選択肢意志脱
昼休み、わたしは本を読んでいた。
悠歩とはもう距離をおいている。
……知ってる悠歩はどこにいるのかな。
でも……わたし……守れないからって、自ら離れてるよね。
守るか守らないかの選択肢ばかりで
コミュニケーションがとれてない。
もう……っどうでもいいよね……
そう思いながら……時間が過ぎて。
放課後がやってきた。
靴を履き替えようとしたそのとき……
「……さーりん」
誰かの声がした。
「ん?」
誰だ?すごい美形だけど。
クラス数多くて、見たことないや…
「ようやく会えたね。さーりん」
「えっ?」
ようやく会えたねと言われましても。
「覚えてないのかい?昔の友達じゃないか」
「昔の……?」
困惑中のわたし。記憶のかけらにこんなやついた?
知らない……
「奏 リオル」
耳元でささやかれた、名前。
かなで、りおる……
「ああ……でもごめん。覚えてない」
「まぁ、覚えてないなら仕方ないね」
奏さんは、苦笑いした。
「あのね、さーりんは今、高坂悠歩というやつと仲良いでしょ?」
……!
「仲は良いけど……いまは……距離置いてる」
初対面?か分からない、得体の知れないやつに正直に言っちゃった。
「そうなんだ……さーりん。あの男はね」
え……、悠歩がなに?
わたしは靴箱の棚に押される。
「……不良になっちまったよ」
そう耳元でささやかれて。
聞き取った言葉は、不良のキーワード。
悠歩が不良になったことを認識させられる。
「え……!?」
おどろくほかない。今まで守ってきた
大切な人が、不良になったのだから。
「見ちゃったよ、おれ……」
甘くもなく、苦くもなく、怖さを感じるトーンで声を発した……
「……」
なにも言えない。
「……実態を見るかい?」
そう、選択肢を与えられて……。
「見たい!」
見守るという、最低の選択肢を、わたしは選んだけど……
「わかった。おいで」
手を差し伸べられた。
わたしは導きの手を……借りる。
奏さんに、ついていくわたし。
連れて行かれたのは、屋上だった。
「みてごらん」
屋上のドアを開け、実態を見てみた……
目に映ったのは、だるそうに寝る悠歩がいた。
「悠歩は今寝てるみたいだね、おこしにいく?」
問いかけられた、選択肢
この選択肢に正解はあるのか……?
「いってみる……」
か弱い声でボソッと答えた、起こすという選択肢。
彼の邪魔をするようですごく申し訳ない。
知っているけど、変わった彼とは初対面
……
「起こしちゃお?悠歩君」
奏さんのいじわる口調を無視し、わたしは気持ちよさそうに寝ている悠歩に近寄る。
悠歩の顔にはばんそうこうが貼られていた。
「……悠歩!!」
ウザい、に値するほどかもしれないけど
ほっとけないんだよ……?
「ん……っ?さりな?」
はじめて、悠歩がわたしを呼び捨てにした。
「悠歩……ケガしてるじゃない」
「あ、これはちょっとね……」
そうニヤニヤしながら、ばんそうこうを押さえる。
「どうしたのよ?」
「ちょっといざこざがあってさぁ…」
困惑しながら話す、悠歩。
「でも、ぼくが勝ったから。問題ないよ……ぼく強いから」
強いから。
その言葉にほっとした自分が居た。
もうまもらないでおこうか。
「そうなの……勝ててよかったね……」
心配なしに、褒めるわたしをお許しください。
「うん!」
わたしは、彼を応援する。
何かあったら、それはたすけたい。
「さりな、がんばるよ、ぼく……」
わたしは何も言わず、微笑んだ。
「がんばって」
過保護なわたしはもうやめにして。
わたしは、少し悲しくなりながらも去っていった……
奏さんのもとに戻った。
「……さーりん。おかえり、どうだった?色々話してたのが見えたけど」
「……うん。わたし、決意したの」
奏さんの顔を見て、微笑む。
「決意……?」
「うん。彼を見守ることにしたの」
「見守る?不良になり果てた彼を?」
「うん」
不良になるのはいけない、それは分かっていても、わたしは……
「彼の意志優先だから。それがわたしの答え」
「……ほぉ。いいやつだな、あんた……」
「……」
わたしはうなずいた。
これでいいの、これで。
わたしは、悪いことでも、彼の意志を
優先する……。
だめな友達だわ……
「わたし、そろそろ行くね」
だめと分かっていても、なんて良くあること。
許されざることでも……ね。
「あぁ」
わたしは、屋上の階段を素早く降りた。
悠歩を心で想いながら。
愛してる……悠歩。
強くなる意志は否定しないよ。
見守っているから……。




