#8
マネキンを退治した次の日の朝。
日田と黒瀬は事務所の隅に置かれたテレビを、ソファーに座り、くつろぎながら見ていた。
写っているのはよくある朝のニュース番組。
そのなかの「ギタイ」による犯罪を特集したコーナーが、先程から流れていた。
「島根県でこの1ヶ月、中、高校生をターゲットにしていると思われるギタイの活動が活発化しており、既に現地の「掃除店」も何人か返り討ちに会ったことから、「全国掃除店協会本部」は、「堂島掃除店」の「堂島隼人」氏を派遣するとの意向を固めており………」
「……最近このニュースちょくちょく見るな。何なんだ一体」
日田が退屈そうにニュースを見ながら言う。
「島根県に強力なギタイが現れたらしいですよ。今年に入ってから大量の学生を襲い、その力は既に「ステージ3」に入っていると言われてます。ちなみに、暴走状態に入ったときの顔面が頭蓋骨に似ている所から「スカルヘッド」と呼ばれています。」
「ほーん。………って、この堂島って言うのは何者なんだ?今の話を聞く限り、「スカルヘッド」はまぁまぁの強敵っぽいから、それなりに強い人なんだろうけど……」
「日田君。あなたは本気で言ってるんですか……?え、嘘?本気で……?」
「……え?ちょっと待って?そんなに有名人なのこの人?俺全然知らないんだけどこんなオッサン!」
「オッサンと言う言い方は流石に失礼です。………はぁ、わかりました。説明しますからちゃんと聞いてて下さいね。「堂島隼人」。「堂島掃除店」店長で掃除店家業11年のベテランです。鍛え上げられた肉体と、長年愛用している「黒烏二式」と共に、数々の戦場を潜り抜けた豪傑。近年は新人育成にも力を入れており、確か今も新人を1人抱えていたはずですよ。……人望、実力ともに兼ね備えた「掃除人」の1人です」
「え……えぇ……。めっちゃ凄い人やん……。何で俺今まで知らんかったのやろ………。ま、ならスカルヘッドも確実に倒せるやん」
「そうですね。なにも心配することは無いと思いますよ。……さて日田君。昨日も1人依頼人を連れてこれましたね。この調子で今日も依頼人の方を探してきましょー!!」
そう言うと黒瀬は日田に向かって微笑み、エイエイオー、と右手を高く掲げた。
「……黒瀬さん。目が笑って無いですよ。……はい行きます!行かせてください!!」
日田は黒瀬から逃げるように、早足で出口の近くにかけてあったレインコートを羽織り、事務所から出ていった。
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