1.ロリっ子死神との出会い
俺は桜井亜久登、18歳高校生。どうやら俺は死んでしまったらしい。別に特別悔いがあった訳じゃねえが、強いて言うなら人生1度でいいから彼女がほしかったなあ。
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「悪い! 殺しちゃった! ごめーん」
薄明るい部屋の中、いかつい鎌を持った女の子に人生で初めての告白をされた。
何が起きたかさっぱり理解できない。
まず、俺は死んだのだろうか。ここはなんだか地上にいる感じがしない。重さを感じないんだ。躰がなく魂の状態でフワフワしてる、そんな気分だ。
そして、そのいかつい鎌はなんだ。鉄でも切り裂きそうな鋭い刃に、ドクロの刻まれた禍々しい鎌は。とても女の子が持っていていいような代物じゃないぞ。
そんな事よりも、今こいつ俺を殺しちゃったとか言ったぞ。別に知り合いでもないし、身に覚えがないんだが。
「あの、それってどういう」
「うむ。わたしの力で間違って、うっかりお前を殺ししてしまったのだ」
「…………は?」
今こいつうっかりって言った?
なにその『調味料切らしちゃったー』みたいなノリ。そんなノリで殺しちゃったとか言われても現実だと受け入れられないんだけど!
「だからわたしが――」
「おい、ふざけんなよ!? なにがうっかり殺しちゃっただ! 許されるとでも思ってんのか!!」
「だから謝っておるだろうに、わたしがこんなにも誠意を込めて謝罪しているというのに許さないとは、お前は心の狭い奴よのう」
何なんだこいつは。自分のミスで俺のこと殺しておいてこの上から目線。とても謝罪しようとしている奴の態度とは思えない。
「ん? どうした? もしや、わたしの美貌の虜にでもなったのか?」
確かに少女は可愛い。
サラサラとした艶やかな銀色の長い髪。
ルビーのような輝かしさを持つ赤い瞳でいて、あの凛としていて人を見下すような目つき。その目は、実は俺にはそういう性癖があったのではないかと錯覚させるほど。
加えて、未発達な中学生の様でありながら、ほんのり色香を漂わせる艶めかしい躰つき。
そして彼女は黒と紫を含んだ装束に身を包み、いかにもな雰囲気を醸し出していた。だが……
「ロリ……」
「お前っ! 今わたしに口にしてはいけない事を言ったな!」
「俺は見たままの感想を言っただけだぞ! どう見たってお前小学生じゃねえか!」
「なんだと!?」
「小学生は過ちを詫びることも出来ないもんなー。これだからプライドの高い小学生は困るわー」
「このっ、人が気にしてることを言いおってからにぃぃ、わたしは死神なのだぞ!」
やっぱりこいつ死神だったのか。死神っていったらフードを被った骸骨てイメージだったけど、意外とそうでもないんだな。
「そうなのか。じゃあロリ神、俺はこの後どうすればいいんだ?」
「ロリ神ではない死神じゃ! そこんとこ間違えるでない!」
「はいはい、でどうすんのよ」
「こいつ、わたしをバカにしおって!」
「まあ良い。これからお前は異世界へと転移される。そこで、誤って殺めてしまった償いとして、1つ能力をくれてやろう」
「まじかよ! どんな能力でも良いのか!? じゃあもう決まってるんだけどいいかな!?」
「早いな、では言ってみるがいい」
「ずばり、俺の欲しい能力は『女の子にモテモテになる能力』だ!」
「……」
「おい、今引いたろロリ神」
「……引いてなどおらん。あとロリ神言うな」
こいつ今絶対俺のことバカにしたろ。まあでも、このロリ神とはもう関わりないんだし、気にすることないか。
「良いであろう、良いであろう。アクトよ、お前は今からその能力を持って異世界へと旅立つのだ。ただし、こんな事は前例になく、能力の代わりにステータスから代償を頂く事になるが良いか?」
ステータス値が下がるってことか?
いくら神とはいえ、何でもやりたい放題ってわけでもないんだな。
まあ俺は冒険する気なんてさらさらないから別に良いんだが。
「おう、大丈夫だ」
俺がそう言うと、死神は手に持つ鎌の刃をチロリと舐め、不敵な笑みを浮かべて、
「フフッ……言質は取ったぞ」
今、ロリ神が恐ろしい事を言ったような気がしたが気のせいだろうか。
「さあ、アクトよ旅立て! 仲間を作り、共に苦難を乗り越え、青春して来るが良い!」
ロリ神から放たれた光により何もない空間に転移門が現れ、俺は異世界に転移された。
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最初に見た光景は、人だかりだった。エルフに、猫耳族、ドワーフ、竜人族、その他獣人族も沢山いた。異世界冒険者としては興奮せざるを得ない光景。建物も日本とは違い、西洋の建築のような作りで、異世界観が出来上がっていた。
おお、おおおおぉぉぉぉぉ! おぉ?
うん、おかしい。何かがおかしい。何でこんなにも人がでかいんだ!?
どうなってるんだ、巨人族の町でも来てしまったのか!?
それにしては違和感があり、俺だけが小さいと考えた方が合理的でむしろ正しい気がする。
凄く嫌な予感がした。
何故だか分からないが嫌な予感がした。とりあえずは情報収集町を探索しようと歩き出して……
ぷにゅ。
その嫌な予感が的中した。
人間ならば得られないような感覚が足、いや、前足から感じ、それに気づいた瞬間全身が寒気に襲われた。
俺は横にあった店のガラスに映る自分の姿を見て愕然も驚愕もせず、込み上がった感情はただ一つ怒りだけだった。
「あのロリがみがぁぁぁぁぁぁあ!!」
俺は猫になっていた。
読んでいただきありがとうございます。
更新するペースは遅くなると思いますが、これからも読んでいただけると幸いです。