氷雪華
初めまして。
初の作品投稿になります、稚拙な部分が多いかと思いますがよろしくお願いします。
見渡す限りの雪景色。あ〜絶景なり。
まぁ雪景色どころか猛烈な吹雪で前も見えない訳ですが、いや甘く見てたね雪山。
しかもパウダースノウが吹雪いてんならまだ許せるんだが、霙まじりで地味にチクチク痛いし、時折「ウヴォォォォ」とか叫びながらジャレついてくる(殴りかかってくる)ゴツいオッサンみたいな魔物もいるし早く帰りてぇ。
なんだかんだ心の中で愚痴りながら雪山登山始めて1時間程度経ったかな、ようやく見えてきました山頂
麓の村の酒場で聞いた話によると、この時期の山を登るのは自殺志願者くらいしかおらず、もっと気候の穏やかな時期でも熟練の登山家や冒険者が半日近くかけてようやく頂上に到達できるらしい。
俺は登山家でも冒険者でもないけど、腕にはそこそこ自信があるのでまぁこんなもんかなと。
頂上に到達し目に写った光景は不思議なもんだった。
特別絶景って訳じゃない、むしろ眼下は相変わらずの猛吹雪。景色も風情もあったもんじゃない。けれど、だからこそ不思議な光景だった。
広さで言えば俺のいる側の端から反対側の端まで大体150ルメルから180ルメル(俺の身長が177リメル)くらい。この山は程度に差があれど、年中吹雪いているから遠目から見ても山の半分から上は見る事ができない。もし全体を見る事ができたなら、かなり先細りした形状になってんだろうな。
で、肝心の光景だが、何故か雪もなく草原のように綺麗な平地になっている山頂の、ど真ん中と言っていい位置に一輪の花が咲いていた。
《氷雪華》
この世界でこの雪山シュルブ山に今の時期だけ咲くと言う代物だ。
しかも、一度摘んでしまうと最低でも数年はその花を咲かせる事はないと言われている非常に珍しい花。
最後に新たな氷雪華が確認されたのが数百年前らしいからこれ以上ないくらいな珍花だな。いや、珍花って言い方はどうかと思うが。
近寄って観察してみると、花の大きさは一般成人男性の手のひら程度、地面から伸びている茎はとても短く地面にそのまま花のブローチが置いてあるようにさえ見える。青白く透き通るような美しい花弁が8枚、俺に自分を魅せつけるように咲いている。
先程新たな氷雪華は確認されていない。と言ったが、氷雪華は摘んでも枯れることがない。昔の権力者達が力に(物理的であったり金銭的な)物を言わせて手に入れた氷雪華は少数ながら現存している。
しかし、絨毯に落としたくらいで破損することはないが、地面に叩きつけたりすれば砕けてしまう。時の戦争であったり、氷雪華その物を奪い合う争い等でその数を減らし、その価値今の相場で金貨数十万枚とも言われている。
さて、これだけ美しく珍しい、そして一輪手に入れて売り払えば人生数回遊んで暮らせるだけの金が手に入る花が何故数百年も世に姿を表さなかったのか。
当然理由がある、単純に言えば入手何度が馬鹿みたいに高いのだ。
1つ、この時期のシュルブ山の吹雪ヤバイ
2つ、山頂までに遭遇する魔物ヤバイ(時期的な能力補正有り)
3つ、氷雪華を摘もうと触れた瞬間でてくる何かがヤバイ
大まかに言えばこの3つが関門となり氷雪華を手に入る事が非常に難しくなっている。
1つ目の原因で大半が脱落、2つ目の要因で上級冒険者ですらほぼ脱落。そして3つ目、氷雪華摘もうとすると何か出てくるんだと(適当)いや、俺も下調べは勿論したんだよ?だけどさ、まともな情報ないんだよなぁ。
むかーし氷雪華を手に入れた者達の逸話とかが英雄譚になって残ってる訳よ、だけど何でか知らんが統一性がない。
ある物語では英雄譚の定番ドラゴンだったり、ドタバタ劇っぽく書かれてる物語(実話らしい)ではちょー強いスライムだったり、はたまた魔王(笑)が現れたなんてのもある。
最後の難関がバラバラだから嘘が混じってんのかとも思ったが、基本的に今尚物語として残されてる奴らは実際に氷雪華を手に入れてるのも間違いないないんだよな。
んー、謎は謎だがもうすぐ答えが出るしまぁいいか。
あぁ、そーいや俺が氷雪華を探しにきた理由だが、別に金が目的な訳じゃないし、謎の何かと戦いたいからって言う戦闘狂じゃないぞ。冒険しに来た訳でもない、そもそも冒険者じゃないしな。
一言で言えば花屋だから
うん、花屋が花を仕入れに来た。至極まっとうな理由だろ?
と言っても別に俺の店は特別珍しい花を扱ってたり、高級な花屋を目指してる訳じゃない。
うちのキャッチコピーが理由だな
『どんな花でも御用意します』
つまりこれ、存在する花ならどんな花でも手に入れてきましょう!ってのをモットーに経営してる訳だ、素敵だろう?
「フフフフ、俺の花屋は世界一ィィィィィイ!」
すまん、ちょっとテンション上がっちまった。
頂上は雪降ってないけど相変わらずクソ寒いからおかしくなってきたみたいだ、さてこれ以上自分を見失わない為にもさっさと氷雪華を摘んで帰るとするか。
何が出るのかなぁ。
なんてぼんやり考えながら俺は氷雪華に手を伸ばした。