#4
「いやがった……」
物置の天井に、屋根裏に通じる扉はあった。
それに日田は勢いよく体を滑り込ませ、屋根裏の中を見回す。
そして、それは居た。
身長180を越えるであろう大柄な体は、全身筋肉で覆われており、特に上半身はそこら辺の包丁で刺しても傷つかないと思われる程。
短く丁寧とは言い難く切られた髪の下にある左目は、火傷の様な後で潰れており、痛々しい傷が顔半分に広がっている。
だが、その傷がさらに男の迫力を際立たせていた。
「……お前か……。ギタイは……?」
日田は男とある程度の距離を取りつつ、男に尋ねる。
「………その通りだ。ガキ」
低い声が、暗い屋根裏に響く。
(………っと、こいつ、ただのギタイじゃねぇな。相当場数踏んでやがる。ステージ3は確実……)
「………あんた……。大人しく捕まる気はないか?」
「………もちろん、一切ない!!」
「!!」
男の体の左半分が、黒い液体に覆われ、塗りつぶされる。
一瞬目の錯覚かと疑うような光景だったが、日田はこれをもう何度も見てきた。ギタイが暴走状態に入る時の「変身」だ。
(自らの意思で暴走状態に入るか……!やはりステージ3以上……!!)
男の体の左半分を覆っていた黒い液体は、1秒程で固まり、ボロボロと崩れ落ちる。
そしてその下から現れたのは、赤い筋が入り、小刻みに動く筋肉。
白い肋骨、そしてそれに抱かれるようにして鎮座する肺。
………男の体の半分を覆っていたはずの皮膚が無くなり、覆われていた体の内部が露呈していた。
まるで、本物の人間で作った、「人体模型」の様だった。
「こいつ……最近噂の「マネキン」か!!」
その姿を見て、日田はある物を思い出した。
数日前に黒瀬に見せられた、ギタイのリスト。
その中に、一般人を27人食べたとかで、ステージ3に登録されていた凶悪ギタイ……。
「とんだ大物だな……」
日田の背中がじっとりと、大粒の汗で濡れる。
薄暗い屋根裏で、激しい戦いが始まろうとしていた。
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