手羽唐、ただし塩に限る
サクッ
「あっつっ」
じゅわわっ
「うま、だめだもう一本。」
「…いやおま、もう10本は食べてねぇか?毎回思うけどどこにそんな容量あんだよ。」
「そんな呆れた目で見ないでよ。せっかく私が誘ったのに!!」
「うん、まあまさか朝っぱらからうちに突撃してきて『名古屋行こう!』って言われるとは思わなかった。でも来てしまった俺。」
「だってひとりだと語れないし家族を連れて行こうにももう誰も付き合ってくれないんだもん。あとはヒロキ一択じゃん。」
「うん、アキさん。俺がバイト代を何に使っていると思いますか?」
「たべもの」
「お前の食道楽に付き合って色んなところに行ったりしているうちに半分以上使ってんだよ!間違ってねぇな!!」
「でも平日と祝日は誘ってない。」
「そりゃそうだろうよ。平日はお前もバイトだし祝日は俺がバイトだからな。」
「しゃあねぇな、今日は奢る。」
「珍しい。言ったな?」
「はーい。…すいませーん!手羽唐の塩、5本くださーい!!」
「まだ食うのかよ…。」
「うん。ここの手羽唐は私のお気に入りなんだけど、衣がとってもサクサクしてて軽いんだ。その分油を吸わないから鶏の油が引き立って、その上塩が後味をさっぱりさせてくれるの。しかも添えてあるのがレモンじゃなくてスダチなんだよ!これポイント高いよ。私は後半に絞る派なんだけどスダチの酸味と苦味がいいアクセントになるんだよ!クセになるんだよね。サイドメニューのマヨを頼むのもオススメだよ。七味と一緒につけて食べると幸せな気持ちになるよ。いっかい食べてみて。」
「ではひとつ。」
ぱりっ!じゅわぁっ
「っあっっつ!!あっつ、うまっ!!!」
「ふっ、うまかろ?」
「うん、くどくないし後味さっぱり!!」
「ほらねー言った通りでしょー?私が美味しいって言ったものはハズレ無しだって!!」
「それは疑ったことは無い。事実だし。」
「ささ、もう一本!」
「どーも。次はスダチかけて。」
「自分でやれや。私は召使いかっ!!」
「いや主人をはるばる名古屋まで連れ回して手羽唐食いに行かせる召使いがいてたまるか。毎度わがままに付き合ってるんだからこれくらいいいだろ?」
「なんも言い返せねぇ…。はい。」
「おう。…うん、美味いな。これもうひと皿行けるわ。」
「お?大皿行く??行っちゃう???」
「まてまて、そのひと皿じゃねぇよ。パーティサイズじゃなくて5本のやつ!30本も食えるか!!」
「えー、男だろ?」
「おめーとは違ぇっつの。すいませーん、5本くださーい。」
「私もお皿空になりそう。もうちょっと頼もうかな。」
「それ以上はやめとけ。せっかく名古屋に来たんだから他にも食べよう。」
「えぇー、うー、それもそうかぁ…。分かったやめとく。あ、食べきれなかったら貰うよ。まあまあ遠慮しないで。」
「残す前に奪おうとするんじゃない、このブラックホールめ。」
「いやぁ照れますなぁ!」
「褒めてねーし。手羽唐持ちながらくねくねすんな気色わりぃ。」
「うるさっ!黙ってたべな。」
「そう怒んなって。」