#6
「全く……日田君は……。こちらには村田さんが居るのにギタイを逃がして……」
男に飛びかかりながら、マネキンは違和感を覚えた。
長髪の男が、一切焦っていない。
今までマネキンが近寄るだけで、一般人達は泣き叫び、失禁するものまでいた。
だが、この男はどうだ。マネキン(おれ)を見ても、一切動じることなく、それどころか目線を反らして何かぶつぶつ言っている。
………と言うか、こんなギタイが戦っている場所に、一般人がこんな都合良く居るのだろうか……?
「はぁ……日田君には帰ったら少しお説教ですね。「黒烏」」
そんな違和感を覚えた瞬間、マネキンの体は体のちょうど真ん中、胸の少し下辺りできれいに輪切りに切断されていた。
「ゴキュ……!?」
驚くべき早業。
マネキンには、いつ切られたか、どうやって切られたのかすら一切わからなかった。
………そしてマネキンが1番怖かったのは、目の前の男のあまりの殺気の無さだった。
もはや、殺しが人生の一部分になってしまっている。異常者のそれ。
マネキンは死ぬ直前に、同族のギタイからも、その異常な姿で「化け物」と、呼ばれていたが………自分以上の、自分とは次元の違う化け物の存在を見つけた気がした。
「……いやーすんません。逃げられ痛ぁ!!出会って早々拳骨は無いんじゃないかな黒瀬さん!」
「うるさい!ちょっとは反省しなさい!!こうなることを予想して村田さんには一旦家の外に避難してもらっていたので良かったですが………。」
「だから反省してるって!」
「はぁ……分かってますよ、分かりました、もう……。それと、いい加減腕を元に戻したらどうですか?村田さんを怖がらせてはいけないでしょう」
「お……、おう。そうだな」
そう日田が言うと、次の瞬間には既に、両腕は元の肌色の皮膚で包まれた人間の腕になっていた。
「まぁ……あなたが「ギタイ」であると言うのはあまり広まらない方が良いでしょう。「ギタイ」の「掃除店」………。広まれば確実に世の中の反感を少しは買います。」
「家族を人質に捧げてんだ……。広まって俺や俺の家族が狙われるのだけは困る」
「ええ……分かってますよ。……さて、これで無事、村田さんの保護は終わりましたね。さぁ、帰りましょう!帰ってお説教です!」
「いやなんで嬉しそうなんだよ!!俺は全然嬉しくねーからな!!」
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