#2
「んじゃ、まぁ………適当に座ってくれ。黒瀬が茶でも入れてくれるから」
「……まぁ、お客様ですから当然出しますが……何かあなたに言われると不思議とやりたくなくなりますね」
「さーて、……名前、なんだっけ?」
「あ……村田です。村田鏡子」
「じゃあ……鏡子」
「………」
「いや、ジョークだから。そんな顔しないで!村田さん!ほら、座って座って!」
日田は自分のジョークが不発のようで焦ったのか、少し早口になりながら鏡子に座るように促した。
「さってと……村田さん。君をここに連れてきたのは他でもない。君からギタイの臭いがしたからだ」
「ギタイの臭い……」
日田にそう言われ、鏡子は少し自分の着ていた制服を鼻に近付ける。
「村田さん、大丈夫です。ギタイの臭いが分かるのは日本でもそこにいる日田以外いないでしょう。」
奥から小さなカップが乗ったお盆を持ってやって来た黒瀬が、自分の臭いを嗅いでいる鏡子を見て、そう声をかけた。
そして日田と鏡子の前にある机の上にコトン、と1つコーヒーの入ったカップを置いた。
「……カップ1つしか無いんだけど」
「あなたの分はありませんよ」
「………」
「嘘です。ちゃんとあります」
黒瀬が体の後ろに隠していた左手には、もう1つ、同じコーヒーの入ったカップが握られていた。
「おお!さすが黒瀬!見直したぞ!」
「私の分ですけどね!ズゾゾゾゾ!!!!」
「ぎゃあああ!!こいつ!マジでこいつ!!一瞬でぇぇ!!」
(……何だこれ……。私は何を見せられているんだ……)
鏡子はそんな日田と黒瀬を見て、そう思った。
「ぜー……ぜー……。すまない、取り乱した。……そうだ、ギタイの話だったな……」
「はい、私の近くにギタイが居るとか……」
「ああ、臭いでわかった。しかもかなりべっとりと付いてたぞ。すれ違ったとかそんなんじゃねぇ。極端に云えば四六時中近くに居るとか、そういうレベルの臭いだった」
「……そんな……。」
「んで………そのギタイが「ステージ3」以上の奴だと更に都合が悪い。出来れば今日中にでも討伐しちまいたい」
「「ステージ3」……?」
鏡子は聞き慣れない言葉に、首を傾げた。
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