのですが」

「ごめんなさい。なんか、あの時は、色々と制御できなくなって」

 ティナは自分が変なスイッチが入ってしまっていたことを思い出し、顔を赤くしている。

 ティナは猫に目がないんだろうか、猫を可愛がることになると途端に我を忘れるようだ。我を忘れて迫ってくる様は、俺のちょっとしたトラウマになりそうだ。


 これからも洗って貰おうと思っていたのに、また変なスイッチ入るかもしれないと思うと不安で仕方がない。


「とりあえず、今日は疲れたから寝ることにするわ」

「アクト、もう寝ちゃうの?」

「ああ、明日は早めに行きたいとかがあるから、出来れば起こしてくれないか」

「任せて! おやすみ、アクト」

「おやすみー」

 改めて間近で見ると、ティナは一目惚れしそうになるくらい可愛いな。そんな子が俺の面倒を見ようとしてくれるなんて、俺は幸せになったもんだな。ちょっとした暴走もあったけど、もしかしたらそれは俺の能力が関係してるのかもしれない。

 明日にでも俺の能力についてでも調べてみるか。ただ今日は疲れたから終わりだ。明日のことは、また明日なってから考えれば良いだろう。


 

 こうして、俺の異世界生活1日目は幕を閉じた。

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